モトリーフール米国本社、2022年11月6日 投稿記事より

主なポイント

・クアルコム:市場が軟調な短期的見通しを重視していることから、株価は極めて割安
・ロク:メディアストリーミング業界で成長しているにもかかわらず、株価は急落
・アマゾン・ドットコム:インフラへの投資が原因で2022年の利益が落ち込んでいるが、後々、さらに大きな利益となって返ってくると思われる

破壊的な弱気相場は、将来的に大きな投資リターンを獲得するためのお膳立てにすぎない

2022年の弱気相場が痛みを伴っていることは明らかで、市場を混乱に陥れています。成長を維持し、利益を上げている多くの優良企業でさえ、まるでゴミのように投げ売りされているのです。インフレ抑制を目的とした米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げは、短期的に世界経済を犠牲にする可能性もあり、今や世界中から視線を注がれています。

しかし、優良企業はこうした痛みにも耐えるようにできており、嵐が過ぎた後にはきっと、さらに強くなって浮かび上がってくるはずです。以下では、年初来の株価下落で10年に1度の好機が訪れている3銘柄を紹介します。

クアルコム:10年ぶりの低バリュエーションとなっている独占的企業

圧倒的な競争優位性を持つ企業の予想株価収益率(PER)が10倍を下回ることなどめったにありませんが、今のクアルコムがその状況にあります。半導体大手クアルコムのPERは、この10年間の困難な時代でさえ、どんなに低くても15倍でした。つまり、PERが15倍に戻るだけで50%の上値余地があるということです。

もちろん、今後2、3四半期は波乱含みの展開になるかもしれません。11月2日に発表された7-9月期(第4四半期)決算は、売上高は予想を上回りましたが、企業側は今後について、売上高と1株当たり利益(EPS)の減少が予想されるとの見通しを示しました。スマートフォン需要の低迷と高水準の販売在庫により、クアルコムにとって最大のセグメントである携帯電話向け半導体の売上は急激に落ち込んでいます。

とはいえ、クアルコムの中核事業は利益率が極めて高く、好不況にかかわらずキャッシュフローを生み出すことができる見通しです。同社は重要な無線通信特許を持っているため、携帯電話が売れるたびに、クアルコムにはロイヤルティが入ってきます。携帯電話向け事業の営業利益率は73%と驚くほど高く、2022年9月期には通期で46億ドルの営業利益を生み出しました。半導体チップ事業も、昨年度の営業利益率は34%と高水準で、営業利益は130億ドル近くに上ります。

2023年に景気後退の影響で携帯電話需要が落ち込んだとしても、5G端末の成長が終わるわけではありません。いずれ景気が回復し、在庫が解消されれば、市場は再び成長するはずです。

それよりも、クアルコムに関して興味深いのは、経営陣がクリスティアーノ・レンノ・アモンCEOの下、自動車コネクティビティや、消費者向けおよび産業向けを対象としたモノのインターネット(IoT)の分野で、新たな高成長セグメントの開拓に取り組んでいる点です。

IoTセグメントは特に目覚ましく、2021年度の売上高は37%増、チップ売上高の18%を占めました。自動車セグメントの売上高は41%増の14億ドルでした。自動車向けチップは、2021年度のチップ売上高のわずか3.6%を占めるにすぎませんが、アモンCEOは先日のカンファレンスコールで、自動車向けチップのデザインウィン・パイプラインが300億ドルに上ることを明らかにしました。

携帯電話事業が、成長事業でありながら循環的要素を持つのに対し、自動車は新しいモデルが開発されるたびに、デジタルコックピットや先進運転支援システム(ADAS)など、より多くのチップが搭載され、より高度なコネクティビティが採用されます。さらに、製造業などでは、自動化がますます進んでいます。そのため、これらの小さなセグメントは、経済全体が不況に陥っても成長を遂げると予想されます。

極めて低いバリュエーション、高い利益を生み出す既存事業、自動車や産業向け市場を対象とした魅力的で長期的な成長ドライバー、そして足元で3%近い配当利回りを持つクアルコムは、10年ぶりの低バリュエーションの下で、素晴らしいリスクリターン特性を提供してくれるとみられます。

ロク:試練は一時的

メディアストリーミング技術のエキスパートであるロクも、11月2日に2022年第3四半期決算を発表しました。市場は、企業側が7月に出した控えめなガイダンスに基づいて予想を立てていましたが、結果は予想をはるかに上回り、このガイダンスが過度に保守的であったことが判明しました。調整後1株当たりの純損失は予想より31%少なく、売上高はアナリストのコンセンサス予想を10%上回りました。

このような業績は通常、株価を押し上げます。ところが、ロクは第4四半期についてもソフト・ガイダンスを発表し、これを受けて株価は急落しました。11月2日の時間外取引で、ロクの株価は45.49ドルまで下落しましたが、これほどの安値は2019年1月以来です。

