みなさん、こんにちは。ロシアの軍事行動には驚かされました。かねてからそのリスクは喧伝されていましたが、実際に戦火が広がったという事実は我々に強烈なインパクトを与えるものでした。株式相場も波乱の展開が続いています。

こういった軍事行動の株式市場への影響については後日ゆっくり解説したいところですが、まずは一分一秒でも早い戦争終結・平和回復を願って止みません。

一方、平常時を想定した「相場のテーマ」は、緊迫した今では少しのんびりした視点、もっと端的に言えば「平和ボケ」「金儲け優先」と見えるかもしれません。しかし、混乱の次にくる事象に対して常に備えておくこともまた極めて重要です。そういった観点から、今回のテーマをご覧になっていただければ幸いです。

米金利が急上昇する背景とは

そこで、今回は「米国金利」をテーマに採り上げてみたいと思います。2021年末頃から米国ではインフレ懸念が台頭し、それに伴って金利は上昇傾向(=債券価格は下落傾向)を辿っています。

例えば、米国10年債の金利は2021年クリスマス前が1.4%以下であったのに対し、直近は2%を超えるようになってきました。あまり大きな変化ではないように見えるかもしれませんが、これは債券の世界ではかなり急激な動きなのです。

この金利急上昇の背景にあるのが、景気の加熱と物価上昇です。米国経済はコロナ禍の緊急モードから通常モードへとシフトが進み、そこにそれまで大量に供給された資金のダブつきが後押しとなった格好です。

さらに、地球環境問題の余波からエネルギー価格の上昇も追い打ちとなり、米国の消費者物価指数(CPI)は2021年10月より前年比6%超といったハイペースでの上昇となっています。1月のCPIは実に40年ぶりの上昇幅となり、金融市場にサプライズを与えました。

インフレの足音は確実に聞こえてきており、それらへの警戒感から市場金利が上昇してきているのです。

米金利上昇が世界景気に及ぼす影響とは

私は2021年12月に「2022年注目すべきテーマ」というコラムでインフレの進行、スタグフレーションの発生をリスクシナリオとして採り上げました。スタグフレーションに至るかどうかは議論の余地がありますが、金利上昇基調は当面継続するように感じています。
 
一般的に、金利上昇は株価の下げ要因とされています。難しく考えれば、企業が将来に得るであろう利益やキャッシュフローの現在価値(現在の株価と言って良いでしょう)を考えた場合、金利の上昇は割引率を引上げ、現在価値の低下に繋がるためです。

感覚的には、金利上昇が景気を冷やし、それに伴って企業業績の低迷するリスクが高まる、と考える方がしっくりくるかもしれません。

実際には、金利上昇局面でも(つまり実体経済がそれだけ強いということ)株価が上昇したケースは少なくありませんが、景気は必ず循環する以上、少なくとも金利上昇が株価の重石になるということを意識しておくことは重要でしょう。

特に、成長への期待が大きい新興市場などでは、金利上昇による成長速度の減速が懸念される可能性があるのです。

当然、世界最大の経済大国である米国の金利上昇は、世界景気にも影響を与えます。上記の新興企業と全く同じ理屈で新興国の経済を冷やしかねない他、通貨面では米ドル高要因が発生することになります。

財務基盤の脆弱な新興国では大幅な自国通貨安が誘発される可能性も出てくるでしょう。自国通貨防衛のための自国金利引き上げは自国景気を減速させかねないため、当局は極めて難しい舵取りを迫られることになります。米国金利を世界中が注視するのはこういった背景があるのです。

日本は円安圧力への懸念に注意

これは日本も同様です。かつては「米国がくしゃみをすれば、日本は風邪を引く」と表現されていたことをご記憶の方も多いでしょう。近年はここまでの連動性はないものの、円安圧力となることは間違いありません。

円安は輸出企業には追い風となりますが、輸入企業にとっては逆風です。行き過ぎた円安は輸入に頼るエネルギー価格の急上昇を招きかねず、それは日本経済全体の高コスト化に繋がる懸念も高まります。

日本経済はまだまだ病み上がりの段階にあり、日本当局の経済政策に裁量余地が乏しい中、米国の急激な金利上昇は日本にとっても頭の痛い問題になる可能性は否めません。

米金利上昇に備えた投資戦略とは

我々日本株の投資家からしても、米国の金利上昇からは上記のような連想が避けられません。とすれば、その連想から如何に距離を置くか、というのが投資戦略となります。

結論としては、景気動向に左右されない日用消耗品や薬食品関連、SaaSなどのサブスクリプション型ビジネスなどは比較的底堅い展開が期待できるのではないでしょうか。世界的なインフレ進行と円安基調を前提とすれば、米ドル建てで基準価格が決まるコモディティ分野の投資妙味も高まってくると考えます。

ボラティリティの高い相場展開が続く中、比較的短期での売買が増える局面では、徐々にこういった金利上昇対応銘柄へのシフトを進める好機とも位置付けたいところです。