10月20日、米ドル/円相場が150円大台にまで到達しました。年初115円前後で推移していた米ドル/円相場は、たった10ヶ月で35円も上昇しています。

デフレが染み付いた日本でも物価が上がりだしたことで、インフレをもたらす円安を誘導しているとして、メディアや国会でも批判が繰り返されていますが、仮にここで日銀が利上げに踏み切ったとしても円安/米ドル高が止まるわけではありません。

そもそも日本では金融引締めが必要なほどインフレは加熱しておらず、むしろ利上げにより景気が悪化し、日本売りを招く可能性が大きいと考えられます。

2022年の米ドル/円相場の上昇は加熱するインフレを、なんとか止めたい米国による利上げがもたらした「米ドル高」によるところが大きいため、米国の金融政策の転換がなければ、円安/米ドル高のトレンドが崩れることはなさそうです。

米ドル上昇はFRBの金融引締めが大きく起因している

2022年の米ドル/円相場の値動きは「円安」でもありますが、「米ドル高」によるところが大きいというのは円以外の主要国通貨が米ドルに対して、どのように動いているかを確認することで見えてきます。

米ドルの総合的な価値を表す米ドルインデックス(DXY)は、2020年3月のコロナショック後の大規模金融緩和を皮切りに低下を続けていましたが、2021年6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、テーパリングの議論が開始されたタイミングで米ドル安のトレンドが終焉しました。

テーパリングとは、量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくものです。実際に2021年11月のFOMCでテーパリング開始が決定、スタートしたところから米ドル高にはずみがついていることが確認できます。

さらに2022年3月、FOMCがいよいよ金利の引き上げに着手すると、一気に米ドルインデックスの上昇が加速し、このトレンドは今も続いています。

先進国の中で唯一、金利の引き上げに着手せず大規模緩和を続けている円インデックスが最も下落率が高いのは言うまでもありませんが、ここで確認しておきたいのは、英国、オセアニア、欧州、カナダといった主要国も利上げに着手し、利上げのサイクルに入っているにも関わらず当該通貨インデックスは軒並み下落しているという点です。

これは、自国のインフレ対策を最優先に掲げる米国の過去に類を見ないスピードでの金融引締めに、どの国も追いつけない&追い越されてしまったためで、円だけが下落しているわけではなく、米ドルがあまりにも強すぎるというのが実態なのです。

【図表】通貨インデックス比較
出所:Trading View

米ドル/円転換の最大の注目ポイントは「ターミナルレート」

ターミナルレートとは、今回の米国の金融引締めサイクルにおける利上げの最終着地点のことです。つまり、米国の政策金利であるFFレートは最大で何%まで引き上げられるのかということなのですが、この最終ゴール地点がなかなか定まらないことによって、米ドル高を加速させています。

2022年9月のFOMC開催時点ではターミナルレート4.6%がコンセンサスだったのですが、先週発表された9月の米国の消費者物価指数でコアCPIがさらに上昇していたことや、ミシガン大学の1年先、5~10年先のインフレ期待がそれぞれさらに上昇していたことなどを受けて、ターミナルレートが5%に近づくとの見方が強まってきています。

市場は現在3.25%のFFレートが5%に届くまでには、あと何回のFOMCで、どの程度の刻みで利上げを実施する必要があるのか神経質になっているのです。

ゴールポストが見えれば市場は安心できるのですが、想定を超える米国のインフレの粘着性に米連邦準備制度理事会(FRB)は何度も政策の修正を強いられており、さらなる利上げの可能性を織り込む形で米ドル上昇が加速しているというのが、米ドル/円相場が150円まで上昇した背景としてあります。

そのため、ゴールポストが見えてくるまでは米ドル/円相場は、なかなかトップアウトしないと考えられ、日本の通貨当局が介入を繰り返しても時間稼ぎにしかならないでしょう。