>> >>米国株投資戦略の考え方、今注目のセクター、売買判断のポイント【前編】

ロシアのウクライナ侵攻開始時、長期ポジションを半分売却

――コロナショックなど相場変動時の対処法を教えてください。

相場が大きく動いた際には、投資金額を減らす、全降りするなどしてリスクを圧縮します。コロナショックの際には(2020年)2月26日にほぼ全降りしました。わずかに残っていたポジションも翌日に売却。その後、4月から6月にかけて徐々に再開しました。

――ロシアのウクライナ侵攻で投資方針や戦略を変更されましたか。

はい。長期投資を目的としてポジションを保有していたものを半分売却しました。半分にしたのは、今後の動向が不透明だからと感じたからです。「米国株は過去に戦争が起きて下落した際にも回復したから、今回も買えばいい」といった論調も見られましたが、私はそのような考えは平和ボケし過ぎているように思います。これまでに10年以上停滞していた時期もあります。そのため、方向感が見えてきたタイミングで「攻め」の投資ができるよう半分売却して様子を見ているところです。

インフレ局面でも資産を増やすために

――インフレへの懸念が広がっていますが、何か対策していますか。

特にインフレ対策はしていません。ただ、常にいかに資産を増やすかを考えていますし、プライシングパワー(価格決定力)のある企業に投資しています。

その他、今考えているのは米国の景気後退のタイミングでドルを円に換えることです。現在、保有している資産がほぼドルですので、これに成功するだけで資産が10%ぐらい増えるのではないかと考えています。

――ドルを円に換えるタイミングの判断基準を教えてください。

経済サイクル上では、順調にいけば、次は金融引き締めの中でも企業業績が好調で株価が上がるという業績相場に入ることになります。ただ今回はそれが短命に終わる可能性があります。これまでの金融緩和のボリュームが大きすぎたことや、インフレ率が高く、それなりのペースで利上げをしないといけないこともあり。よって、米国が不景気になり株価が下がると、通常はドルが売られて、円が買われます。そのタイミングでドルを円に換えたいと考えています。2年ぐらい先になるかもしれませんが。

FIREするなら10億円必要!?

――金融資産3億円達成後もFIREしないのは何故ですか。

臆病だからかもしれませんし、また会社でお世話になった方に必要とされているので、仕事で期待に応えたいという気持ちもあり…。それに、もし自分がFIREするなら、10億円ほど必要だと考えています。

――リタイア後、豪勢な生活をイメージされているのでしょうか。

私は高級品には興味がありません。ただ、最近100億円近い資産を保有している富裕層の方々と知り合う機会があり、話を聞いていると彼らは海外に複数の拠点を持っていて、季節によって移動しているとのことです。それが羨ましいなと思い、そのような生活を実現するには10億ぐらい必要だなと。

とは言え、10億円達成までFIREしないというわけではありません。相場や仕事のタイミングがうまく合えば会社を辞めるかもしれません。その後も、何かしらお金を稼ぐことを継続していくと思いますが。

サテライトでは「ハイテク」「クリーンエネルギー」に注目

――投資資金の配分の考え方を教えてください。

まず自分が持っている金融資産から2-3ヶ月分の生活防衛資金を確保し、その残りを全額投資に充てるのではなく、8割以内で投資すると良いのではないかと考えています。と言うのも、米国株は長期的には上昇していますが、過去に何度も急落がありましたし、マーケットが急変した時に買えるよう2割の余裕を持っておくことが大事だと思っています。

私自身は、投資資金のうち、8割をコア投資、2割をサテライト投資として位置づけています。コア投資では、例えばS&P500やナスダック100などに連動するインデックスへの投資やETFを利用して米国株全体への投資をすることなどや、個別株であればGAFAMへの投資です。サテライト投資では、自分が知っている企業に興味を持って調べることから始めてみましょう。

――PANさんがサテライト投資で保有しているのは、どのような企業ですか。

私自身はサテライトはハイテクとクリーンエネルギー関連銘柄をメインに保有しています。世界を牽引するテクノロジーを持っているハイテク企業の中に、今ビジネスで問題がないのに過剰に売られているように感じる銘柄がありますので、それらに投資しています。

また、ロシアによるウクライナ侵攻によって、化石燃料からクリーンエネルギーへのシフトが加速する必要性が一気に高まったと思いますので、クリーンエネルギー関連銘柄も保有しています。

――投資の情報収集の方法を教えてください。

米国のウォール・ストリート・ジャーナル、CNBC、ブルームバーグの情報を英語で読んでいます。その方が日本語翻訳版より早く読めますし、内容も深いので。

英語に慣れていない方も、ブラウザの翻訳機能を使えばだいたいの意味はわかりますので、日本語に翻訳されている情報ではなく、英語の情報に触れることをお勧めしたいです。動画もAIの文字起こしツールが実用レベルで使えますし。

他人に惑わされず、自分で判断することが大事

――これから投資を始めたいと考えている人へのアドバイスをいただけますか。

最近、株式投資に関する書籍や雑誌などで「バカでも」「寝てても」「勉強しなくても」「考えなくても」といったタイトルを目にしますが、これらの言葉に惑わされてはいけません。厳しいことを言うようですが、投資は経済活動であり、経済を学ばずして投資するのは免許を持たずに自動運転に頼るようなものです。

私が米国株投資を始めた頃は、英語でしか情報が手に入りませんでしたが、今は日本語の情報もたくさんあります。それらを活用して、自分で判断することが大事です。YouTubeやTwitterで誰かが言っていたから…といって判断するのではなく。自分の資産を守れるのは自分だけですので。

投資や経済を勉強して理解できるようになると、すごく面白みが感じられます。ぜひ、皆さんも楽しみながら学んでいただければと思います。

――ありがとうございました。


※本インタビューは2022年3月15日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。