スイス国立銀行の大幅利上げによる予想外の展開

先週は、兎にも角にも前々週6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)のサプライズを引きずり続ける週となりました。

6月10日は米連邦公開市場員会(FOMC)前のブラックアウト期間中であったため、米連邦準備制度理事会(FRB)は止む無く米大手メディアを使って事前に「75bpの利上げ観測」を広める策に打って出た模様です。

おかげでFOMCの結果自体にサプライズはなかったうえ、パウエルFRB議長が会見で「75bpの利上げ幅は極めて異例で、この幅が普通になるとは見込んでいない」と述べたこともあって市場が一旦落ち着きを取り戻す場面もありました。

ところが、6月16日の欧州時間入り直後にスイス国立銀行(中央銀行)が予想外の大幅利上げを発表したことで、改めて市場は騒然となりました。結果、スイスフランが急速に買い進まれたうえ、それが「日銀も政策方針を見直すのでは」との思惑を誘ったことで、同時に円買いも一気に加速しました。

同日は、英中央銀行も25bpの利上げ実施を決定しており、まさに「利上げドミノ」といった様相を呈するなかで日銀に対する市場の思惑が一時的にも強まったのは無理のないことだったのかもしれません。

日銀は大規模緩和を継続する方針

しかし、翌6月17日に日銀は「なおも大規模緩和を継続する方針」を改めて打ち出します。そのこと自体にさしてサプライズはなかったはずなのですが、前日に円の買い持ち高が一気に積み増されていたこともあり、それが一気に解消される動きとも相俟って円は再び一気に売り戻される展開となりました。

つまり、米ドル/円はFOMCの結果が明らかになる前から週末にかけて画に描いたような「往って来い」の展開となり、結局は日米金融政策の方向性の違いを改めて思い知らされる格好となったわけです。

ただ、2021年9月下旬からの米ドル/円の上げが5波構成になっていることを前提とした場合、先週6月15日高値=135.60円が「第5波」の終点になったと見ることもできるものと思われます。

仮にそうであれば、米ドル/円は目先的にもしばし調整局面入りとなってもおかしくはありません。もちろん、第5波には「延長(エクステンション)」が生じる可能性もあるわけですが、一応は一時調整の可能性も念頭に置いておきたいところです。

ともあれ、波乱の「中銀ウィーク」を通過して、今週は少し落ち着いた展開が見られる週になるものと想定されます。6月22日にパウエルFRB議長が議会証言に臨みますが、FOMCを通過したばかりで特段の材料が噴出する可能性は低いと見られます。

また6月24日には日本の消費者物価指数(5月・CPI)の発表が控えますが、その伸びが4月から大きく加速すると見る向きは少ないようです。

今週の米ドル/円は高値もみ合いとなるか

今週は、先週末6月17日に急落したNY原油先物価格の動向が1つには気になります。結果として米10年債利回りの上昇が抑えられたことから、米国株市場ではナスダック総合指数が反発しています。

また、先週末にかけては中国本土市場の株価が強含みで推移しました。そうした動きを受けて、先週大きく下げた米・日株価が一定の戻りを試すこととなれば、市場のリスク回避ムードもある程度は後退するものと期待されます。

そうなれば円買いと同時に米ドル買いの動きも一服し、米ドル/円は134円台半ばから135円台半ばのレンジ内で「高値もみ合い」の色合いを濃くするのではないかと思われます。

一方、依然として下値リスクに対する警戒が強いユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルももみ合いの展開になることが想定されます。ユーロ/米ドルについては、なおも一目均衡表の日足「雲」下限の水準(=1.0570ドル処)が上値抵抗として意識されやすく、当面は1.0500ドル処を軸とした1.0400-1.0600ドル処のレンジ内で推移する可能性が高いと見ます。