GDPは他の国においても経済指標の中で市場から注目の高い指標ですので、「米国経済指標」とはしていますが、米国に限らずGDPとはどんな指標かという基本について解説していきますね。
GDPはGross Domestic Productの頭文字で「国内総生産」を指します。学生時代に習った記憶がある方も多いことでしょう。GDPは「一定期間内に国内で生産された財・サービスの付加価値の総額」と説明されています。この指標は生産や取引の量といった「フロー」を表し、一時点の残高など存在量を測る「ストック」とは異なります。GDPの伸び率が「経済成長率」とみなされており、経済を把握するうえで欠かすことができない指標です。
なお「国民総生産(GNP)」という概念もありますが、GNPでは外国居住の国民の生産量も含まれることから、外国での生産活動分を除いた国内のみの生産を計るGDPがより重視されています。
ここで、経済理論の切り口から簡単に説明しますね。
GDPには「三面等価の原則」が成立します。これは国内における生産(供給)、分配(所得)、支出(需要)は等しくなるというものです。このうち支出(需要)は「国内総支出(GDE)」と言われる概念で
GDE=民間消費+民間投資+政府支出+輸出―輸入
で表されます。三面等価の原則から、国内総生産(GDP)=国内総支出(GDE)ですから、GDPも上記式とイコールになります。(GDPの式もありますが、少々複雑ですのでここでは省きます)米国のGDPにおいて個人消費が非常に大きい役割をもっているというのも支出面から見るとわかりやすいですよね。
GDPにおいて、もう一つ押さえておく必要があるのは「名目」と「実質」の違いです。上記で説明してきたGDPは、その時々の市場価格で評価した経済量を示し、それは名目GDPと呼ばれます。市場価格は物価の変動で大きく変わりますから、その影響を取り除いたものを実質GDPと呼びます。当然のことながら、名目GDPと実質GDPには差が出てきます。名目GDPの成長率と実質GDPの成長率の差(名目GDPを実質GDPで割った値)を「GDPデフレータ」と呼び、こちらは物価上昇率を示す指標として市場関係者に注目されています。名目値と実質値、双方を比較して経済成長を判断することが大切なのです。
さて、最後にGDPの発表タイミングを日米ともに紹介します。米国では四半期毎に集計、商務省より翌月(1、4、7、10月)に速報値、翌々月に改定値、更にその翌月に確報値という順で発表されます。日本でも四半期毎に集計、内閣府経済社会総合研究所(ESRI)より1次速報は四半期終了後1ヶ月と2週間程度(2、5、8、11月)、2次速報は更に1ヶ月後という順で発表されます。いずれも速報値(1時速報)の方が市場からの注目度は高いことも覚えておきましょう。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員