みなさん、こんにちは。日経平均株価はやはり欧米金利の上昇懸念再燃を反映し、ややダレた展開となってきました。とはいえ、ボックス圏の下値を割り込むほどの失速感もありません。方向感の見え難い状況になっていると言えるでしょう。

ただし、このような時は何かをきっかけに流れが一気に出てきやすいものです。一進一退の相場展開ですが、相場の転換点に備え、少し厚めにキャッシュポジションを持っておきたいと感じています。

コロナ禍で激変したインバウンド消費

さて、今回は「インバウンド消費」をテーマに採り上げてみましょう。インバウンドという言葉に注目するのは、もう3年ぶりとなります。

コロナ禍直前となる2019年の訪日外国人旅行者数は日本政府観光局によると3,188万人に達していました(ちなみに、ビジット・ジャパン事業開始時の2003年は521万人でした)。日本の人口約1億2,000万人と比較すると、その人数のインパクトが想像できます。

そのため、インバウンド消費が株式市場でも大きなテーマとなっていたことは記憶に新しいところでしょう。しかし、コロナ禍の発生により訪日人数は激減を余儀なくされました。2021年の訪日外国人旅行者はビジネス目的のみとなり、その人数はなんと25万人とピーク時の0.8%といった状況です。

インバウンド消費の取込みを積極的に図っていた企業や業界も、この間に大きく方向転換し、既に国内旅行者/消費者の掘り起こしへと軸足を移してきています。インバウンド消費というテーマは、現時点では「既に過去のもの」というのが実態なのかもしれません。

訪日外国人旅行者の増加に伴い、インバウンドは復活の兆しか

しかし、状況には変化の兆しが出てきています。コロナ禍はまだ継続してはいますが、月次で見た訪日外国人旅行者数は直近4ヶ月連続で10万人を超えました。年換算すると170万人超のペースです。ピーク比ではまだ5%というところですが、それでも回復してきていることに間違いありません。

6月以降は当面パッケージツアー限定とはいえ、訪日観光客も受入が再開されました。先の見通しに楽観は禁物ですが、ウィズコロナ対応が整備され定着するにしたがい、再び訪日外国人旅行者数も増加していくのではと期待したいところです。

あれだけ日本への観光がブームになっていたのです。3年のブランクがあっても、日本を訪れたいと感じている方々はきっとたくさんおられるのではないでしょうか。まして、現在は歴史的な円安水準にあります。訪日を考える際の経済的ハードルはかなり下がっているはずです。

しかも、多くの国内企業は既にインバウンド需要に頼った経営をしていません。事業予算にも織り込んでいないでしょう。ここでインバウンドが復活してくれば、国内企業にとっては予想外の追い風となる可能性もあるのです。

インバウンド復活に向けた課題

では早晩旧に復するかと言えば、そう簡単ではありません。コロナ禍前となる2019年の訪日外国人旅行者数の内訳を見ると、中国、韓国、台湾、香港の4ヶ国地域で全体の70%を占めていました。したがってインバウンド消費がかつてのようなブームになるためには、このような国・地域の方々にかつてのような勢いで日本を訪れていただけるかどうか、がカギとなるでしょう。

しかし3年前と比較すると、現地の経済状況や対日感情に大きな変化が生じ、政治的な軋轢なども露わとなってきています。飛行機便数の減少などが利便性にも影響を与える可能性があります。日本への関心に変化はないと思いたいところですが、果たしてどこまでそれが行動を伴うのかは見極めが必要です。

実際に訪日観光客の受入再開はあったものの、個人旅行はまだ非解禁でもあり、これまでのところは目立った増加がないのが現状です。株式市場でテーマ化されるためには、まだもう少し時間が必要でしょう。

変容するインバウンド消費に投資妙味あり

むしろ、今度は違った形のインバウンドとなる可能性があります。インバウンドと言えばどうしても「爆買い」を想定してしまいますが、そういったタイプの訪日ニーズはかなり沈静化するのではないでしょうか。

そもそも商品をそれほど潤沢に確保できる店舗はサプライチェーンの問題から限定されるうえ、コロナ禍を経て日本でしか買えないモノはもはや少なくなったと考えるためです。

今後は、そういった「モノ」への興味よりも、日本での生活や文化といった「体験」に重心が移ってくるのではと想像します。コロナ禍前の段階でも訪日リピーターは既に「コト消費」志向を高めていました。今後はそういった流れがより鮮明となり、それに併せて訪日旅行者向けのイベント企画や通信サービス、アプリ提供などへの注目度が高まってくるのではないかと予想します。

もちろん、お土産を含めたショッピング需要は盛り上がるでしょうが、かつて「爆買い」対象となった家電や化粧品・消耗品などよりも、より付加価値の高い製品を厳選する傾向が高まると考えています。

こういった一点豪華主義・コト消費重視というスタンスは、そもそも世界的な観光都市/地域を訪れる旅行者に共通したものです。これからのインバウド消費は、これまでの「爆買い」という現象が特殊だったということを確認する流れになるのでは、と考えています。