新型コロナウイルスに揺れた2年間でしたが、この間、米国や日本国内の不動産価格は、エリアによるバラつきはあるものの、総じて堅調に上昇しました。東京もコロナ禍によって人口流出となりましたが、不動産価格はこの間も上昇しています。

「晴海フラッグ」の分譲マンションが人気の理由は割安感

東京での不動産価格上昇の象徴的な出来事が、中央区の東京五輪・パラリンピック選手村跡地に建設される「晴海フラッグ」です。

2年前の第1期の販売時には、それほど高い人気ではありませんでした。ところが2021年11月の販売では、発売戸数631戸に対し、登録申込者は5,546組で、平均倍率は8.8倍、最高倍率111倍という人気になりました。

これは、東京五輪・パラリンピックによる認知度向上もありましたが、何より2年前の第1期と販売価格を変えなかったため、実勢価格が上昇したことによって割安感が出てきたことが大きな要因です。

新築マンション人気が続く理由

首都圏の他の新築マンションも販売は好調のようです。2021年10月の中古マンション平均希望売り出し価格は、東京都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)で、前月比0.2%上昇しています。

これにはいくつかの要因が考えられます。

まず、不動産価格の先高感を持っている人が多いことです。コロナ対策のために政府が打ち出した財政支出により、余剰資金を持つ人が増えています。また、海外旅行や外食などを自粛する人は収入の使い道が減ったこともあり、まとまった資金の一部が不動産マーケットに向かっています。

土地の仕入れ価格が上昇し、建築資材も値上がりしています。今後建てられる物件の価格は現在販売しているものよりも高コストになりやすく、価格も上昇する可能性が高くなります。そのため、「買えるうちに買っておこう」と判断する人が購入に舵を切っています。

都心の高額物件を購入しているのは、パワーカップルと呼ばれる高収入の共働き夫婦世帯が中心です。都心では物件の平均価格が1億円に近づいており、普通のサラリーマンには買えない水準です。しかし、収入が多ければまとまった頭金も用意できますし、住宅ローンも合わせれば共有で購入することが可能なのです。

さらに、住宅ローンは年利1%以下の低金利で借りられますし、住宅ローン減税による節税メリットもあります。

「借りるより買った方がトク」と考える人が増えているのです。

プロも注目する相対的に高い不動産の賃貸利回り

個人だけではありません。国内機関投資家や海外からの投資ファンドも、国内不動産に資金を振り向けています。

これは金融緩和による低金利が続き、安定してインカム収入が得られる投資対象が少なくなっているからです。

都心の新築賃貸物件は、資金力のある法人が個人よりも高値で購入しているという話も聞きます。債券などの他の投資対象と比較して、リスクの割に高いリターンが期待できると判断しているのかもしれません。

2022年の資産運用の大きなテーマは「マーケット金利の動向」

では、このような世界的な不動産市場の高騰は今後も続くのでしょうか。

不動産価格は一般に、そのエリアの需要と供給だけではなく、マーケット金利によっても変動します。これは不動産を購入する場合、ほとんどが借入を使っているからです。

市場金利が上昇すれば、借入金利も上昇します。変動金利の借入をしている場合、今までより支払い金利が大きくなり、不動産価格に悪影響を与えます。これは、株価が金利上昇によって、株価の割引現在価値が下落して、理論的にはマイナスの影響になるのと同じです。

となれば、日本の不動産価格にとって国内の金利の動きが大きな変動要因であることは明らかです。

米国では、中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)が消費者物価の上昇を踏まえ、2022年半ばから政策金利を引き上げるのではないかと予想されています。

日本国内では、消費者物価指数の上昇は日銀が政策目標としている年2%には到達していません。この状態が続くのであれば、米国に追随して政策金利が引き上げられる可能性は当面低いと予想されます。

とすれば、国内不動産の価格は上昇しないにしても、下落する可能性は低いと考えて良いのではないでしょうか。

不動産に限らず、2022年の資産運用は「マーケット金利の動向」が大きなテーマになりそうです。