2021年の振り返り。米ドル高の1年
2021年の外国為替相場を振り返り、その大きな流れを一言で述べるならば「基本米ドル高の1年であった」ということになるでしょう。
主な要因は、他でもなく米連邦準備制度理事会(FRB)の政策方針が他の主要中銀に比べてタカ派寄りだったということにあり、その背景には米国における新型コロナウイルス向けワクチンの普及が早い段階からスタートしたことや、大型の経済対策が矢継ぎ早に打ち出されたことなどにより、米国景気の復調ぶりが他の国や地域よりも顕著だったということにあると考えられます。
足元では、米国景気の劇的な回復によって米企業の「求人」が過去最高水準で高止まりしており、賃金の上昇やその期待もあって米国の個人消費マインドは着実に強まってきています。
米主要企業の業績も押し並べて好調でしたし、2021年は米国の代表的な株価指数は史上最高値を更新しました。こうしたことは、バイデン米大統領をはじめイエレン米財務長官、パウエルFRB議長らの強力なタッグによってもたらされたものであり、2022年も彼等の優れた政策運営手腕が存分に発揮されるものと期待されます。
まして、2022年は米中間選挙が行われる年であり、米政権は一層の経済活性化を押し進めるべく必要な政策の実行に惜しみなく力を注ぎ込むことでしょう。
スピード感を求められる2022年の金融政策正常化
金融政策に関しては、すでにテーパリングの開始など「正常化」の流れがスタートしており、むしろ今後の焦点はその「スピード感」に移っていくものと見られます。もはや、新型コロナウイルスが原因で起こったパンデミックへの対応として緊急導入された資産購入策や超低金利政策は、次第にその役割を終えようとしています。
新型コロナウイルスによるパンデミックが収束に向かおうとしている中で、テーパリングの加速や米利上げを検討するのは必然的な正常化の流れであって、まだまだ「引き締め」と称するにはほど遠いものであると認識しておく必要もあるでしょう。
去る11月30日、パウエルFRB議長は米上院銀行委員会において「経済が堅調でインフレ高進が2022年半ばまで持続すると予想される中、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では大規模な債券買い入れプログラムの縮小加速を検討すべき」と証言しました。
折しも、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」への警戒感が強まる状況下にあったため、市場は「意外なほどタカ派にシフトした」との印象を受けた模様ですが、これはオミクロン株への対応も考慮した上で「現実的」に情勢を分析し、冷静に下した判断であると考えるのが適切かと思われます。
それだけ「米国」と「米ドル」は強いということでもあり、やはりユーロや円などと比較しても、相対的に優位にあるということは2022年も基本的に変わらないと思われます。
むろん、足元では英国や欧州でもインフレ傾向が強まっており、いずれはイングランド銀行(BOE)や欧州中央銀行(ECB)も「正常化」に向けて舵を切る必要に迫られる局面を迎えることでしょう。
ただ、いま暫くは新型コロナウイルス感染の急激な再拡大に対処することが優先されますし、諸々の規制措置が域内景気の回復を一時的に鈍化させる可能性も高いと見られます。
もちろん、対米ドルでの英ポンドやユーロはかなりの悪材料をすでに織り込んだ水準にありますが、なおも2022年を通じて対米ドルでの形勢逆転と相成ることは難しいものと見られます。
米ドル/円は引き続き強気の流れ
米ドル/円についても、基本的に強気の流れは2022年を通じて変わらないものと思われます。世界中が再び“日常”を取り戻そうとしている段階にあって、資源・エネルギー需要の高まりと価格の上昇がまだ暫く続くと考えれば、日本の貿易赤字体質も当面は継続するものと考えざるを得ません。
まして、岸田政権に向けられる海外からの目線は比較的冷ややかなままであり、経済対策の実効性についてもあまり高い評価は得られていません。2021年半ば以降、米ドル/円は長らく形成されていた下降チャネルから明確に上放れする動きとなっており、少し長い目で118円、120円といった節目にトライし、2022年の終わり頃には120円台で値固めする展開になってもおかしくはないと見ます。