モトリーフール米国本社 – 2022年9月19日 投稿記事より

主なポイント

・あまり知られていないが、最も成功しているEコマース企業の1社かもしれない
・高成長株として株価は大幅に上昇しており、そろそろ株式分割を行う可能性がある
・フィンテックへの参入によりすでに大幅で力強い株価の上昇をもたらしてきた

これまでに株式分割を発表してきた有名ハイテク企業

ここ数年、多くの有名ハイテク企業が株式分割を発表して話題となっています。2021年にアップル、トレード・デスク、エヌビディアが株式分割を行ったのに続き、翌2022年にはテスラ、アマゾン・ドットコム、アルファベット、ショッピファイが追随してその時流に乗っています。投資家はこれまで株式分割に魅了されてきており、株式分割を行う企業に再び注目が集まっています。

株式分割を行う一流銘柄の仲間入りが近いと思われるいわゆるディスラプティブ企業(創造的破壊をもたらす企業)の1つが、Eコマースのパイオニアのメルカドリブレです。2007年の上場以来、株価は3,270%という驚異的な上昇を遂げています。しかもこれは、このところのハイテク株の急落後の最近の株価での話です。株式分割でメルカドリブレを取り巻く強固なファンダメンタルズが変わることはないですが、同社に関しては株式分割を行うことが理にかなうと思われる有力な理由が1つあります。

メルカドリブレについて

メルカドリブレは、自身の分野のパイオニアであり、最も成功している企業の1社かもしれませんが、知らない投資家も多いと思われます。ここで簡単に説明しておきます。

メルカドリブレは2007年に設立され、消費者間の商品売買を促進したことから、すぐに「中南米のeBay」と呼ばれるようになりました。その後、同社は急速に進化し、他の多くの成功した競合他社と比較されるようになりました。メルカドリブレは、Eコマースと決済を簡素化するための多くのツールを提供しています。アマゾンと同様のEコマース、配送、受注から配送までの一連業務を代行するフルフィルメントといったソリューション、ショッピファイと似たようなウェブサイト構築ツール、ペイパルをモデルとした決済ソリューションなどです。実際に、ペイパルはメルカドリブレのフィンテック事業を気に入り、同社に7億5,000万ドル出資しています。

こうした成功から、メルカドリブレは事業を展開する各主要市場において、Eコマースとフィンテックのリーディングカンパニーとなっており、アマゾンをもしのぎます。とはいえ、同社の急成長を大きく後押ししたのは、決済事業への参入です。2022年第2四半期のメルカドリブレの決済総額(TPV)は、前年同期比84%増の300億ドルでした。プラットフォーム外の取引(他の実店舗やオンライン小売り企業による取引)が同135%増の212億ドルと、TPVの伸びを牽引しました。

株式分割が理にかなうと思われる理由

企業が株式分割を行っても、事業を取り巻くファンダメンタルズが変化することはありません。少なくとも現実的な意味ではそうです。数字的に見ても、株価と株式数が変わるだけで、時価総額は変わりません。例えば、メルカドリブレが1対10の株式分割を行ったとします。すると、現在約920ドルで取引されているメルカドリブレ株1株に対し、株主は分割後に株価が92ドルの株式を10株保有することになります。つまり、保有株式の総価値は変わらないのです。

ところが、心理的なレベルでは、微妙な影響が生じます。株式分割は、経営陣が事業、ひいては株価が今後も成長し続けると確信していることを株主に示すメッセージと捉えられる傾向があります。こうした自信の表明は通常、投資家に好感され、企業の見通しに対して強気な見方が高まります。もちろん、事業が順調に成長し、経営陣が十分に練られたビジョンを遂行してきた実績があることが前提です。

メルカドリブレの場合、株式分割が理にかなうと思われるもう1つの理由があります。同社の株価は、2021年の後半には1,900ドルを上回る水準で取引されていましたが、ハイテク銘柄が軒並み下落したことを受け、現在は1,000ドルを下回って推移しています。いずれにしても値がさ株価では、一般の個人投資家、特に一度に投資できる資金が1,000ドル未満の投資家には手が届きません。端株取引を扱う証券会社もありますが、それでも投資初心者にとっては躊躇するほどの株価です。

株価上昇を後押し

メルカドリブレの株価は、弱気相場が続く中で、2021年後半に付けた高値から50%下落しています。しかし、最近の業績を見ると、同社の株価が最高値を更新するのは遠い先ではないかもしれません。第2四半期の売上高は、現地通貨ベースで前年同期比57%増の26億ドルとなり、過去最高を更新しました。このうち、Eコマース事業は同26%増の14億ドル、決済事業は同107%増の12億ドルでした。

メルカドリブレの事業の強さは、他の指標でも証明されています。同社のプラットフォーム上で販売された商品の総額を示す流通総額(GMV)は86億ドルに達して前年同期比では26%増となり、300億ドルとなった決済総額(TPV)は同84%の急増でした。

事業が一貫して堅調であり、マクロ経済の逆風に直面する中でも力強く成長していることを考えると、メルカドリブレがすぐ次に株式分割を実施する企業でないとしても、同社株には投資する価値があるかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アマゾンの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。当記事の筆者Danny Venaは、アルファベット(クラスA)、アマゾン、アップル、メルカドリブレ、エヌビディア、ペイパル・ホールディングス、ショッピファイ、テスラ、トレード・デスクの株式、および以下のオプションを保有しています。ショッピファイの2023年1月満期(行使価格1,140ドル)コールのロング、ショッピファイの2023年1月満期(行使価格1,160ドル)コールのロング、ペイパル・ホールディングスの2024年1月満期(行使価格95ドル)コールのロング。モトリーフール米国本社はアルファベット(クラスA)、アルファベット(クラスC)、アマゾン、アップル、メルカドリブレ、エヌビディア、ペイパル・ホールディングス、ショッピファイ、テスラ、トレード・デスクの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールはeBayの株式、および以下のオプションを推奨しています。ショッピファイの2023年1月満期(行使価格1,140ドル)コールのロング、アップルの2023年3月満期(行使価格120ドル)コールのロング、ショッピファイの2023年1月満期(行使価格1,160ドル)コールのショート、アップルの2023年3月満期(行使価格130ドル)コールのショート、eBayの2022年10月満期(行使価格50ドル)コールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。