FOMC後急騰した米金利と米ドル/円
先週の米ドル/円は週末にかけて110円台後半まで一段高となりました。これは、日米金利差米ドル優位が拡大したことに連れた面が大きかったでしょう(図表1参照)。
ところで、そんな金利差米ドル優位拡大の主役は米金利の大幅上昇。先週は、注目されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の後から、とくに金融政策を反映する米2年債利回りが急上昇となり、僅かですが、年初来の高値を更新してきました(図表2参照)。これは、今回のFOMCを受けて、現行の量的緩和(QE)+ゼロ金利政策といった超金融緩和政策が転換に向かうことを織り込む動きと考えられます。
米ドル/円と日米金利差の相関関係がこの先も続くなら、米ドル/円の行方は日米金利差、とくにその主役である米金利次第ということになるでしょう。ではそんな米金利の今後のシナリオはどのように考えたら良いのでしょうか?
米国の超金融緩和政策の転換には、過去に一度だけ前例がありました。いわゆる「リーマン・ショック」局面でもQE+ゼロ金利政策といった超金融緩和政策が行われましたが、その緩和政策の転換において米金利がどのように推移したかを考えることは、今回の超金融緩和政策転換での米金利の動きを予想する1つの手掛かりになるのではないでしょうか。
「リーマン・ショック」後の超金融緩和政策転換の第一幕に位置付けられるのは、2014年1月のQEの縮小、いわゆる「テーパリング」開始でしょう。この「テーパリング」開始に向けて、米2年債利回りはゼロ金利政策の上限である0.25%を上回ると、その後は下がっても基本的に0.25%を下回らず、最高で0.5%まで上昇しました(図表3参照)。
先週行われたFOMCを受けて、早ければ11月FOMCでテーパリングを開始する見通しとなりました。ということは、上述の「リーマン・ショック」後の経験を参考にすると、金融政策を反映する米2年債利回りは、テーパリング開始に向けて基本的には0.25%をもう下回らず、0.5%に向けて一段と上昇する可能性があるということになるでしょう。
米ドル/円は、マーケットが米国の超金融緩和政策の転換を意識し、米2年債利回りが急騰した6月FOMC以降、それまでと打って変わり、日米2年債利回り差との相関関係が高まりました。この関係を前提としたうえで、上述のように米2年債利回りが大きく上昇することで金利差が拡大すると、米ドル/円はテーパリング開始までに、基本的には110円すら大きく割れることなく113円程度への一段高に向かうといった見通しになります(図表4参照)。
米ドル/円とユーロ/米ドルとの違い
米金融政策に関心が高まる中での2年債利回りとの高い相関関係は、米ドル/円に限ったことではありません。たとえばユーロ/米ドルと独米金利差を重ねてみると、6月FOMC前後から、10年債利回り差より2年債利回り差との相関関係が高まるようになったことがわかるでしょう(図表5、6参照)。
この関係がこの先も続くなら、すでに見てきたように、米国の超金融緩和政策の転換を織り込む形で米2年債利回りが上昇する中、ユーロ/米ドルも基本的にはユーロ安・米ドル高が広がっていくといった見通しになるでしょう。
ただ細かく見ると、先週のFOMC以降、米ドル/円がほぼ一歩調子で米ドル高に向かったのに対し、ユーロ/米ドルはユーロ下げ渋り、つまり米ドルは上げ渋る展開となりました。これには、株価の影響もあったのではないでしょうか。
9月に入り米国株などが大きく下落した局面では、ユーロ/米ドルはそれとの連動性を強めました。こんなふうに、ユーロ/米ドルなどは、株価に注目が集まる局面では、株価と順相関(株安=ユーロ安・米ドル高、株高=ユーロ高・米ドル安)の関係が強まることがあります。その意味では、先週のFOMC以降、米国株などが急反発に転じたことが、米金利上昇の割にユーロ/米ドルにおいて米ドルが上げ渋る要因になった可能性はあったのではないでしょうか(図表7参照)。