先週のダウ平均は週間で1,504ドル安と大荒れの1週間となった。日経平均は週間で1,861円下落し、5月12日以来、およそ1ヶ月ぶりに2万6000円を下回る安値に沈んだ。欧米株安に連動したものだが、その背景には米連邦準備理事会(FRB)の27年ぶりとなる0.75%という大幅利上げに続き、英イングランド銀行が利上げを発表、スイス国立銀行も市場予想に反して約15年ぶりの利上げに踏み切るなど、「利上げドミノ」ともいうべき状況があった。それが、市場が一気にリスクオフに傾いた理由である。
しかし、年初来の下落率を見ると、S&P500は弱気相場入りとされる20%を超えているのに対して、TOPIXはまだ7.8%にとどまっている(6月17日時点)。かつては米国株に比べ弱さが目立っていた日本株だが、最近は反対に日本株の下げ渋りが顕著である。その理由は6月10日付けのレポートに記した通りである。中でも、日本はインフレを前向きに捉えられる世界で唯一の国であるという点が大きいと考えられる。
今週は金融政策イベントが一巡し、主な経済指標の発表も少ない。唯一の注目材料と言えるのがFRBのパウエル議長の議会証言だ。パウエル議長は22日に上院で、23日には下院でそれぞれ半年に一度の議会証言を予定している。
市場では「米国のインフレは容易に抑えられず、景気を犠牲にしつつ利上げが長期化する可能性が高い」との指摘がある。急速な金融引き締めに伴う景気後退への懸念が改めて強まり、先週は東京市場でも自動車株や鉄鋼株といった景気敏感株を中心に売りが出た。しかし、市場はインフレと景気後退という、通常であれば背反する事象を同時に恐れているところがあり、そこに矛盾がある。景気がスローダウンすればそれ自体がインフレ抑制に働く。冷静なのはやはり金利のマーケットだ。米国の長期金利は再度3.5%目前まで急上昇する場面があったが、3.4%台をピークに低下傾向に転じている。今の局面では長期金利の動きがすべてのカギを握る。引き続き注視したい。