この株価を適正だと思うなら、それはロクをきちんと見てこなかった証拠です。

過去4年間に、ロクのアクティブユーザー数は2,380万件から6,540万件に増加しました。ユーザー1件当たり年間平均売上高は17.34ドルから44.25ドルへと、約3倍に増加しています。ユーザー数の増加とユーザー1件当たり売上高の増加が相まって、ロクの売上高は同期間に339%増加しています。

しかも、これらの業績は、深刻なインフレと消費者の支出控えという、経済的に厳しい期間に達成しているのです。こうした問題はいずれ過ぎ去り、そうなれば、ロクはここ数年の力強い成長トレンドを取り戻すはずです。アンソニー・ウッドCEOも、決算説明会で次のように述べています。

「(市場の低迷は)間違いなく一時的なものです。経済が好転する必要はありません。必要なのは、経済がどこに向っているかについて、人々が確信を持てるようになることです。そうなれば、人々は市場に戻ってきて、再び消費を始めるはずです。」

この予測は、消費者にも広告主にも当てはまります。いつになったら市場が回復するのかは分かりませんが、あらゆる兆候がV字回復を示唆しています。ストリーミングメディアは、世界規模でのエンターテインメントの未来です。業界の主力企業であるロクは、サービスを限定しないメディア視聴プラットフォームと、高度に洗練されたユーザーエクスペリエンスを提供しています。

ロクのバリュエーションは極めて低く、株価売上高倍率(PSR)はわずか2倍です。どれほどのバリュー株でも、PSRはせいぜい4倍程度であり、しかも長期的成長性ではロクの足元にも及びません。ロクに関しては、2桁のPSRでも妥当と言えるかもしれません。長期的に、ロクは世界的なエンターテインメント帝国を築きつつあり、今後数十年にわたって高い利益成長が期待されます。

足元が割安なうちにロクに投資しておけば、1年後、2年後、そして数十年後にはきっと満足しているはずです。

アマゾン・ドットコム:クラウドに投資すると、「優良な」Eコマース事業がおまけで付いてくる

アマゾン・ドットコムの株価が地に落ちています。市場は、同社を評価する方法について、完全に興味を失ってしまったようです。最近では、目先の収益性が過度に注目され、アマゾン・ドットコムの次の成長に向けた積極的な投資は、完全に敬遠されています。ハイテク業界をリードする同社の株価は、年初来で45%も下落しています。

2022年第3四半期決算は、ウォール街が抱えていると思われる問題を物語っています。Eコマース事業は第3四半期に成長を取り戻し、北米部門と海外部門を合計した売上高は、前年同期比12.5%増の約1,070億ドルでした。ところが、Eコマース事業は営業利益ベースで依然として赤字であり、北米部門は4億1,200万ドル、海外部門は24億7,000万ドルの営業損失を生み出しました。アマゾン・ドットコムがいかに強力なオンライン小売業者であるかにかかわらず、投資家はこの営業赤字が、持続的成長を目的とした事業改革によるものだと理解できずにいるのです。

一方で、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を展開するクラウド事業は、ここ数年にわたってアマゾン・ドットコムの利益を稼ぎ出してきましたが、成長に鈍化が見え始めています。AWSの第3四半期売上高は、FRBの利上げ政策の副作用による記録的なドル高が足かせとなり、前年同期比で「わずか」27.5%の成長にとどまりました。営業利益は54億ドル、営業利益率は26%でした。堅調な数字ですが、それでも第2四半期の営業利益率29%から低下しています。

AWSの利益は、Eコマース事業の一時的赤字を補って余りあるものです。しかし、市場はまるで重箱の隅をつつくように、アマゾン・ドットコム全体を快調に走らせ続けることができるAWSの力よりも、Eコマース事業が短期的に赤字に落ち込んだことばかりに着目しているのです。

他の大手ハイテク企業と同様に、米ドル高や世界経済の減速は、アマゾン・ドットコムにとって悪材料です。しかし、アマゾン・ドットコムは長期的な準備に余念がありません。積極的投資によって現在は利益が圧迫されており、株価は12ヶ月実績1株当たり営業利益の72倍の水準にあります。アマゾン・ドットコムは以前にもこのような状況を経験したことがありますが、その後に株主に大きなリターンをもたらしました。Eコマースとクラウドコンピューティングのリーダーであり、今でも成長しているアマゾン・ドットコムへの投資を考えているなら、今が買い時かもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anders Bylundは、アマゾン・ドットコムおよびロクの株式を保有しています。元記事の筆者Billy Dubersteinはアマゾン・ドットコムの株式を保有しています。同氏の顧客は、記載されている銘柄のポジションを保有している可能性があります。元記事の筆者Nicholas Rossolilloは、アマゾン・ドットコムおよびクアルコムの株式を保有しています。同氏の顧客は、記載されている銘柄のポジションを保有している可能性があります。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、クアルコム、ロクの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。