モトリーフール米国本社、2022年3月27日投稿記事より

急成長中のEコマース業界は、経験豊富な長期投資家に複数の選択肢を提供

Eコマースへの移行が本格化しています。新型コロナウイルスのパンデミックがこの流れを加速させたこともありますが、事実として、Eコマースの台頭は必然のことです。

Statistaによれば、世界全体のEコマース売上高は2021年に4.9兆ドルに達し、2025年には7.3兆ドルを上回ると予想されています。2021年のEコマース売上のうち、米国だけで7,680億ドルでした。

従来の考え方ではEコマースとは無関係と思われる企業も次々と参入し、既存事業の強化につながっています。以下に紹介する企業は、長期的に市場をアウトパフォームする可能性があります。

オライリー・オートモーティブ(ORLY)

オンラインショッピングと聞いて、自動車部品などを取り扱うオライリー・オートモーティブが真っ先に思い浮かぶことはないかもしれませんが、同社の成長戦略はオムニチャネルに焦点を当てています。DIYの顧客がWEBサイトを通じて注文できるのはもちろんのこと、今ではプロのサービス業者を対象とした専用のプラットフォームもあります。

新車・中古車市場の価格上昇もオライリー・オートモーティブにとっては追い風です。メーカー希望小売価格に対してディーラーと大幅な値引き交渉をする時代は終わり、新車の価格は驚くほど高騰しています。新車価格の上昇に在庫の縮小も重なり、中古車価格もこの1年間で40%以上上昇しています。そのため、多くのドライバーが車を長く保有するようになり、プロのサービス業者とDIY自動車オーナーの両方からの部品需要が堅調に推移すると予想されます。

業績は既に上向いており、オライリー・オートモーティブの2021年売上高は前年比15%増の133億ドル、希薄化後1株当たり利益(EPS)は同32%上昇の31.10ドルでした。EPSが上昇した背景には自社株買いの影響もあり、同社は2021年だけで総額25億ドル近い自社株買いを実施しています。株価は過去1年間に40%以上上昇し、今後も長期的に好調が見込まれます。

ターゲット(TGT)

ディスカウントストアチェーンのターゲットも、Eコマースの導入で近年注目を集めています。2022年1月期の既存店売上高は前年比12.7%増、オンライン売上高は同20.8%増でした。しかも、オンライン売上については、新型コロナウイルスの影響で前年度に145%増を記録した上での、さらなる成長です。2022年1月期の売上高1,046億ドルのうち、オンライン売上は19%を占め、そのうちの95%のフルフィルメント業務を既存店舗で対応しているため、既存の設備を活用することができます。実際に、2021年は労働環境が厳しかったにもかかわらず、ターゲットの営業利益率は上昇しました。

信頼できる配当は、長期投資家にとって不確実な時代における最高の味方です。ターゲットは、アポロ11号が月面に着陸する2年前の1967年から毎年欠かさず配当を支払っており、連続増配記録も50年に上ります。足元の配当利回りは約1.7%と、特筆すべきほどではありませんが、着実な増配は実質利回りを長期的に押し上げてくれるはずです。

アマゾン(AMZN)

Eコマース銘柄について語る上でアマゾンを挙げないわけにはいきません。しかも同社は先日、1対20という大型の株式分割を発表したばかりです。株式分割調整後の取引は6月6日に開始される見通しです。個人投資家は以前から、株式分割を切望していました。

しかし、最大の影響は、アマゾンがダウ工業株30種平均に採用される可能性が高まったことでしょう。ダウ平均の計算方法上、1株が1,000ドルを超える銘柄が採用されることは実質的にありません。アマゾン株が分割されれば、指数採用の有力候補となり得ます。

株式分割の発表で見落とされていますが、アマゾンは100億ドルの自社株買いも承認されました。これにより発行済株式が大幅に減少することはないでしょうが、これは経営陣が、株価が割安であると感じていることを示唆しており、追加の自社株買いが行われる可能性もあります。

アマゾンのEコマース事業は2021年に、新型コロナウイルスに関連する人件費と物流費の上昇という厳しい逆風に見舞われ、北米部門と海外部門では利益率が低下しました。しかし、クラウドサービスのAWS事業がそれを補い、同事業の2021年売上高は前年比37%増の620億ドル、営業利益率は30%でした。これが、過去最高となった全社売上高4,698億ドルに大きく貢献しました。Eコマース事業の逆風が弱まれば、アマゾンは今後も市場を楽にアウトパフォームするでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾンの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会のメンバーです。元記事の筆者Bradley Guichardはアマゾン、オライリー・オートモーティブ、ターゲットの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン株を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。