土地の名義人に相続が起きると、その土地の名義変更をしなければなりません。この手続きを、「相続登記」といいます。

では、土地の名義変更(相続登記)は、どのような手順で進めていけば良いのでしょうか。今回は、相続登記の流れなどについて詳しく解説します。

相続した土地の名義変更の手続き

相続における土地の名義変更とは、故人名義の土地を相続人などの名義へと変える手続きです。この手続きを「相続登記」といい、法務局で手続きを行います。

故人名義のままでは土地を売却したり、お金を借りる際の担保として抵当権の設定をしたりすることができません。そのため、名義人が亡くなったら他の手続きの前提として、まずは相続登記をする必要があるのです。

土地の名義変更(相続登記)までの流れ

土地の名義人が亡くなったからといって、いきなり法務局へ出向いても手続きすることはできません。土地の名義変更(相続登記)をするには、次の手順を踏む必要があります。

(1)土地の名義を相続する人を決める
(2)必要書類を準備する
(3)土地の名義変更(相続登記)をする

土地の名義を相続する人を決める

土地の名義変更(相続登記)を行う前提として、まずはその土地を相続する人を決めなければなりません。土地を相続する人を決めるには、主に次の2つの方法があります。

(1)遺言
亡くなった人(「被相続人」といいます)が生前に遺言書を遺しており、その遺言書で土地の取得者が定められていれば、原則として遺言書に記載されていた人が土地を取得します。この場合には、以下の遺産分割協議を行ったり、遺産分割協議書を作成したりする必要もありません。

(2)遺産分割協議
特に遺言書が遺されていなかった場合などは、遺産分割協議を行い、土地の取得者を決定します。遺産分割協議とは、相続人同士で遺産分けについて話し合うことです。相続人全員が同意するのであれば、遺産をどのように分けても構いません。

ただし、遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があります。たとえ相続人の中に認知症の方や行方不明の方などがいても、これらの方々を無視して協議を成立させることはできません。この場合には、遺産分割協議に先立って、成年後見人や不在者財産管理人など代理で遺産分割協議に参加する人を家庭裁判所で選んでもらう必要があります。

また、遺産分割協議は多数決などではなく、全員が合意しなければ有効に成立させることはできません。仮に当人同士で協議がまとめられない場合には、調停へと移行することになります。調停とは、調停委員立ち会いのもと、家庭裁判所で行う話し合いのことです。調停でも話し合いが成立しない場合、最終的に裁判所が決断を下す審判手続きへと移行します。

必要書類を準備する

土地を取得する方が無事に決まったら、土地の名義変更(相続登記)を行うために必要な書類を準備します。必要書類については、後編で詳しく解説します。

土地の名義変更(相続登記)を申請する

必要書類の準備ができたら、相続登記を申請します。土地の名義変更である相続登記の申請先は、その土地の所在地を管轄する法務局です。どこの法務局へ申請しても良いわけではありませんので、事前に管轄区域を確認しておきましょう。

登記申請には、次の3つの方法があります。
・窓口で申請する
・郵送で申請する
・オンラインで申請する

登記に不慣れな方には、窓口での申請をおすすめします。なぜなら、申請時に不備が見つかった場合、軽微な不備であればその場で修正できるからです。このうち、数回程度の登記申請であれば、オンラインでの申請はおすすめできません。オンラインで申請するにはパソコンの設定など様々な準備が必要となり、手間が余分にかかってしまうためです。

土地の名義変更(相続登記)に期限はあるのか

相続手続きの中には、期限のあるものが数多く存在します。例えば、必要に応じて3ヶ月以内に行うべき相続放棄や、10ヶ月以内に行うべき相続税申告などです。では、土地の名義変更(相続登記)に期限はあるのでしょうか。

手続きは早く済ませた方が良い

現時点(※)では、土地の名義変更(相続登記)には期限はありません。しかし、期限がないからといって放置することなく、できるだけすみやかに済ませておくべきでしょう。
※2024年度以降については、文末をご確認ください。

その主な理由は、次のとおりです。

相続登記を早く済ませた方が良い理由
・故人名義のままでは売却や抵当権設定などができない
・権利が守られない可能性がある
・長期間放置すればするほど手続きが煩雑になる

故人名義のままでは売却や抵当権設定などができない

土地が故人の名義のままでは、その土地を売ることやお金を借りる際の担保である抵当権の設定をすることなどができません。たとえ今すぐ売却などの予定がなかったとしても、後に売却する際には、まず相続登記をする必要が生じます。売却時に相続登記が未了では、相続登記に時間がかかり、売却の機会を逸すことも考えられます。

権利が守られない可能性がある

せっかく相続などで名義を取得することが決まっても、名義変更しないままでは、いざというときに権利が守られない危険性があります。

例えば、遺言書で長男が土地を相続することになっていたにも関わらず、名義変更を放置していると、その間に次男にお金を貸している債権者が次男の法定相続分だけを差し押さえて競売にかけてしまう可能性もあります。このような事態が生じれば、競売されてしまった部分を長男が取り返すことは困難です。土地の相続手続きを放置すると、このようなトラブルの原因となる場合があります。

長期間放置すればするほど手続きが煩雑になる

土地の相続登記は、相続が起きてから手続きするまでの期間が長ければ長いほど煩雑になる傾向にあります。なぜなら、手続きを放置する間に相続人の状況が変わってしまう可能性が高まるためです。

例えば、放置している間に相続人が認知症になってしまうと、成年後見人を選任するなどしなければ原則として手続きを進めることができません。また、相続人の中に亡くなる人が生じる可能性もあります。代替わりが起きて相続人が増えれば、その分、相続をまとめることが難しくなるでしょう。

2024年度以降、相続登記の期限は3年以内に

2024年度以降は、相続登記に期限が設けられることが決まっています。これは、相続登記が行われないまま放置され、もはや所有者が誰なのかわからない「所有者不明土地」の増加が社会問題になったことで、不動産登記法などの法律が改正されたためです。

改正法が施行される2024年度以後は、土地の取得を知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。正当な理由なく期限を過ぎた場合には10万円以下の過料の対象となりますので、今後は期限にも注意をして手続きを進めた方が良いでしょう。

>> >>【後編】相続した土地の名義変更「相続登記」の必要書類と費用

監修:司法書士 呉村成信