「今後10年がラストチャンス」と政府は制度や財源面でも注力

日本の年間出生数が2022年に統計上、初めて80万人を割ったとみられ、少子化対策が緊急課題となっている。岸田文雄首相は2023年年頭の記者会見で、「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明した。少子化対策を含む子供関連予算を倍増する考えを以前から示していたが、政府は1月19日に「こども政策の強化に関する関係府省会議」の初会合を開催した。

この会議で詳細を詰めて、3月にもたたき台をまとめる意向とされている。4月にはこども家庭庁が発足し、6月ごろにまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる骨太の方針)」で、財源を含めた方向性を打ち出すものとみられている。

岸田首相は1月23日に召集された通常国会における施政方針演説でも、こども・子育て政策を実行する旨を強調している。その中で少子化対策の柱は(1)児童手当などの経済的支援の強化(2)幼児教育・保育サービスの強化と子育て家庭サービスの拡充(3)働き方改革の推進と制度拡充を打ち出している。経済支援策では、児童手当の支給額拡充が軸となりそうだ。

自民党の茂木敏充幹事長は1月の党会合で「この10年が日本の少子化を反転できるかどうかの最後のチャンス」と訴えている。財源については、所信表明演説で岸田首相は「各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援のあり方など様々な工夫をする」としている。

国に先立ち少子化対策を打ち出した東京都、すでに実績を上げている兵庫県明石市

国に先立ち、東京都の小池百合子都知事は1月13日の定例記者会見で、2023年度の当初予算に盛り込む少子化対策として、0~18歳への月5000円給付などを打ち出している。このほか、第2子(0~2歳)の保育料の無償化、卵子凍結への助成制度構築に向けた調査などを来年度予算で講じる方針を示している。

すでに実績を上げている自治体もある。兵庫県明石市では「こども医療費の無料化」「第2子以降の保育料の完全無料化」「0歳児の見守り訪問『おむつ定期便』」「中学校の給食費無償」「公共施設の入場料無料化」という「5つの無料化」を順次実施。直近まで10年連続で人口増加に成功している。所得制限は設けず、予算を組み替えることで費用を捻出し、市民の負担を増やすことなく達成している。泉房穂市長のリーダーシップが可能にした。

少子化対策には女性の働き方改革や、婚活、不妊治療など広範囲な支援が必要となる。そこで今回は、少子化対策関連とみられる銘柄をピックアップしてみた。

JPホールディングス(2749)

認可保育園を始め、児童館、学童クラブなどの運営やコンサルティングを手掛ける子育て支援事業のリーディングカンパニー。子育て支援施設向けの給食請負、食育を通じた育児支援なども展開している。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月2日時点)

ポピンズ(7358)

ベビーシッター派遣と保育・学童施設の運営が柱。このほか高齢者在宅ケアや家事支援サービスも手掛けるなど、働く女性の支援サービスを幅広く提供している。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月2日時点)

テノ.ホールディングス(7037)

首都圏を軸とする認可保育所と、九州などでの企業内保育受託事業が主力。ベビーシッターや結婚相談所、保育士の人材派遣サービスなども展開している。社名の「テノ.」は「手の」ぬくもりに由来。女性が働くことを総合支援。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月2日時点)

あすか製薬ホールディングス(4886)

医療用医薬品の中堅企業。子宮筋腫、月経異常、更年期障害治療など婦人科領域に強み。排卵誘発剤など不妊治療薬は2022年4月に適用範囲が拡大。先発品では同時期に不妊治療薬「ルテウム」が薬価収載。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月2日時点)

ステムセル研究所(7096)

「さい帯」(へその緒)に含まれるさい帯血由来の細胞バンク事業で民間市場をほぼ独占。分離・冷凍された細胞は再生医療などに活用。赤ちゃんを安心して生むことが出来る環境整備に一役。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月2日時点)

IBJ(6071)

婚活分野のリーディングカンパニー。婚活サイトや婚活パーティを手掛けるほか、結婚相談所を直営。また、全国の相談所を組織化するなど多面展開している点に強みがある。2021年の同社利用の成婚組数は1万組超。これは同年の日本の年間婚姻数の2%に相当。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月2日時点)

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