みなさん、こんにちは。ロシアのウクライナ侵攻が苦戦を余儀なくされる中、株式市場は徐々に停戦後を織り込み始めました。一時は高騰した資源価格も、ここにきて調整色を増しています。まだまだ現実の侵攻終結にいたるシナリオは見えておらず予断は許せませんが、この侵攻終結後の世界を見据えた投資スタンスを考える段階になってきたと私は考えています。

DX時代に必要とされるSaaSとは

さて、今回は「SaaS」について採り上げてみましょう。このワードは既に株式市場でかなり一般的になっているもので、このアプローチを切り口に投資をされている方も少なくないのではないでしょうか。今回はそのようなSaaSについて、改めて投資に際しての留意点や期待などをまとめてみたいと思います。

特に直近ではDX化推進の中で注目されるケースも増えてきたように感じます。ボラティリティの激しい相場の地合いにおいては、要注目とも言えるテーマとも位置付けます。このテーマをよくご存知の方も頭を整理する上で参考にしていただければ幸いです。

そもそもSaaSとはSoftware as a Serviceの略称で、インターネット経由で提供されるクラウド型のアプリケーションソフトウェアのことを指します。従来は「売切り型」で提供されていましたが、通信技術・通信速度の飛躍的向上によってクラウド型の提供が可能になったのです。

SaaSの特徴は、利用者負担の決定的な低さにあります。まず、売切り型でないため、初期導入コストを抑制でき、使用するハードウェアも特別なものは必要なく、(インターネットに接続さえできれば)既存のものが活用できます。ソフトウェアのアップデートが極めて簡単というのも重要です。

ソフトウェアは法令規則の変更対応、新機能の追加、バグの修正など、常にバージョンアップが求められるものです。これまで売切り型では利用者自身が対応しなければなりませんでしたが、SaaSではこれらの対応が全てインターネットを通じて随時(半ば自動的に)行われます。

昨今、より重要となったセキュリティに関しても、SaaSベンダーによって万全の対策が講じられています。敢えて特別な使い方を追求しなければ、まさに良いこと尽くめのソフトとも言えるでしょう。そしてそれは、顧客満足度の向上という形でSaaSベンダーにも追い風となる仕組みなのです。

サブスクリプションが主流となるSaaSの収益構造

お金の流れとしては、利用者がSaaSベンダーに対して利用料を支払う形式が主流です。多くは定額の月額使用料などが設定されており、これがいわゆる「サブスクリプション(定期購読料))モデルとなっています。

一般的に、SaaSと言えばサブスクと認識されるのはこのためです。実際には従量課金されるケースやフリーミアム(一部サービスの無料開放)が設定されるケースも少なくありませんが、いずれにしても一度契約が完了すれば解約されない限り、一定の対価がベンダーに安定的に入ってくるという仕組みと言えるでしょう。

これらはどれだけ顧客数を積み上げられるかが重要となってくるため、SaaSベンダーは目先の利益を少々犠牲にしても、(将来的な利益の源泉となる)顧客獲得を最優先する戦略を採る傾向があります。

これは不断の営業によって都度売上を追求する一般的なフロー型ビジネスとは対照的に、顧客数という資産の積み上げによって収益最大化を狙うストック型ビジネスとも呼ばれます。その分、収益は安定することになるため、昨今のように景気動向の見極めが難しい局面においては、SaaS企業の手堅さがクローズアップされやすいと言えるでしょう。

SaaS企業に投資する際のチェックポイント

ただし、良いことばかりではありません。利用者のメリット大としても、それはSaaSベンダーがきちんとセキュリティ対策を講じ、怠りなくアップデートを実施するのが大前提となります。

目先の利益を軽視しすぎたSaaSベンダーが結果として資金繰りに窮してしまえば、提供するサービスの品質低下を引き起こしかねません。サービスの顧客満足度低下は契約の途中解約に繋がり、さらに資金繰りが窮するという悪循環にも陥るリスクがあるのです。

このことは、SaaS企業への株式投資を考える上で非常に重要なチェックポイントになります。投資に際しては、まず契約の解約率がどうなっているかを常に確認しておく必要があるでしょう。

多くのSaaSベンダーは契約解約率(チャーンレート)を開示しています。これらの趨勢をしっかりと確認しておくことが銘柄選択の第1条件と考えます。次いで、第2の条件はストック(=顧客数)の積み上がり速度です。

サービス開始当初はストックの積み上げに苦戦することも多々ありますが、本当に顧客満足度の高いサービスは、臨界点を超えたところで顧客獲得ピッチは急加速を始める傾向があります。これもほとんどのSaaS企業はストックの積み上がり状況を逐次開示していますので、しっかりと確認しておきたいところです。

第3の条件は資金繰りです。フロー収益が赤字であることはさほど懸念材料ではありません。しかし、当該企業がその赤字をどれだけの期間持ち堪えることができるかの財務体質は非常に重要です。売上が損益分岐点を超えるまで耐え得るのかどうか、しっかり目を見張っておきたいところです。