資産運用の手法には様々なものがあります。銘柄選択で個別の株式を選ぶ手法やデイトレードのような短期売買を繰り返すことで収益を積み上げる手法もあります。
私自身は、アセットアロケーションを中心にした資産運用を20年以上実践しています。
アセットアロケーションを組む際の2つの手法
ご存知の方も多いと思いますが、アセットアロケーションとは自分の保有する資産全体の配分を考え、その比率を調整することで運用していく手法です。
実は、アセットアロケーションには、ストラテジック(Strategic)アセットアロケーション(戦略的資産配分)とタクティカル(Tactical)アセットアロケーション(戦術的資産配分)の2つがあります。
ストラテジックアセットアロケーションとは、基本となるアセットアロケーションで、相場の変動に関係なく、自分の年収、資産状況、家族構成、人生の目的などから資産配分を決めていくものです。
一般的にアセットアロケーションという場合は、このストラテジックアセットアロケーションのことを指します。
環境変化にはタクティカルな資産配分の変更で対応
一方の、タクティカルアセットアロケーションとは、短期的な相場観に基づき、ストラテジックアセットアロケーションによる配分比率を意図的に変化させ、そこから超過収益を狙うものです。
例えば、相場観に応じて、短期的に±2〜10%の変動をタクティカルに可能にするというようにルールを設定します。
そして、各々のアセットクラス(資産の種類)に強気・中立・弱気の評価を行い、それに応じてストラテジックアセットアロケーションから資産配分をずらしていきます。
米国が世界のマーケット環境を決める
現状の各国の経済状況はグローバルにリンクしていますが、その中で最も影響力があるのは、言うまでもなく米国です。資本主義社会のリーダーというだけではなく、経済規模の大きさからいっても欧州と並び、無視できない存在です。
しかも、米国は他国に先行して経済状況が変動しています。欧州や日本が、新型コロナウイルス感染拡大による景気低迷とそこからの回復の遅れで金融緩和を続ける中、米国では既にその次の動きが始まろうとしています。
米国の経済データで懸念され始めたのがインフレです。米消費者物価指数(CPI)は高止まりが続いており、更に世界的なエネルギー供給不足懸念を反映して天然ガス、石炭や原油の価格が上昇しています。
今後、米国の金融政策が転換し、金利上昇という流れが続けばアセットアロケーションにもタクティカルな修正を加える必要があると考えています。
タクティカルな資産配分は補完的な意味合いで考える
米国の金融政策が引き締めに転じ、金利が上昇すれば、株価にはマイナスの影響となります。また、金利差の拡大により円安米ドル高の為替変動が予想されます。
このような相場観であれば、タクティカルに外貨比率を高め、株式の配分比率を下げるといった対応が考えられます。
例えば、下記のように外貨のキャッシュ(現金)の比率を10%(+++++)高めて、日本株式,外国株式、外国債券、キャッシュ(円)の比率をそれぞれ下げるというように調整していきます。
日本株式 --
外国株式 -
日本債券
外国債券 -
キャッシュ(円)-
キャッシュ(外貨)+++++
(※)‐:2%比率を下げる。+:2%比率を上げる。
ただし、このような金融政策の変化からマクロ経済がどのように変わるかを予想し、タクティカルな資産配分を調整するのは簡単ではありません。
想定通りの変化が発生するかは分かりませんし、仮に金利が上昇したとしてもどこまで金融マーケットに影響があるかも簡単には分からないからです。
そのため、タクティカルアセットアロケーションは、ストラテジックな資産配分の補完的なものと位置付けておきましょう。
分散投資は永遠不滅の投資手法
いずれの手法にしても、アセットアロケーションによる分散投資はリスクをコントロールしながら、長期で安定的に資産を増やしていくために最適な手法と考えられます。
マーケット環境がどのように変わってもアセットアロケーションの重要性は変わりません。分散投資は永遠不滅の投資手法なのです。