主なポイント

・フロンティア・グループ・ホールディングス(ULCC)とジェットブルー・エアウェイズはスピリット航空買収合戦を繰り広げている
・先週末、フロンティアは1株当たりの買収提案額を2ドル引き上げ、スピリットの経営陣を同社との合併支持に傾かせた
・ジェットブルー・エアウェイズも6月27日(月)に提案額を再度引き上げたが、おそらく撤退がベター

フロンティアの提案額引き上げにより、スピリットの経営陣はジェットブルーの提案を再び拒絶

ここ数週間、ジェットブルー・エアウェイズの経営陣はスピリット航空買収の可能性について、自信を強めていました。先週はスピリットが開示した財務情報を精査した上で、1株当たりの買収提案額を33.50ドルに引き上げました。

ところが、この航空会社買収合戦の形勢は、その後またしても変わりました。もともと買収のパートナーだったフロンティア・グループが、先週6月24(金)に提案を引き上げたのです。その結果、スピリットの経営陣はジェットブルーの提案を再び拒絶し、フロンティアとの合併について、今週中に株主の承認を取りつけたいと考えるに至っています。

提案は徐々に、しかし着実に改善

ジェットブルーが5月初旬にスピリット買収案を発表した際、フロンティアは争うことを拒み、当局に合併を認められない可能性が非常に高いジェットブルーの提案は、絵に描いた餅にすぎないと主張しました。

これに対し、ジェットブルーは独自の分析により、スピリット買収案が独占禁止法に抵触するものではないことを示す形で反論しました。それと同時に、高額のリバース・ターミネーション・フィー(買収不履行による違約金)を提示し、スピリットの株主に対して当局の承認を得られなかった場合の補償を与えました。

6月初旬、フロンティアもついにジェットブルーを上回る2億5,000万ドルの違約金を買収案に加えることに同意しました。ジェットブルーはすぐさま応戦し、違約金の提案額を2億ドルから3億5,000万ドルに引き上げます。さらに、その半分近くを前払いし、スピリットが近々1株当たり1.50ドルの特別配当を支払えるようにすることにも同意しました。前払いがなければ、スピリットの株主は当局の判断が出るまで2年近く待たされることになります。

ジェットブルーが提案を改善したことで、スピリットの経営陣はフロンティアとの合併計画を考え直すことになりました。その結果、フロンティアは提案の再引き上げを余儀なくされたのです。

再びフロンティア支持へ

先週6月24(金)、フロンティアはスピリットの買収提案額を1株当たり2ドル引き上げるとともに、現金支払い部分を2.13ドルから4.13ドルに拡大しました(それでもなお、買収額の大部分は株式で支払われることになります)。さらに、超格安航空のフロンティアは違約金もジェットブルーと同じ3億5,000万ドルにするとともに、前払い分をスピリット株1株当たり2.22ドルに積み増し、配当として株主に支払えるようにしました。

こうした変更により、フロンティアは議決権行使助言会社(大口投資家に対して株主総会での議決権行使方法を助言)のISSから支持を取りつけ、議決権行使助言大手2社がいずれもジェットブルーの対抗案よりフロンティアの提案を推す形になりました。やはり、スピリットの経営陣もフロンティアとの合併を改めて支持しています。

スピリットの株主にフロンティア案の是非を問う投票が今週6月30日(木)にあることを踏まえ、ジェットブルーは6月27日(月)に最終提案を行いました。第1に、違約金を4億ドルに引き上げました。第2に、前払い額もスピリット株1株につき1.50ドルから2.50ドルに上乗せしました。そして第3に、当局が審査を行っている間、スピリットの株主に対して2023年1月から毎月1株当たり0.10ドルを合計1.80ドルまで支払うことに同意しました。最初の1.15ドルまでは違約金から差し引かれますが、残りがあれば、前回の提案からの追加支払いとなります。

これらの変更によっても、スピリットの経営陣が考えを変えることはなさそうです。ジェットブルーとしては、最新の提案によって、スピリットの株主がフロンティアとの合併案を否決し、ジェットブルーとの合併に向けて経営陣に圧力をかけることを期待するしかないでしょう。

全当事者にとってベストか

フロンティアによる提案引き上げは、スピリットの株主にとって非常に嬉しいニュースでした。支払い額に占める現金部分の拡大と違約金の上乗せにより、合併が成立せず、あるいは合併後に不振に陥ってフロンティアの株価が押し下げられた場合の補償も手厚くなりました。

フロンティアに提案を引き上げさせることで、スピリットはジェットブルーに対抗することを促し、株主に別の合理的選択肢を与えました。(ただし、フロンティアとの合併のほうが、ジェットブルーとの合併よりも当局の承認をはるかに得やすいという見方に変わりはありません。)

皮肉なことに、フロンティアの買収案改善は、ジェットブルーの株主にとっても朗報だったと言えるかもしれません。というのも、スピリット買収案はジェットブルーにとって身の丈に合っていないように思えるからです。さらに、スピリットと合意したところで、その後当局の承認を得られなければ、何も得られないまま4億ドルを(違約金として)没収されることになります。

つまり、ジェットブルーの株主は、スピリットがフロンティアとの合併を決めることを願ったほうがよさそうです。ジェットブルーも、大型合併に膨大な時間とお金を取られるより、豊富にある魅力的な成長機会を追求したほうがいいでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。
元記事の著者Adam Levine-Weinbergはジェットブルー・エアウェイズとスピリット・エアラインズの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はジェットブルー・エアウェイズを推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。