モトリーフール米国本社– 2022年12月20日 投稿記事より

主なポイント

・パンデミック以前、米国のEコマース売上高は年率15%で成長していた
・以前の成長ペースに戻れば、アマゾン・ドットコムなどの業界各社にとって大きな後押しに
・株価は割安で、株価売上高倍率は2倍未満

1人のアナリストがEコマースの成長加速を予想

アマゾン・ドットコムは過去30年間で最もパフォーマンスの高い銘柄の1つですが、2022年のリターンを見ると「過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを保証するものではありません」という一文が浮かびます。同社が多くの課題に直面して、弱体化していることは明らかであり、株価は年初来で50%近く下落して2022年を終えようとしています。

同社は複数の倉庫を閉鎖し、1万人の人員削減を図っています。アマゾン・ケアなど、かつては有望だった事業を閉鎖している他、音声アシスタントのアレクサ事業でも、年間の損失が100億ドルに上ると報じられたことを受けて、人員削減の対象となっています。さらに、新型コロナウイルスの影響で好調だった2021年からのベース効果、マクロ環境の逆風、個人消費の変化などにより、売上高の伸びは鈍化しています。

利益面でも、クラウドサービスのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)以外の事業では、赤字が大幅に拡大しています。その上、圧倒的な利益の稼ぎ頭であるAWSの成長さえも、減速する可能性があると企業側は警告しています。

しかし、アマゾン・ドットコムをめぐる潮目は、ようやく変わりつつあるようです。少なくともウォール街のアナリストの1人はそのように見ています。

Eコマースの回復

ウェルズ・ファーゴのアナリストであるブライアン・フィッツジェラルド氏は12月19日に書いたメモの中で、衣料品や生活雑貨といったソフトラインのカテゴリーで前年比のハードルが低くなっていることから、アマゾン・ドットコムのEコマース売上高が再び加速し始めていると指摘しました。

同氏はまた、Eコマースと実店舗の売上成長率が、コロナ前の水準に戻りつつあると見ています。米国勢調査局によると、過去10年間の大半において、全米のEコマース売上高は年率約15%のペースで成長しており、フィッツジェラルド氏は、そのペースに戻ると考えているようです。これは、アマゾン・ドットコムが第4四半期のガイダンスで予想する、AWSを含む売上高成長率2~8%を上回ります。

パンデミックによるブームにもかかわらず、国内のEコマース売上高は小売売上高全体の15%未満にすぎません。ガソリンスタンドのようにオンラインで買えないカテゴリーもあるとはいえ、この数字は、アマゾン・ドットコムをはじめとするEコマース企業にとって、大きな成長機会が残されていることを示しています。

フィッツジェラルド氏はまた、アマゾン・ドットコムが市場シェアを犠牲にしてまで倉庫を閉鎖・解約しているといううわさを否定した上で、同社が自社のキャパシティを活用し、Buy with Primeなどのプログラムで攻めに出る計画であると述べました。

株価への影響

投資家は、パンデミック期にEコマースのトレンドを過大評価したように、今度はEコマースの成長鈍化を過度に懸念しているようです。実際には、アマゾン・ドットコム、ショッピファイ、エッツィ、ウェイフェアといったEコマース企業の成長率が低い理由は、ベース効果やマクロの逆風など、一時的な要因によるところが大きいと思われます。

過去1年間で50%近く下落しているアマゾン・ドットコムの株価は、売上高や、今後の大幅な利益改善の可能性を考えると極めて割安に見えます。株価売上高倍率(PSR)は2倍未満であり、AWSを独立した事業セグメントとする以前から見ても、最も割安な水準にあります。同社はその後、AWSを1つの事業セグメントとして分離したことで、クラウドインフラの収益性の高さが明白になりました。

アマゾン・ドットコムに関するフィッツジェラルド氏の見方が正しければ、1月下旬に予定されている次の決算発表直後に株価は急騰する可能性があります。年末商戦を含む第4四半期の売上高が予想を上回り、力強い2023年のガイダンスが発表されれば、投資家は間違いなく歓迎するはずです。

しかし、Eコマースのトレンドに関するフィッツジェラルド氏の予想が正しくなかったとしても、アマゾン・ドットコムの株価が回復する可能性はあります。Eコマースの成長はいずれ加速するでしょうし、アマゾン・ドットコムをはじめとする同業各社は恩恵を受けるはずです。株価は2022年に50%近く下落していますが、成長率と収益性が改善すれば、上昇する可能性は大いにあります。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Jeremy Bowmanは、アマゾン・ドットコム、エッツィ、ショッピファイの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、エッツィ、ショッピファイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールはウェイフェアの株式、および以下のオプションを推奨しています。ショッピファイの2023年1月満期の1,140ドルコールのロング、ショッピファイの2023年1月満期の1,160ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。