前回の記事では時価総額上位の企業が変わってきていることをお伝えしました。その上で時価総額上位企業の株式を保有している企業をいくつか紹介しています。
TBSが保有している銘柄に、時価総額上位企業の存在が
その中で最も目立つ企業はTBSホールディングス(9401)でしょう。企業がどの企業の株式を保有しているかは、有価証券報告書で確認できます。有価証券報告書は企業のウェブサイトのIR情報で見られることが多いですが、EDINETには必ず掲載されています。TBSの有価証券報告書のうち、「株式の保有情報」には以下のような銘柄の保有状況が掲載されています。
テレビ局であるTBS(TBSテレビ)はTBSホールディングスの子会社ですが、同社も様々な株式を保有しています。TBSテレビはTBSホールディングスの完全子会社なので、実質的にはTBSホールディングスが保有していると考えても良いでしょう。
前回の記事で取り上げた東京エレクトロン(8035)、リクルートホールディングス(6098)など、時価総額が高く、かつ株価が大幅に上昇している銘柄を保有していることが分かります。東京エレクトロン株は2021年3月末時点で約2800億円、前年度末から約1600億円値上がり、リクルートHD株は同じく約1350億円、一定数を売却しているにも関わらず、保有額は約400億円増えています。さらに東映(9605)、東宝(9602)の株式もそれぞれ2021年3月末の評価額で約300億円、約200億円保有しています。
上記の東京エレクトロン、リクルートHD、東映、東宝の保有額とTBSの時価総額を2020年末と直近で比べると以下のような整理になります。
4社の評価額は2021年だけで2265億円上がっています。60%近いリターンですので、素晴らしい投資効率と言えるでしょう。一方、TBSの時価総額はわずかにしか増えていません。既に東京エレクトロンの保有額のほうが時価総額よりも高いような状況です。もちろん、これをもってTBS株が割安だと言えるかも知れませんが、マーケットはこれらの株式の価値を引き出すことが難しいと評価しているとも考えられるでしょう。TBSが買収防衛策を導入していることや、放送事業者であることを考慮すると、良いターゲットではないのかもしれません。
一方、TBSが優良な資産を保有していることは間違いありません。ですから、これらがうまく活用されれば企業業績への寄与も期待できると思います。優良な子会社や保有株、不動産を手放して得たキャッシュを成長投資に振り向け、成功している企業も少なくありません。8月13日付の記事でも触れましたが、TBSは東京の赤坂に優良不動産を保有しており、その再開発を目指しています。放送事業自体も現状は収益をあげています。これだけの資産を有していれば、それを元手に再開発を行って、より不動産会社の性格を強める、あるいは放送事業により注力することも考えられます。
保有株式の価値が大きな企業を見分けるには?
さて、このような保有株式の価値が大きな企業を見分けるには、どんな方法があるのでしょうか。上記のように有価証券報告書を見て、その企業の保有株式を見るのも1つの方法ですが、なかなか手間がかかります。簡単な方法は、企業の決算短信の貸借対照表で「その他有価証券評価差額金」の欄を見ることです。例えばTBSでは以下の通り記載されています。
「その他有価証券評価差額金」というのは、保有している株式などの有価証券が決算書での評価額と時価に差額がある場合の差額を表示するものです。TBSの場合、決算書上の主に上記のような保有株式の簿価に比べ、時価が396,067百万円、つまり約4000億円高いということになります。TBSの純資産合計が約8500億円ですから、この評価額が大きいことがよく分かります。
前回の記事でリクルート株を保有している企業として挙げた凸版印刷(7911)や大日本印刷(7912)、フジメディア(4676)なども1000億円から3000億円程度の差額金を計上しています。
保有株式が魅力的な企業があれば、この欄を確認して、まずは株式の評価額が上がっているかをチェックすると良いでしょう。