政府は日銀の黒田東彦総裁の後任に経済学者の植田和男氏を起用する人事を固めた。報道を受けて前週末の外国為替市場では一時円高が進んだが、その後は落ち着きを取り戻している。植田氏は報道の後も「金融緩和の継続が必要だ」と述べており、拙速な金融緩和の修正には慎重なスタンスを示している。日銀の新体制はしばらく相場の材料にはならないだろう。

今週の注目材料は米国の物価指標だ。14日に消費者物価指数(CPI)、16日に卸売物価指数(PPI)の発表がある。コア指数は低い伸びにとどまる見通しだが、今回発表される1月分から指数構成品目のウエイト変更があり、それがどのような影響を及ぼすか若干、注意が必要だ。加えて、複数のメディアが指摘しているが、中古車価格が上昇している点も気懸りである。先週はFRB高官のタカ派発言で米国株相場の地合いが軟化しているだけに、今週発表される物価指標がインフレの沈静化を示唆しないものになった場合、市場の反応は相当厳しいものになりかねない。

国内の決算発表は佳境を過ぎたが、今週もまだ13日にはリクルート(6098)、14日にはキリン(2503)、楽天(4755)、SMC(6273)、クボタ(6326)、生損保各社など主要企業の発表が残る。米国の注目は16日のアプライドマテリアルズ(AMAT)の決算発表だ。半導体製造装置で世界最大級の企業だけに日本の半導体関連への影響が大きい。

先週の日本株市場の主役のひとつは日本製鉄(5401)だった。日本製鉄は先週金曜日に大幅に上昇し昨年来高値を更新した。2018年2月以来、5年ぶりの高値だ。未定だった年間配当を過去最高となる180円と発表した。配当利回りは6%を超え、好業績もあって買いが集まった。信越化学(4063)も1月下旬の好決算発表以来じり高で推移している。東京エレクトロン(8035)も上方修正、増配、株式分割を好感して半年ぶりの高値となった。

全体としては様子見機運が強いなか、好業績銘柄への物色は続くだろう。相場が上に行くとすれば、昨年12月15日に空けた窓を埋めに行くだろう。その水準は2万7987円だから、2万8000円手前までということになる。一方、米国CPIなどで波乱となった場合、下値のめどは2万7000円。25日移動平均が2万7000円を上回ってくるので、そこがサポートラインになるだろう。

予想レンジは2万7000円 ~2万8000円とする。