一層警戒感を強めるウクライナ情勢

先週末2月18日、NYダウ平均は終値ベースで2021年12月1日以来の低水準まで下押し、米10年債利回りは1.91%台まで低下することとなりました。

様々に錯綜するウクライナ情勢に関わる情報に振り回され、市場が警戒感を一層強めていることに因ります。

先週2月15日には、一時的に市場の緊張が和らぐ場面もありましたが、その後、ロシアのプーチン大統領が「ウクライナ政府がジェノサイド(集団殺害)を行っている」と語ったり、ウクライナの親ロシア派武装勢力が「政府軍が複数回の砲撃を加えてきた」と主張したりしたことで、改めて市場に緊張が走ることとなりました。

米政府が指摘しているとおり、これはロシアがついに「偽旗作戦」を本格的に繰り広げ始めたということになると思われますが、これが「偽旗」であることが明らかにされたところで、ロシアが平気で侵攻を開始する恐れは十分にあります。

とりあえず「今週後半にブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相との会談が予定された」と伝わってきてはいますが、ラブロフ氏は最初から反故にすることも大いにあるとの前提で声掛けに応じたのでしょうか。どのみち、市場は今しばらく様子見に徹するしかありません。

FRBによる積極利上げへの期待が米ドル/円にも反映か

それにしても、ウクライナ情勢の緊迫化で市場のリスク回避ムードが一段と強まってきているわりに、米ドル/円は意外なほど底堅く推移しているとも感じます。それは、1つに一目均衡表の日足「雲」上限の水準や21日移動平均線が当面の下値サポートとして意識されていることによるものと思われます。

また、やはり米連邦準備制度理事会(FRB)による積極利上げへの期待が根強いことも当然あるのでしょう。

先週発表された米経済指標を見ても、1月の米生産者物価指数(PPI)が総合指数で前年比9.7%の伸びとなり、1月の米小売売上高も前月比3.8%増と事前の市場予想(2.0%増)を大幅に上回るなど、FRBのタカ派寄りの姿勢を正当化するに十分な結果が足元では得られています。

FRBの政策方針を危惧する声も

ただ、ここにきて市場が想定するFRBの政策方針がそのまま貫かれることになれば、その悪影響が景気に及ぶと危惧する声も一部で聞かれ始めています。

なにしろ、市場は既に「3月に0.5%の利上げ実施」、「年内の利上げは7回」、「最初の利上げ実施後直ちに資産圧縮(QT)実施」、「場合によっては、次回政策会合前の緊急利上げも」などといった要素を、すでに十分に織り込んできているのです。

つまり、そうした要素のうち1つでも市場の期待に届かないものがあれば、米ドルは一旦売られる可能性があるということです。

ユーロ/米ドルで見ても米ドル優勢は変わらない

ただ、実のところ欧州中央銀行(ECB)の政策に対する市場の期待も、2月初旬に行われた定例理事会後の総裁会見を受けてかなりタカ派の色合いを濃くしており、実際には「市場の期待に届かない」ものとなる可能性が高いと見られます。

つまり、ユーロ/米ドルで見れば今後も基本は米ドル優勢なのであって、その意味では米ドル/円の底堅さも変わらないものと思われます。

仮に、ウクライナ情勢の一層の緊迫化などによって、米ドル/円が前述した日足「雲」上限や21日移動平均線のサポートをクリアに下抜けたとしても、次は日足「雲」下限と89日移動平均線が位置する114.40-50円処が下支え役として立派に機能する可能性は高いと見ます。

むろん、再び115円台半ばの水準を上回ってくれば、その勢いを駆って116円台乗せに改めて挑戦する可能性も十分にあると見ます。

一方、ユーロ/米ドルは1.1320ドル処での下値サポートが機能するかどうかをまず見定めながら、仮に同水準を下抜ければ1.1280ドル処を試す動きになりやすいと見ます。

また。同水準をサポートとして反発の動きを強めた場合は、1.1360ドル処までのリバウンドが生じてもおかしくないものと見ます。