モトリーフール米国本社、2022年11月15日 投稿記事より
主なポイント
・アマゾン・ドットコムは、新たなオンライン医療サービス「アマゾン・クリニック」の開始を発表
・新サービスは、サービス終了間近のアマゾン・ケアよりも範囲が限られている
・アマゾン・クリニックは、アマゾン・ドットコム全体に大きな影響を及ぼすことはないだろうが、いずれにしても足元の株価は魅力的な水準
結局のところ、アマゾン・ドットコムはオンライン医療をあきらめていない
アマゾン・ドットコムは11月14日、1万人の人員削減を計画していると報じられて大きな話題となりました。ところが、同社はその後、さらに驚く展開を見せました。
翌11月15日、同社は「顧客が必要な時に、必要な方法で、手頃な価格のオンライン医療につながることのできる」新たなオンライン医療サービスとして、「アマゾン・クリニック」を発表したのです。新たなヘルスケアサービスを発表したことで、アマゾン株は買いなのでしょうか。
2度目の正直?
以前にも同じ話を聞いたことがあるように感じる人もいるかもしれませんが、その通りです。アマゾン・ドットコムは2019年に、「アマゾン・ケア」というオンライン医療サービスを立ち上げました。しかし、アマゾン・ケアのサービスは2022年末で終了します。
アマゾン・クリニックとアマゾン・ケアは、何が違うのでしょうか。まず、対象が大幅に限られています。アマゾン・クリニックがオンライン医療を提供するのは、にきび、アレルギー、片頭痛、尿路感染症など、20種類ほどの一般的な症状に限られます。
また、アマゾン・ケアは全米で利用可能でしたが、アマゾン・クリニックは当面は32州のみでのサービス提供となります。アマゾン・ケアは多くの都市で対面式の医療サービスも提供していましたが、アマゾン・クリニックが提供するのはオンライン診療のみです。
アマゾン・クリニックでは、顧客は認可を受けた遠隔医療のプロバイダーのリストから、医療プロバイダーを選択することができます。ただし、費用はすべて自己負担となります。アマゾン・クリニックは少なくとも今のところ、保険が適用されません。
潜在的な影響
アマゾン・ドットコムの株価は、11月15日の取引開始直後に4%近く上昇しました。投資家は、アマゾン・ドットコムが再び、遠隔医療銘柄の仲間入りをすることを歓迎しているのでしょうか。それも多少はあるかもしれません。しかし、株価が急騰した主な理由は、10月の米国卸売物価指数の伸び率が予想を下回ったことを受けて、主要株価指数が軒並み上昇したことにあります。
実際のところ、アマゾン・クリニックがアマゾン・ドットコムの事業全体に与える影響は、ほぼ間違いなく小さいと思われます。アマゾン・ドットコムの2022年第3四半期売上高は1,271億ドルでした。これほどの売上高に影響を及ぼすとしたら、相当数の患者がオンライン医療を受ける必要があります。
確かに、アマゾン・ファーマシーにとっては、アマゾン・クリニックが発行する処方箋が追い風になるかもしれません。しかし、顧客は別の薬局で薬を処方してもらうこともできます。アマゾン・ファーマシーの取扱量が増加するといっても大した増加ではなく、アマゾン・クリニックのサービス開始直後はなおさらでしょう。
アマゾン・ドットコムは、ヘルスケアサービスは医療費支出口座(FSA)や医療貯蓄口座(HAS)の対象になると言っていますが、保険が適用されないという点からも、アマゾン・クリニックが企業全体の業績に大きな影響を及ぼすことはないと思われます。
異なる2つの質問
新たなヘルスケアサービスの開始を理由にアマゾン株は買いなのでしょうか。答えはノーです。アマゾン・クリニックの影響は、投資家の投資判断を左右するほど大きくはないと思われます。一方で、そもそもアマゾン株が買いかどうかと聞かれたら、それは別の質問です。この問いに対する答えは、間違いなくイエスです。
アマゾン・ドットコムには、依然として大きな成長機会があります。インフレの緩和を示唆する最近の兆候は、同社にとって好材料です。インフレ率が低下すれば、Eコマース事業や、クラウド事業のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)にとってプラスに寄与するはずです。
株価は、ピークから大幅に下落しており、グレート・リセッション以来の下げ幅となっています。しかし、アマゾン株は急落しても、その後に猛然と上昇することは、歴史が示しています。
アマゾン・クリニックは、いずれ大成功を収めるかもしれません。しかし、もしそうでなくても、オンライン医療サービスは、アマゾン・ドットコムが新たな市場に参入する能力があることを物語っています。アマゾン・ドットコムにとって、新サービスが成功することもあれば、うまくいかないこともあるでしょう。しかし、同社のように、成長の原動力を多く持っている銘柄は、長期的に高いパフォーマンスを実現する傾向があります。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Keith Speightsは、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。