みなさん、こんにちは。あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
新年明けての大発会は日経平均で500円超もの上げ幅となり、上昇率で見ても2017年以来の高い水準となりました。大発会の騰落状況とその年の年間相場にほとんど相関性はないのですが、欧米の金融緩和縮小懸念が燻る中、それでも強い相場で気持ちの良いスタートになったと言えるでしょう。
今後の動向が注目される「メタバース」
さて、今回は「メタバース」について取り上げてみましょう。このテーマはひょっとすると2022年を通して大きく注目されることになるかもしれないとも考えています。ただ、このメタバースを主力事業として展開する上場企業が日本には今のところない(正確には外部から見えない)ため、どこまで日本市場で注目されるかはなかなか確信が持てません。
多くのデジタル関連企業がこの領域にもビジネスチャンスを見出していることは間違いないのですが、現時点ではどの企業もまだ試行錯誤の実験段階にあるというのが実際のところでしょう。この領域をビジネスとして確立させる企業が出現してくるか、がこのテーマが本格的に国内で盛り上がるかどうかの分水嶺になるのだと考えています。
「メタバース」とは何か?
そもそも、「メタバース」とは何でしょうか。メタバースとは、「超越した」や「高次の」を意味する「Meta」と「宇宙」や「世界」を表す「Universe」を組み合わせた造語なのですが、その定義はまだ定まっていません(そのくらい新しい概念です)。
大まかにはインターネットの中に構築されて多数の人により共有される仮想空間と考えれば良いでしょう。オンラインゲームでそのゲーム空間に多くの人がアクセスして仮想世界を形成することがありますが、その拡大版といって良いかもしれません。
メタバースでは、そのようなゲームという特定の領域に限定されず、そこで経済活動や一種の社会形成なども可能という実に広い「世界空間」を指しているのです。仮想空間ではあるものの、そこでは現実社会と同じようなもう1つの世界が存在する、とでも言えるでしょうか。
「それはVRやARと同じではないか」と訝しむ読者もおられるでしょう。ですが、VRやARはいずれも「現実世界のように感じられるデバイス」でしかなく、仮想空間そのものを指すものではありません。
もちろん、仮想空間をより現実感を持って楽しみたいというニーズに対応してVRやARが手段として利用される可能性は非常に高いと言えますが、この両者は決定的に異なるものとご理解ください。
NFTも含めた「メタバース」のビジネスモデルはまだ実験段階の過程
ただし、このメタバースの世界はまだ緒についたばかりであり、実際にどのような形で世の中に普及していくのか、そのビジネスモデルはよく見えていません。概念やストーリーが先行しているといっても良いでしょう。
直近では仮想空間内の土地が2億円超で販売されたというニュースが流れましたが、それが何を意味しているかピンとこないという方がほとんどだと思います。
NFT(非代替性トークン)という仮想空間内でのデジタル所有権を明確にすることができる機能を有する技術があり、メタバースという空間の中でその価値の発揮が期待されます。こちらは比較的(現実世界に生きている層でも)理解しやすい概念ではあるものの、それでも現時点では同様に、NFTの高値取引が発生したという話題が耳目を集めている程度です。
メタバースがどのような意味合いを持つものか、一般人が肌感覚で理解していくにはまだしばらく時間が必要なのだと思います。
株式市場では「メタバース」の市場規模拡大に期待
とはいえ、株式市場は「まだよくわからない段階」でも、そこに成長性があると認識されればどんどんその期待を織り込み始めるものです。
インターネットはその好例です。黎明期であった2000年当時、インターネットの意味合いや重要性がどれほど正確に市場に理解されていたかは甚だ疑問でしたが、高い将来性という期待値を牽引車としてITバブルとも評される大相場に発展しました。これは、インターネットがまだ一部の人たちのツールでしかなかった時の話です。
メタバースも同様の傾向をたどる可能性は否定できません。ブルームバーグは2020年時点でのメタバース市場規模約4,800億ドル(=約55兆円)に対し、2024年には約7,800億ドルまで急成長するとの見通しを明らかにしています。もっと強気の見通しをする調査機関も多々存在しています。
現時点ではよくわからない市場であり、ビジネスモデルもまだ確たるものが見え難い状況だとしても、この将来性に株式市場が注目するという可能性は十分に予想できると位置付けられるでしょう。
2021年10月、SNSを運用しているフェイスブック社は、メタ・プラットフォームズ社に社名を変更しました。メタバース事業への傾斜を社名変更によって高らかに宣言したということになります。今後も、続々とこの領域での事業展開を推進する企業は増え、多くの新興企業が名乗りを上げてくるとも考えられます。
現時点で日本企業はまだこの領域でさほどの影響力を有するポジションにはなく、やや出遅れ感は否めないところですが、もちろん今後はわかりません。実際、グーグルの創業はインターネット黎明期の1998年と、検索エンジンにおいては後発でした。同様の下剋上がこの領域で起きても不思議ではないはずです。日本企業にも大いに期待したいところです。