毎週月曜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問に広木隆が回答いたします。回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。
Q.日経平均が上がるのに必要なきっかけは?
日経平均が28000円前後で小康状態です。
先週はFRBの高官のタカ派発言などで上値を潰された形で厳しそうです、
ここから上にいくのは、どういうきっかけが必要なのでしょうか。
回答
日経平均は一部の寄与度の大きい銘柄の影響で上値が重いですが、TOPIXは8月の高値を払ってほぼ年初の水準まで上昇しています。
TOPIXバリュー指数は22日、2018年2月以来4年9ヶ月ぶりの高値をつけました。「日本株」全体で見れば、それほど上値が重いわけではありません。
そうは言っても日経平均が日本市場の主要な指標であることは確かです。
日経平均が上値を追ってくるのは、来月のFOMCでFEDの利上げ打ち止め感が示されるタイミングと見ています。そこからサンタクロース・ラリーが始まると思います。
Q.株価にフレンドリーな為替水準について
円安は150円台を付けたところで終了したとみてよいのでしょうか?
そして為替はどの程度の水準が株価にはフレンドリーなのでしょうか。動きが投機的ということが問題なのでしょうか。
回答
はい、円安は150円台を付けたところで終了したとみています。
為替はどの程度の水準が株価にはフレンドリーなのかは、難しい質問です。
株価と一口に言っても、輸入企業、輸出企業では正反対ですし、また先般の決算で明らかになったように典型的な輸出産業である自動車でも、三菱自動車のように円安で好業績になる企業もあれば、トヨタのようにコスト増が円安メリットを相殺してしまう企業もあるなど様々です。
「動きが投機的ということが問題」というのはその通りであり、本来ファンダメンタルズに応じて動く為替レートは、もっと緩やかな変動が望ましいと思われます。
Q.課税に関する1億円の壁問題について
自民党の税制調査会などで、課税に関して1億円の壁問題が上がっています。株投資への移行に逆行していると思っています。
広木さんのお考えをお聞かせ下さい。
回答
この問題は少し誤解があります。岸田政権発足直後にされた議論と直近の議論とでは、大きく違いますので、その点を踏まえる必要があります。
この問題の根本は、所得の多い富裕層ほど税負担率が低くなる逆転現象を是正する必要があるということです。
給与は高額になるほど税率が上がる累進制で、所得税の最高税率は45%、分離して課税する株式や土地・建物の売却益の所得税率は一律15%。株式などの売却が多いほど税負担が低くなる傾向があります。
実際に、所得税と社会保険料の負担率は所得5千万円超~1億円の層で28.7%と最も高く、所得5億円超~10億円は21.5%、50億円超~100億円では17.2%となり、300万円~400万円の17.9%より低くなっています。
1億円を境に負担率が下がることから、これを財務省は「1億円の壁」と呼んでいるわけです。
当初は、①富裕層の税負担率が低い=②それは富裕層ほど株式などから得る所得が多い=③株式投資はお金持ちのするもの=④では株式投資に課税しよう、という議論でした。これは明らかに、③以降のロジックがおかしい。僕もさんざん批判しました。
株式投資が悪いわけではなく、税制がおかしいのだから、そこを直そうという議論に今はなっています。つまり、超富裕層に課税しようということで、誰でもが対象になる当初の金融所得課税の議論とは別に検討される方向です。
実際に、23年度税制改正では中間層の所得倍増に向け、積立型の少額投資非課税制度(NISA)の投資枠や期間を拡充すると岸田首相は表明しました。
ただ、これが最近、骨抜きになりそうな気配で、そちらのほうが問題です。
岸田政権の政策については、また別の機会にお話したいと思います。
Q.米国の今の相場について
米国の今の相場は、業績相場でしょうか。
また、S&P500の底値はいつごろでしょうか?
