先週の日経平均は週前半の2日間合計で500円超上昇し、当欄の予想通り終値で2万7000円を回復した。そこまでは良かった。しかし、週半ばからは3日続落、合計1,100円超の下落となって週末には2万6000円も割り込むなど急速に地合いが悪化した。
その背景は、表面的には景気悪化懸念を反映したように見えるが、実際には需給要因のほうが大きいだろう。前半の上昇は配当金再投資や年金のリバランスなどがプラスに効いたものと思われる。しかし後半は四半期末を控えたポジション調整がマイナスに作用した。もっとも影響が大きかったと思われるのが、上場投資信託(ETF)の分配金捻出に対する先回り売りだろう。この時期、毎年恒例の「リスク」として、ETF分配金捻出の売りというものがある。今年は8日に株価指数に連動するパッシブ型ETFの配当金支払いが集中している。分配金を捻出する換金売りで現物株・先物併せて約1兆円の売りが出ると見込まれる。こうしたことが分かっているため、通常は先回りして売りが出る。3月期末配当の払い込みが行われる6月末の配当再投資を見込んで先回り買いすることの反対の動きだ。日経平均2万7000円回復は絶好の売り場と捉えられたのだろう。
従って前述のETF分配金捻出売りの需給面での悪材料は、おそらく消化済みだろう。しかし、週初の米独立記念日の休日に始まり週末8日の米国の雇用統計を控えて今週は売買を手控える投資家も多い。投資家不在のところに売りが出ればそれなりにネガティブな影響があるだろう。
市場の懸念はインフレから景気後退に変わってきている。相次ぐ米国経済指標の悪化を受け、アトランタ連銀の「GDPナウ」は、4~6月期のGDP予想が前期比年率2.1%減となった。予想通りなら、1~3月期の1.6%減に続いて「2四半期連続のマイナス成長」だ。
先週金曜日は日銀短観も重石だった。そんな地合いが弱気に傾いているところに、さらに追い打ちをかけそうなのが、KDDIの全国規模の通信障害である。障害発生から30時間以上たった本稿執筆現在(3日午前9時時点)で復旧していない異例の事態となっている。KDDI1社の問題ではなく、日本のIoT全般への不信につながりかねない。週明けの株式市場に悪影響を与えるのは間違いないが、そのインパクトは測り知れない。
決算は引き続き3~5月期決算発表が続く。4日にはネクステージ(3186)、クスリのアオキ(3549)、5日にはウエルシア(3141)、6日にはイオン(8267)、7日にはキユーピー(2809)、セブン&アイ(3382)、SHIFT(3697)、8日にはアダストリア(2685)、安川電機(6506)、良品計画(7453)などが発表予定。結果を市場が反映するのは来週だが注目は製造業の安川電機だ。
ただ、市場は目下、悪い部分にしか目を向けていない。実質的に米国株の下げを主導してきたのは長期金利の上昇だが、いまや長期金利は低下に転じている。どこかで金利低下を好感する局面が来ると思う。