先週のNYダウ平均は週間では934ドル安となった。8週連続の下落で、世界恐慌のさなかにあった1932年以来90年ぶりの連続下落記録だと日経新聞電子版は報じている。こういうニュースに接すると、「大変だ」「どうなってしまうのだろう」と不安になるのが人の常だが、実際は底入れが近いということだ。
世界恐慌以来90年ぶりというのは、確かに大きなニュースだが、逆に言えば、それだけ異常な事態にまでなったのだから、じゅうぶん下げたということだ。冷静に今の投資環境を考えれば、世界恐慌当時とはほど遠い。
従前から指摘している通り、今般の米国株の下げは金利上昇に対するバリュエーション調整で、それもほぼ適正値に達した。レポートではこう述べた。「米国株の調整は最終局面だと考える。無論、ここまで地合いが悪化するとしばらくは神経質な展開が続くのは仕方ない。だが、値幅の調整は済んでいるので、ここからの下値余地は大きくない。」実際、そんなところだろう。ボラティリティが高くなり、乱高下が続くのも底入れが近い証拠である。
先週の相場展望で注目材料に4月の小売売上高を挙げた。「個人消費が堅調であるのは景気後退懸念の払しょくにつながるのでポジティブだが、同時に長期金利の上昇も招くだろう。小売売上高が予想通り堅調な結果となった場合、株式市場がどのような反応を見せるかで、市場センチメントが最悪期を脱したかどうか判断される」と述べた。予想通り強い小売売上高を好感して株式市場は急伸した。
しかし、これも予想通り、長期金利も大幅に上昇した。金利が上がっても株価が上昇したことから、市場のセンチメントは最悪期を脱したと思われる。では、その翌日に上昇分を吐き出すような急落となったのはなぜか。端的に言って、上げ過ぎたのである。長期金利が3%ならS&P500は4000ポイント以下が適正値だと言った通りである。
今は長期金利が再び低下、S&P500の3,900ポイントは妥当である。景気減速懸念がしきりに言われる中では、長期金利はしばらく上がりにくい。その間に株価は底打ちを確認できるだろう。
今週の注目材料は25日のFOMC議事要旨とエヌビディアの決算、そして27日発表の米4月PCEコア価格指数だ。FOMC議事要旨では新たな材料は出てこないだろう。75bpsの利上げが検討の俎上にないことは明らかで、QTに関しても織り込み済みである。
そうした中、アメリカのバイデン大統領が22日から24日にかけて日本を訪問し、23日、岸田総理大臣との日米首脳会談に臨む。最近の岸田首相は為替や投資に言及することも多く、一時の「反市場的」な姿勢から転向したように見える。バイデン大統領との会談に際して、大きな投資促進の話が出ないとも限らない。夏の参院選に向けて国民にアピールするチャンスなので、気前のよい話がでる公算は高いと思われる。