モトリーフール米国本社、2022年5月22日 投稿記事より
主なポイント
・株式市場の調整相場が1年以上続くことはほとんどなく、弱気相場が2年以上続くこともめったにない。
・現在の株価下落は、622日間続いた1980年代初頭の弱気相場と最も似ている。
・下落局面はそれぞれ異なるものの、過去の事例から学ぶことのできる重要な教訓がある。
将来を楽観できる理由は過去にある
子どもと一緒にドライブに行ったことがある人なら、一度は聞かれたことがあるはずです。「まだ着かないの?」と。目的地までどれくらいかかるのか、大人だって知りたいものです。
この気持ちは、下落が続いている現在の株式市場にも当てはまります。多くの投資家は、株価が遅かれ早かれ反発すると知っていますが、その反発がどれくらい先に起こるのかを知りたいのです。
足元の弱気相場はいつまで続くのでしょうか。残念ながら、明確な答えはありません。しかし、過去の株価下落を振り返ることで、何らかの手がかりを得ることができるかもしれません。
過去の株価下落
S&P500指数が大幅に下落することは珍しいことではありません。程度の差はありますが、株式市場の下落は繰り返し起こっています。
最も深刻な株価下落は弱気相場と呼ばれ、直近の高値から20%以上下落している期間を指します。弱気相場よりも頻繁に見られるのが調整相場で、直近の高値から10~20%下落した状態を指します。
弱気相場は調整相場よりも長く続く傾向があります。S&P500指数で過去最長の弱気相場は大恐慌の時に発生したもので、2.8年続きました。1950年代以降で最も長く続いた弱気相場はドットコムバブルが崩壊した2000年代初頭に起こり、2.1年続きました。
S&P500指数は5月20日に一時、弱気相場の領域に入りましたが、すぐに調整相場の領域に戻し、すんでのところで踏みとどまりました。ほとんどの調整相場は、本格的な弱気相場に発展することはなく、わずか数週間で終わることもあれば、数ヶ月に及ぶこともあります。いずれにしても、調整相場が1年以上続くことはほとんどありません。
よく似た事例
調整相場で全く同じものはありません。しかし、いくつかの点で似ているケースがあります。
現在のS&P500指数の下落は、主に関連する2つの要因によるものと思われます。新型コロナウイルスに関連するサプライチェーン問題と、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する燃料価格の高騰の影響でインフレが急上昇しています。また、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを抑制しようとしており、金利も上昇しています。
これらは、2000年代初頭の長期の弱気相場をもたらした根本的な問題とは異なります。当時の株価急落と現在の下落相場における最も重要な共通点は、どちらも長く続いた強気相場の後に起こったということでしょう。
現在のS&P500指数の下落に最も近いのは、1980年の後半に始まった弱気相場かもしれません。この時の弱気相場は622日間続き、1982年8月に終わりました。ポール・ボルカー元議長率いる当時のFRBは、高進するインフレに対抗するために容赦なく利上げを行いました。現在のジェローム・パウエルFRB議長も最近、インフレが終息するまで利上げを継続するという、ボルカー氏と似たような姿勢を明らかにしています。
過去の教訓
過去の例から判断すると、S&P500指数が、2023年後半まで続く弱気相場に突入する可能性はあります。しかし、一部のエコノミストは、インフレが年内に緩和すると予想しています。
もしそうなら、FRBは1980年代初頭の弱気相場で見られたほど積極的に金利を引き上げることはないと思われます。その場合、弱気相場は比較的短期間で終わり、年内にも終了する可能性があります。
足元の株価下落がいつまで続くかは別として、歴史から学ぶことのできる、明白な教訓があります。最も重要なことは、いかに急激な下落であっても一時的だということです。保有株をすべて売却するというのは軽率な判断で、その後に必ず訪れる反発を逃すことになりかねません。
過去の例に基づくと、株価の下落局面で最も賢い戦略は、堅実な株式やインデックスファンドを、下落したタイミングで購入することです。それにより、一段と大きな長期リターンを得られる可能性が高まります。
下落相場がいつ終わるのかという質問に対する最良の答えは、ドライブ中に子どもに言うことと同じかもしれません。「まだ着かないけど、近づいているよ」。
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