昨今の世界経済のインフレ状況に自身の資産運用方針を見直すべきか悩まれる方もおられるのではないでしょうか。リスク資産を保有する上では状況の変化にあわせて運用方針や資産配分を見直すことは重要です。
株式相場が各種の経済指標が発表される度に大きく変動する中、債券投資の好機ととれる傾向がデータから見られるようになりました。
以下のチャートは世界株式指数を世界債券指数で割った数値の推移になります。上に行けば株式が優位、下に行けば債券が優位となりますが、赤いシャドーで示した景気後退期には債券の優位性が際立っています。
そして足元も世界的な利上げ基調と共に景気減速懸念が強まってきました。10月のIMFによる世界経済見通しにおいてチーフエコノミストは「最悪期はこれから」としています。
これまでは政策によって金利は低く抑えられ、債券は投資対象としての妙味は低かったものの、今年金利は急速に上昇しています。今後利上げ停止と共に金利上昇が止まることは債券価格には良い環境となる一方、株式は景気動向が焦点となります。債券投資は景気後退リスクにも対応するものとして、また株式からの分散投資の対象として注目されます。
そこで、そもそも債券とは?という点からその種類、投資方法について3回に分けて紹介いたします。
そもそも債券とは?
債券とは、資金の足りない人がお金を〇円貸してください、□年後に全額返します、その間利息を定期的に△%支払います、と約束して発行する有価証券です。
貸す側からすれば貸す元金に加えて利息が入ることがメリットですが、その間に物価が上がってしまえば他の運用を考えた方が良かったことになりますし、貸したお金が返ってこない可能性もあります。
そのために借り手は利息を払う必要があり、その△%の金利は経済・物価の状況、借り手の信用リスク、借入期間などを元に決定されます。金利が高ければそれは借り手のリスクや融資期間など、返済がなされないリスクが反映されていることになります。
債券価格の仕組み
債券は国家・企業等様々な機関から発行されており、投資家間で売買が可能となっています。価格も株式同様に発行体を取り巻く環境変化に即して日々変化していますが、債券の理論的な価格は算出式では分子にその債券の利息(利率)・分母に市場金利が来るため、金利が上昇(下落)すると価格は下がり(上がり)ます。また、社債などはリスクの対価として金利が上乗せされますが、信用状況の変化によって金利が上下動することになります。
下の図表は債券価格の下落(上昇)と金利の上昇(下落)の関係を示しています。黒線の債券は2022年11月15日が償還日の米10年国債、利息1.625%です。黄色で示される市場の10年金利がこの債券の利息1.625%を下回る時に債券価格は100を超え、逆に金利が利息を上回って推移する際には債券価格は100を下回ります。また債券は満期償還日が近づくと額面100に価格が収れんしていきます。
債券の特徴
日々債券価格は変動し、金利上昇(低下)局面では保有債券の時価評価が減少(増加)する一方で、無事に償還を迎えれば投資資金が額面100で戻ってきますので、購入価格と償還価格との差額および利息収入が利回りとなります。債券によっては高利回りを追求可能ですし、定期的なキャッシュフローが見込まれることが特徴です。
債券に投資をする際は、満期保有目的を念頭に見込まれる利息を得ながら満期を待てばよいでしょう。一方で途中売却する場合は市場価格が参照されますので金利の状況次第で損得が出ます。また、最初に述べたように貸したお金が返ってこない債務不履行となることはあり得ます。経済情勢等の把握に加え、投資をする債券の信用度を格付けなどで確認することは必要です。
債券投資の考え方
債券には様々な年限がありますが、金利の変動に対して債券価格の変動は満期までの残存期間が長い債券や利率が低い債券ほど、金利の動きによる債券価格のぶれが大きくなります。
金利上昇局面では短期債の方が価格変動の悪影響を相対的に受けない分有利となり、金利低下局面では長期債の方が価格変動の効果を相対的に受ける分有利となります。よって債券投資は満期保有を前提に、状況によっては中途売却も検討可能な運用手段となります。
また企業等によっては信用リスクの問題から金利を上乗せして、魅力的に見える債券もあります。好景気であれば懸念は小さい一方、景気後退期には返済されないリスクが高まり、要求利回りが上昇することで価格が低下することになります。景気サイクルや投資期間に沿った商品選択の余地があると言えます。
債券には様々な発行体から多彩なものが発行されています。また投資信託として販売されているケースも多く、このような債券の種類や実際の商品について次回以降で説明いたします。