前編では相続した土地の名義変更の手続きである相続登記の流れについて説明しました。土地の名義変更の手続きを行うには、準備しなくてはならない書類があります。また、手続きには費用が発生します。今回はこちらの手続きに必要となる書類と費用について詳しく説明していきます。 

相続登記における必要書類

相続した土地の名義変更(相続登記)には、様々な書類が必要です。ここでは、遺産分割協議で土地の取得者を決める場合の一般的な必要書類について説明します。必要書類は状況によって異なる場合がありますので、登記申請の前に法務局の登記相談などで確認をすると安心です。

登記申請書

登記申請書は、土地の名義変更(相続登記)のメインとなる書類です。原則としてこの申請書の記載どおりに登記されますので、間違いのないよう慎重に作成する必要があります。登記申請書は、預貯金などの相続手続き書類などとは異なり、穴埋め形式で作成するものではありません。自分で一から作成する必要があります。

基本的なケースであれば法務局のホームページに記載例が載っていますので、それを参考にして作成すると良いでしょう。ある程度作成できたら、申請の前に法務局の登記相談を予約して確認してもらうと良いでしょう。

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果をまとめた書類です。誰がどの土地を取得することになったのかが分かるよう、明確に記載します。記載があいまいな場合には、登記ができない可能性がありますので注意が必要です。

土地は、全部事項証明書(登記簿謄本)を参考に、次の事項を記載して特定することが一般的です。
・所在
・地番
・地目
・地積

また、相続人全員が協議内容に納得していることの証拠として、相続人全員が実印で捺印します。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として、相続人全員の印鑑証明書を添付します。印鑑証明書は住所地の市区町村役場で取得できる他、マイナンバーカードを持っていればコンビニなどで取得できる市区町村も少なくありません。取得にかかる手数料は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度が一般的です。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

被相続人の相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本を添付します。これらはそれぞれ、被相続人がその時点で本籍を置いていた市区町村役場で取得できます。手数料は全国一律で、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本と原戸籍謄本は1通750円です。

なお、相続人が兄弟姉妹や甥姪などである場合には、これらに加えて被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要です。請求先の役所が遠方などの理由で窓口へ出向くことが難しい場合には、郵送で取り寄せることも可能です。その場合には、次のものを送付して請求します。

・戸籍等の請求用紙:市区町村のホームページからダウンロードして必要事項を明記します
・定額小為替:戸籍謄本などの代金を支払うために必要となる金券です。最寄りの郵便窓口で購入できます
・本人確認書類:請求者の運転免許証などのコピーを同封します
・返信用封筒:返送先を明記し必要分の切手を貼付します

なお、場合によっては請求の対象者と請求者との関係性を示す戸籍謄本などのコピーの添付を求められる場合もあります。

被相続人の除票

登記名義人と被相続人との同一性を示すため、被相続人の除票が必要です。除票は、被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得できます。費用は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度です。

相続人全員の戸籍謄本

相続人の生存を確認するため、相続人全員の戸籍謄本が必要です。それぞれ本籍地のある市区町村役場で取得します。マイナンバーカードを持っていればコンビニなどで取得できる市区町村が増えています。手数料は、全国一律で1通450円です。

土地の名義を相続する人の住民票

新たな所有者の情報を正しく登記するため、土地の名義を取得する人の住民票が必要です。住民票は、住所地の市区町村役場で取得できます。マイナンバーカードがあればコンビニで取得できる市区町村が増えています。取得にかかる手数料は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度が一般的です。

固定資産税評価証明書または固定資産税通知書

登記申請をする際には、登録免許税という税金を支払わなければなりません。この登録免許税の額を正しく計算するためには、名義変更する土地の固定資産税評価証明書が必要です。

固定資産税評価証明書は、土地の所在地の市区町村の窓口で取得します。窓口の名称は「税務課」や「固定資産課」など、市区町村によって様々です。

取得手数料は1通300円程度であることが多いですが、無料で取得できる「固定資産税通知書」を発行している市区町村もあります。あらかじめ請求先の市区町村へ確認すると良いでしょう。

相続登記にかかる費用はいくら?

相続した土地の名義変更(相続登記)をするには、「登録免許税」と「必要書類の取得費用」がかかります。この2つは、自分で相続登記手続きをした場合でも、司法書士に手続きを依頼した場合と同様にかかる費用です。

司法書士へ相続登記手続きを依頼した場合には、これらに加えて専門家報酬が別途かかります。では、それぞれの金額について詳しく解説しましょう。

司法書士報酬

土地の相続登記手続きを依頼した場合の司法書士報酬は、おおむね6万円から10万円程度です。ただし、司法書士報酬は法律などで定められているわけではなく、それぞれの事務所が個別で定めているため、必ずしもこの範囲内であるとは限りません。

また、報酬の計算方法も事務所ごとに異なっています。例えば、相続登記をする土地の数が多かったり相続人の数が多かったりした場合などに、報酬が加算されることが多いでしょう。事務所によっては、遺産分割協議書の作成や必要書類の収集から依頼した場合に報酬が加算される場合もあります。司法書士報酬を正確に知るためには、相続登記の依頼を検討している事務所に個別で見積もりを依頼すると良いでしょう。

登録免許税

登録免許税とは、相続登記を申請する際に法務局で納める税金です。相続に伴う土地の名義変更にかかる登録免許税は、原則として次のように計算されます。

・登録免許税額(相続)=土地の固定資産税評価額×4/1,000

例えば、相続登記をする土地の固定資産税評価額が2000万円である場合の登録免許税は8万円、固定資産税評価額が4000万円である場合の登録免許税は16万円となります。

土地の固定資産税評価額が高額であれば登録免許税も高額となりますので、どの程度の登録免許税がかかるのか、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。

なお、相続人ではない人が遺言で土地を受け取ったこと(「遺贈」といいます)に伴い土地の名義変更手続きをする場合の登録免許税は次の通りです。

・登録免許税額(遺贈)=土地の固定資産税評価額×20/1,000

例えば、土地の固定資産税評価額が2000万円である場合の登録免許税は40万円、固定資産税評価額が4000万円である場合の登録免許税は80万円にもなります。遺贈の場合には、通常の相続よりもさらに高額な登録免許税がかかるため注意しましょう。

必要書類の取得費用

先述の通り、相続登記をするためには、様々な書類が必要となります。必要書類の取得にかかる費用は、相続人が子などの場合でおおむね1万円程度となることが一般的です。

また、相続人が兄弟姉妹や甥姪である場合には必要書類が多くなる傾向にあるため、2万円~3万円程度となる場合が多いでしょう。ただし、被相続人が転籍を繰り返している場合や相続人の数が多い場合などには、これ以上の費用がかかる場合もあります。

監修:司法書士 呉村成信