2023年、日経平均のメインシナリオ
2023年の日本の株式市場は米国の景気減速を気にしつつも、基本的には堅調な展開が想定される。日経平均株価は米国経済失速懸念で前半に調整する場面があるが、その後は好調な内需や業績の回復期待で上値を試すと予想する。日経平均株価の予想レンジは2万6,500円~3万2,000円。安値は年前半、高値は年末付近というのがメインシナリオだ。
心配される米国株式市場だが、アノマリー(説明はつかないが法則性がある)からは、前向きなデータがある。次回の米大統領選は2024年で、2023年はその前年にあたる。大手調査機関によれば、1943年以降で大統領選前年は過去20回あるが、NYダウ工業株30種平均が年間で上昇したのは、うち19回で下落はオバマ氏2期目の1回のみだった。
つまり、“勝率”は実に95%で、20回平均のパフォーマンスは15.4%となっている。政権与党が大統領選に向けて経済対策を打つなど、地ならしをするケースがあるほか、与野党ともに前向きな話題が増えることが要因とみられる。
また、欧米に比べて日本の経済状態は相対的に優位であることが下支え要因となっている。下記はIMF(国際通貨基金)の経済見通しだ。
2021年、2022年と日本は欧米に比べ劣っているが、これは新型コロナウイルス感染症への対応の差と言える。いち早く経済を再開した欧米に対し、日本は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などでブレーキを踏み続けていた。2023年は欧米が急速な利上げの影響で景気が減速する一方、日本は経済再開やインバウンド受け入れが本格化するため、欧米減速の影響は限定的となりそうだ。
結果的に伸び率は低くても欧米よりは成長できることを示唆している。内需の堅調さが株価の下値を支えることになりそうだ。
自動車、半導体関連の投資が回復傾向へ
このような中、2023年の投資テーマは「挽回・回復」、「リオープン」が有望とみている。
2022年は半導体不足などサプライチェーン(供給網)の混乱や、中国のゼロコロナ政策で周辺産業が影響を受けた。トヨタ自動車(7203)は2023年3月期の生産台数を従来の970万台計画から920万台へと50万台下方修正している。
SUBARU(7270)や三菱自動車工業(7211)なども同様だ。既に半導体不足は解消されつつあり、2023年は挽回生産が進むとみられる。また、利益押し下げの要因となっている資材価格の高騰も一巡しつつあり、採算も改善に向かう可能性が大きい。
中国の影響としては、サーボモーターやロボットに強みがある安川電機(6506)やNC(数値制御)装置世界首位のファナック(6954)などが業績の下方修正を余儀なくされた。
中国ではゼロコロナ政策を見直し、ウイズ・コロナに舵を切りつつある。2022年の成長率計画5.5%に対し、7~9月期は3.9%成長にとどまった。雇用や資産価格に影響が出始めており、2023年は経済立て直しに向かう公算が大きい。FA(工場自動化)や半導体投資が回復する見通しだ。
空圧制御機器のSMC(6273)、センサーのキーエンス(6861)、直動案内機器のTHK(6481)、電子部品の村田製作所(6981)などが該当するだろう。
インバウンドも活性化の兆し。多様な内需セクターの追い風となるか
リオープンでは、10月11日に政府は訪日外国人入国の際の水際対策を大幅に緩和した。10月の訪日外客数は約50万人と、前月比で2.4倍となった。2023年はこの流れが加速することが確実視される。
円安も追い風だ。コロナ禍直前の2019年末は1ドル108円で、135円付近ならば当時に比べ25%の円安水準。つまり、同じものが25%引きで買える計算だ。2019年の訪日外国人は年間3188万人で、月間ベースでは265万人となる。
また、国内では現在コロナは危険度の高い「2類相当」だが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる議論が浮上している。飲むコロナ薬「ゾコーバ」の緊急承認もあり、生活は日常に戻ることも予想される。
ANAホールディングス(9202)、東海旅客鉄道(JR東海)(9022)などのほか、ホテルや外食のロイヤルホールディングス(8179)、宴会場やホテルの藤田観光(9722)、居酒屋チェーンで傘下に焼き肉や回転寿司も展開するコロワイド(7616)、高島屋(8233)などの小売りなど幅広い内需セクターが該当しそうだ。
EV分野を筆頭とするパワー半導体関連に注目
最後に、パワー半導体関連をピックアップしたい。パワー半導体とはモーターや照明などの制御や電力の変換を行う半導体のことである。高い電圧、大きな電流に対しても壊れない構造を有することでパワー半導体と呼ばれる。
今、最も注目を集めているのがEV分野だ。モーターを低速から高速まで精度よく回すことでEVの性能を上げ、また、効率よく動かすことで省エネ・省電力化に貢献する。これまでのパワー半導体はシリコン(Si=ケイ素)ウエハだったが、高性能化需要の高まりで次世代のSiC(シリコンカーバイド=炭化ケイ素)という、2つの元素を合わせた化合物半導体へのニーズが高まっている。
ディスコ(6146)のほか、ローム(6963)、富士電機(6504)などが強みを有している。