モトリーフール米国本社、2022年12月13日 投稿記事より

主なポイント

・11月の消費者物価指数は予想を下回る上昇率となった
・インフレ率は2ヶ月連続で予想を下回り、これは非常に良好なトレンドである
・ただし、不採算のグロース株については慎重姿勢を崩してはいけない

消費者物価指数が予想を下回ったことで、利益の出ていない成長企業の株価が力強く上昇

高成長ソフトウェア企業であるトゥイリオ、モンゴDB、データドッグの株価は、12月12日、13日と2日連続で上昇しています。

理由は明白です。12月13日朝に発表された11月の米消費者物価指数(CPI)が予想よりも良好な結果となり、2ヶ月連続で予想を下回ったからです。

急成長していても利益を生み出していないハイテク企業の株価は、インフレ率や金利に敏感に反応する傾向があり、12月12日と13日の動きも例外ではありません。しかし、大幅に下落しているこれらのグロース株に対する警戒を解き、買いを宣言するのは早計かもしれません。

ハイテク成長株の上昇は何を意味するのか

11月のCPIは前月比で0.1%上昇、前年同月比では7.1%上昇となりました。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.2%上昇、前年同月比6%の上昇でした。総合CPIもコアCPIも、予想されていた前月比0.3%の上昇を下回りました。

特に心強かったのは、インフレ率の低下が広範囲に及んだことと、遅行指数である住居費インフレ率が0.6%上昇し、全体を押し上げたことです。住居費の統計は6~12ヶ月の遅れがありますが、ほとんどのリアルタイムデータでは、住居費の上昇率は既にマイナスに転じていることが示されています。従って、CPIのトレンドは、実際には今回の良好な数字が示す以上に、低い可能性があります。

2022年はパンデミック後のインフレ急騰で長期金利が上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)がフェデラルファンド(FF)金利を急速に引き上げざるを得なかったことを考えると、これは間違いなく好材料です。

インフレ率と金利の急上昇は、通常すべての株式にとって悪材料ですが、利益が出ておらず、株主に配当を支払っていない企業にとってはなおさらです。これには多くの理由があります。金利が上昇すると、株式よりも短期債券の魅力が増し、投資資金の奪い合いになります。

また、金利が上昇すると借入コストが上昇し、経済が減速します。さらに、株式の本源的価値は、将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引いたものであるため、企業の利益が遠のくほど、現在の株式価値は低くなります。つまり、将来のキャッシュフローで株式価値の大部分が決まることを考えると、現在赤字の企業は、高金利環境の下では特に、バリュエーションが押し下げられることになるのです。

そのため、トゥイリオ、モンゴDB、データドッグのように利益を上げていないハイテク成長株にとって、ここ2ヶ月のインフレ率の鈍化は非常に喜ばしいニュースでした。

12月12日に株価が上昇したのは、おそらく12月13日に発表されるCPIの鈍化を見越したものと思われます。また、別のSaaS(Software-as-a-Service)企業がプライベート・エクイティ投資会社に買収されることで合意したというニュースも影響しているかもしれません。

今後はどうなるのか、投資家として注視するポイント

投資において、マクロ経済要因ばかりに注目すると、企業固有の要因を見逃しがちになります。不採算の成長株を一様に無視すべきではありませんが、インフレが緩やかになっているとはいえ、長期国債利回りが2%を割り込んだパンデミック期間中と比べると、金利が大幅に高い水準に落ち着く可能性は十分にあります。

つまり、投資家は高成長株を精査する必要があるということです。これからは、企業が今後10年間に売上高を現実的にどの程度伸ばすことができるか、そして株式報酬を含めて最終的に利益率がどの程度になるかを正確に把握することが重要になります。

例えば、データドッグは2022年の初めにはGAAPベースで営業利益を上げていましたが、第3四半期に支出が増加した結果、今期累計で営業利益はマイナスに転じました。しかし、多くのソフトウェア企業で業績が鈍化する中、データドッグは2022年も健全な成長率を維持しており、赤字といっても極めて小幅です。

そのため、データドッグはいずれ、大幅な利益を生み出すはずです。一方で、トゥイリオは第3四半期だけで5億ドル近い営業損失を計上しており、大幅な黒字化はほとんど期待できません。

今回のインフレ率の低下は確かに良いニュースであり、年初来で大幅に下落しているグロース株が輝きを取り戻す兆候かもしれません。しかし、パンデミックの頃のような成長率や超低金利の時代が戻ることを期待してはいけません。つまり、投資家として、企業ごとに精査し、これらの高成長企業の利益を、これまで以上に注視する必要があるということです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Billy Dubersteinは、記載されているどの銘柄のポジションも保有していません。同氏の顧客は、記載されている銘柄の株式を保有している可能性があります。モトリーフール米国本社はデータドッグ、モンゴDB、トゥイリオの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。