モトリーフール米国本社、 2022年12月27日 投稿記事より

主なポイント

・弱気相場がついにアップルをも飲み込んだが、これは絶好の買い場かもしれない
・クアルコムは数四半期にわたって売上高の減少が見込まれるものの、モバイルコンピューティング分野は依然として長期的な成長トレンドにある
・ブロードコムは有名ではないが、半導体業界の超大手企業であり、莫大なキャッシュを株主に還元している

大幅に下落しているハイテクセクターで魅力が高まる配当銘柄

優良配当銘柄と聞いて、最初にハイテクセクターに注目する投資家は少ないでしょう。しかし、2022年の市場の大幅下落を受けて、状況は変わっています。株価の下落に伴って、優良なハイテク企業の配当利回りは上昇しています。弱気相場にもかかわらず、コンピューティング技術は成長し続けており、足元の配当収入と、将来の増配の可能性という強力な組み合わせを提供しています。

2022年が終わろうとしている今、アップル、クアルコム、ブロードコムは配当成長銘柄として注目に値する3社です。

アップル:超大型株だからといって、ハイテク業界のリーダーを買わない理由にはならない

2022年の大半において、アップルの株価は何とか持ちこたえていましたが、ここ数ヶ月の間に、弱気市場はついにアップルをも飲み込みました。新年まで残り数日となり、株価は年初来で26%近く下落しています。

しかし、アップルの事業は好調であるため、資金に余裕のある投資家にとってこれは好機です。もちろん、サプライチェーン問題(主要サプライヤーであるフォックスコンの中国工場での最近の混乱など)や、新型コロナウイルス感染者数の急増(これも中国)による需要への影響といった懸念はあります。また、インフレの影響が個人消費に及び始めたことで、2023年に向けて消費は弱含んでいます。2023年は多くの家庭で、高額なスマートフォンを購入することが難しくなるかもしれません。

誤解しないでいただきたいのですが、アップルの事業も2023年には厳しい状況に陥る可能性があります。近年は、従来機種よりも全体的に価格の高い5G対応機種への買い替えが進み、iPhoneが事業の成長の最大の原動力となってきました。需要が急増する中、アップルの問題は十分な台数のiPhoneを市場に送り出すことで、このまま供給の制約が続けば、iPhoneの売上も長期にわたって好調が続くはずです。しかし、サプライヤーは今後数ヶ月にわたり、十分な数のiPhoneを出荷できない可能性があります。そうなれば、iPhone売上は横ばいとなり、最近の株価急落が正当化される恐れがあります。

とはいえ、アップルは新しいイノベーションにも取り組んでおり、複合現実(MR)のヘッドセットは2023年中に発表される可能性があります。また、アップルの収益性は極めて高く、増配(現在の配当利回りは0.7%)に加えて、大規模な自社株買いを続ける資金も潤沢です。同社は過去1年間に、現時点の時価総額の4.2%に相当する890億ドルの自社株買いを実施しました。1年先予想株価収益率(PER)は19.5倍であり、絶好の買い時かもしれません。

クアルコム:アンドロイドの販売低迷は永遠には続かない

iPhoneが新しい顧客を獲得し続けて市場シェアを伸ばしている一方で、アンドロイド端末は苦戦しています。アンドロイド端末は世界のモバイル端末の70%超を占めていますが、その製造に関わる企業は、スマートフォン売上が2022年末から2023年にかけて急激に落ち込むと予想しています。クアルコムは、その主要サプライヤーの1社です。

クアルコムの2022年度(2022年9月期)は絶好調で、売上高は前年比32%増の442億ドルでした。しかし、経営陣は2023年度について14%の減収を予想しています。アンドロイド関連のサプライチェーンの逼迫が緩み始めたのとほぼ同時に、個人消費が落ち込み始め、いきなり過剰な在庫を消化する必要性に迫られたのです。これは、クアルコムにとって利益率の低下を意味し、この不幸な出来事の重なりは数四半期にわたって続くとみられます。ウォール街のアナリスト予想の平均では、クアルコムは2023年度に20%台半ばの減益となる見通しです。

とはいえ、クアルコム株の下落ぶりを見ると、市場は近視眼的過ぎるように思えます。2022年度の1株当たり利益(EPS)11.37ドルに対し、2023年度は25%の減益と想定すると、現在の株価は予想PERでわずか13倍の水準です。

スマートフォン売上はいずれ底打ちし、再び上向くはずです。また、アップルと同様に、5Gへの移行が着実に進んでいることは、チップ当たりの販売価格の上昇と利益の増加を意味し、クアルコムにとって好材料です。同社はまた、自動車向けソリューション、仮想現実(VR)、ノートPCなど、半導体ポートフォリオの拡大に積極的に投資しています。現在の配当利回りは2.7%であり、過去1年間に約28億ドル(時価総額の約2.3%)の自社株買いも実施しています。市場からの評価が下がっている今、クアルコムも有望な配当成長株と言えます。

ブロードコム:投資家にあまり知られていない、プライベートエクイティのような半導体銘柄

ブロードコムは、知る人ぞ知る半導体業界の超大手企業です。クアルコムや、同社のプロセッサー「スナップドラゴン」のように有名ではありませんが、ブロードコムの設計はスマートフォンやモバイル機器の至る所で使われ、タッチディスプレイや5G/WiFi電波の受信機などに採用されています。しかし、ブロードコムの主力事業は、消費者から見えないところにあります。同社はデータセンター、企業向けコンピューティングシステム、ブロードバンドインターネットインフラのためのチップやスイッチの分野で圧倒的シェアを誇っています。

同社は長年にわたって数々の企業買収を行い、事業ポートフォリオを作り上げてきました。コンピューティングの分野において、自社が優位に立ち、並外れて高い利益を生み出すことのできるニッチな市場をターゲットとし、高水準の利益率を維持できないと判断した事業は売却するという戦略です。この戦略には賛否両論あり、以前から独占禁止法規制当局による監視の対象にもなってきました。しかし、成長性と配当という観点では、ブロードコムは優れた投資先と言えます。2022年度(2022年10月期)の売上高は前年比21%増の332億ドル、フリーキャッシュフローは驚異の163億ドルでした。

ブロードコムは生み出したキャッシュを利用して、配当を安定的に引き上げています。前四半期にも12%の増配を実施したばかりで、足元の配当利回りは年率3.3%です。さらに、同社は自社株買いも頻繁に行っており、過去1年間で83億ドル(時価総額の3.6%)の自社株買いを実施しました。

同社は2023年にも大型買収を目論んでおり、以前から懸案となっているVMウェア(VMW)の買収を実現させたい意向です。そして自社の企業向けソフトウェア事業と統合させ、マイクロソフト(MSFT)のアジュールやアマゾン・ドットコム(AMZN)のAWSといったパブリッククラウド大手との競争に名乗りを上げる計画です。しかし、この買収も規模が大きいために、独占禁止法規制当局からは批判的な目が向けられています。とはいえ、VMウェアの買収が実現するかどうかにかかわらず、ブロードコムが検討に値する優れた配当銘柄であることに変わりはありません。本校執筆時点において、1年先予想PERは13倍未満となっています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Nicholas Rossolilloと同氏の顧客は、アマゾン・ドットコム、アップル、ブロードコム、クアルコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、アップル、マイクロソフト、クアルコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールはブロードコムとVMウェアの株式、および以下のオプションを推奨しています。アップルの2023年3月満期の120ドルコールのロング、アップルの2023年3月満期の130ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。