<< <<特別インタビュー【2】米国株、長期的に注目されるセクター、ポートフォリオ管理の考え方

アクティブ運用とパッシブ運用の考え方

岡元:アクティブ運用のファンドに投資されている理由を教えてください。

レヒト氏:私たちがアクティブ運用の力を強く信じている理由は、いくつかあります。

1つ目は、パッシブファンドやインデックスファンドに投資する人の中には、これらがよりリスクの低い投資であるという考えを持っている人が多いように思います。例えば、S&P500に連動するインデックスファンドに投資して500社の銘柄に分散する方が、私たちのファンドのように35社または40社の企業を保有しているよりリスクが低いと思うでしょう。しかし、実際にインデックスファンドの構成銘柄を見てみると、特定の銘柄への集中度がかつてないほど高まっているのです。S&P500の5大企業は、対インデックスの比重で今や指数の20%を超え、10年前の約2倍の規模になっています。つまり、インデックスファンドを保有している場合、大企業により集中的に投資していることになります。

次の質問は、このような大企業を所有したいかということです。私は、その答えは「ノー」であることが多いと思います。過去10年間を振り返ってみると、2012年のS&P500の5大企業には、ゼネラル・エレクトリック(GE)とアイビーエム(IBM)の2社が入っていました。10年間でGEとIBMはインデックスを下回るだけでなく、絶対値でかなり下がっています。

インデックスファンドを買うと、大企業に投資することになりますが、私は必ずしもそれが魅力的な選択ではないと思います。アクティブ・マネージャーなら、企業のファンダメンタルズをフォローすることができるので。先日読んだ記事によると、年初来のマーケットの下げと、成長銘柄の相関関係がここ数年で最も高くなったそうです。つまり、より高成長で、チャレンジングな企業も、ユニットエコノミクスが優れた企業も売られ、企業価値に関係なく売られたようなものです。

前回このようなことが起きた2000年と2002年を振り返ってみると、アマゾンは底値から現在までに400倍も上昇しています。当時もアマゾンは素晴らしい会社でしたが、一気に売られていたのです。

私はアクティブ・マネージャーとして、日々、価格決定力を持ち、SaaSでユニットエコノミクスに優れた魅力的な企業はどこか考えています。それが次のアマゾンのような企業になる可能性があります。そんな企業について考えてみると 今日60%下がった企業が 3年以上経てば以前の高値に戻る可能性もあるのです。

インデックスファンドに投資している場合、潜在的な優良企業が売られると、これらの企業の比重が小さくなるにつれて構成銘柄から外されます。一方、アクティブ・マネージャーは、こうした機会を特定し、企業が下げる過程で買い入れ、持続的に保有することができます。ですから、私たちはアクティブ運用に注力しています。

個人投資家が成功するための3つのアドバイス

岡元:最後に、日本の個人投資家にアドバイスをお願いします。この非常に厳しい環境の中で、成功する投資家になるにはどうしたらよいのでしょうか。

レヒト氏:私はジャナス・ヘンダーソンに入社して以来、優れた投資家になるために必要ないくつかの特徴を学びました。

1つ目は、「回復力」です。人間は誰しも間違いを犯します。間違いを犯したときに大切なのは、その間違いから学び、今後どうすれば改善できるかを理解することです。落ち込むのではなく、回復力を持ち、立ち上がることです。そして、この「回復力」という考え方に関連するものがあります。それは、「孤独に耐える能力」です。

なぜなら、偉大な投資家を作るのは、他者とは違う見方を持つことだからです。もし投資が簡単で、みんなが同じアイデアを持っていて、大金を稼げるなら、もっとたくさんの人が成功していたでしょう。本当の素晴らしいアイデアは、あなたを孤島にいるような気分にさせるでしょう。みんなから馬鹿にされ、一時は本当に馬鹿にされたような気分になります。しかし、「回復力」と「孤独に耐える能力」が投資において大事なのです。

2つ目の特徴は、「想像力があること」です。これは、私たちが優れた企業を見分ける方法と同じです。私が最も後悔していること、失敗したと感じることは、投資した企業の仮説が間違っていたことではありません。ある企業が現在どのような姿をしていて、10年後にはどうなっているのか、どうすればもっと成長して、より多くのキャッシュフローを生み出すことができるのか、といった想像力がなかったことが原因だと考えています。つまり、世界がどのように見えるかという想像力を持ち、その想像力をもとに投資への信念と回復力を持たなければなりません。

そして、最後に、これはバカバカしいと思われるかもしれませんが、少し偏執的(パラノイア)になることです。なぜなら、市場は常に進化しており、常に新しい競争相手が現れ、自分や企業を混乱させます。

私は常にどこかで間違えていないかを考えています。もっと違うことができないか、他にどのようなリサーチができるかを考え、常に自分に満足することなく挑戦し続けることで、他の人よりも早く角を曲がることができるようになります。

回復力、想像力、そして健全な程度のパラノイアがあれば、投資家として成功できると思います。

岡元:レヒトさん本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

レヒト氏:こちらこそありがとうございました。

本インタビューは2022年6月23日に実施しました。