回答
「米国の今の相場は、業績相場でしょうか」というご質問には、そうではありませんとお答えします。それでは、相場のサイクルではどこに位置するかというと、それを特定するのは非常に難しい。
一般に言われる株式相場のサイクルは4つのフェーズがあります。
金融相場⇒業績相場⇒逆金融相場⇒逆業績相場というものです。
金融緩和を好感して株が上がり、やがて金融緩和などの景気対策が奏功して景気が上向き、業績が回復する。それを好感して上がるのが業績相場です。
しかし、今度は景気の過熱に対して金融が引き締めに転じます。これで売られるのが逆金融相場です。そうした金融引き締めの効果で景気が悪化、企業業績も落ち込みます。それを嫌気して売られるのが逆業績相場です。そうなってくると当局は景気対策で金融緩和に転じ、こうして再び金融相場が始まる。これが典型的なサイクルです。
ただし、こうしたサイクルの間には中間反騰、中間反落が挟まれることがよくあります。また、明確にひとつのステージが終了してから、次のステージに移行するというものではなく、オーバーラップしていることも多々あります。
少なくとも今年はFEDの利上げで米国株が下げてきました。
それは逆金融相場でしょう。すると今後待ち受けているのは逆業績相場。
景気の悪化とともに企業業績が低迷します。
現在はその移行期に見られる中間反騰局面かもしれません。
Q.株価の動きは仕組まれているのでしょうか?
FRBの微妙な発言や各種経済指標発表でこんなにも株価が動くのが不思議です。リセッション入りは濃厚ですし、インフレも簡単に下がるとは思えません。株価が上がる下がるも買い場、売り場を作るために仕組まれているような気もしますがいかがでしょうか?
回答
はっきり言って「気のせい」です。
仮に「仕組んだ」人(たち)がいるとします。しかし、何億何千万もの不特定多数が参加し、巨額のマネーが動くマーケットで、「仕組んだ」通りに相場が動くことなどあり得ないでしょう。「仕組まれている」― そう考えるのは陰謀モノ映画などがお好きなのではと推測します。
もしかしたらご質問者様は「仕掛け」という相場用語から誤ったイメージをお持ちなのではないでしょうか。確かに「仕掛け」という相場用語があります。
市況解説などでは、「薄商いのなか、投機筋による仕掛け的な売りで相場が崩された」などと言われることがあります。
しかし、「仕掛け」とは「相場の騰落を予想して新たに売り買いの注文を出すこと」を言います。つまり、「仕掛ける」投機筋も、予想に基づいて売ったり買ったりしているわけで、そこに絶対勝てる保証はありません。これと対照的なのが裁定取引(アービトラージ)です。裁定取引は仕組んだ時点で99.9%利益が確定しています。その意味では、「仕組み」とはこうしたアービトラージャーや、HFT(高速高頻度売買)で稼ぐプレーヤーにこそ、ふさわしい呼称だと個人的には思っています。
Q.予想数値は誰が予想した数値なのでしょうか?
ここ数ヶ月CPI等の数値に振り回される相場ですが、予想数値は誰が予想した数値なのでしょうか?
回答
エコノミストです。
Bloombergでは経済指標ごとに何人のエコノミストが予想を出しているか、その人数(場合によっては調査機関名)までわかります。
日本では日本経済研究センターが行っている「ESPフォーキャスト調査」というものがポピュラーです。これは毎月、日本を代表するエコノミスト約40名に最新の経済見通しを尋ね、その集計結果から平均的な見通しを「コンセンサス予測」とするものです。
しかし、この「ESPフォーキャスト調査」の欠点は、「日本を代表するエコノミスト約40名」に僕が含まれていないことであります。
このコーナーでは、毎週月曜夜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問にチーフ・ストラテジストの広木隆が回答いたします。
今回は2022年11月21日のセミナーで寄せられたご質問から抜粋して回答しています。
回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。
【広木隆のMonday Night Liveについて】
※スマートフォンでもご視聴いただけます。
※専用配信システム(直伝社システム)、YouTubeで配信します。質問チャットへご参加
※質問の入力はLIVE配信中のチャットに限ります。
※「広木隆のMonday Night Live」には、開催日当日のマネックス証券サイトの「広木隆のMonday Night Live」バナーからご参加ください。