変動の大きかった先週の米国株市場、前週比ではほぼ変わらず

先週S&P500は0.51%の上げ、ナスダック総合は0.02%とほぼ変わらずで終わりました。

1週間のリターンだけで見ると、大きなイベントが起きた週とは思えませんが、先週の米国株はボラティリティの高い週となりました。

9月20日(月)には中国の大手不動産開発会社、中国恒大集団の資金繰り悪化で、経営破綻の可能性が高まったことでハンセン指数が1日で4%下落しました。これを受けてアジア時間の米国株価指数の先物は弱く推移し、米国時間に入ってもその流れは変わらず、9月20日(月)のS&P500は一時パニック売りとなり、前日比で2.87%と大きく下がることになりました。

9月の下げが本格化しそうに見えたものの、S&P500は午後3時17分に4,305.91ポイントをタッチした後、引けまでの43分間で51.82ポイント回復し、1日を終えました。最終的に同日のS&P500は1.7%の下落に留まりました。

9月20日はビットコインも一時10%下落し、43,000ドルを割る展開となりました。一方、金価格がしっかりとしており、原油価格下落もあり、金利が下がり、債券が買われるという「質への逃避」が見られた1日でした。

9月20日、S&P500がザラ場中に付けた4,305.91ポイントは、9月2日に付けた史上最高値から5.09%下げたレベルとなります。史上最高値を更新してからの5%の下げは、2020年10月来です。

NYダウもナスダック総合指数も、9月20日のザラ場中にそれぞれ史上最高値から5%を超える調整が入った後、引けにかけては急回復して1日を終えました。

今年9月は例年より株価が下がる確率が高いとも言えるが

1928年からのアノマリーによると9月は1年の中で最も株価が下がる1ヶ月であり、株価が上がる確率は45%と5割を下回り、平均の下落率は1.03%です。

それが大統領就任1年目の9月に株価が上がる確率は43.5%へ減り、平均下落率は1.48%となっています。つまり、2021年9月は例年より株価が下がる確率が高い月だということです。

このようなアノマリーもあり、米国株が9月に下がるのは極めて起こりうることと思えます。しかも、米国のメディアでは9月の米国株は弱いのだという米国株のストラテジストらによるネガティブコールが次々と報道されています。

私がツイッター上で行った月例の日本人投資家のセンチメントアンケートでも「9月の米国株は弱い」というが支配的でした。

「9月の米国株は弱い」アノマリー VS 別のアノマリー

9月に株価が下がるのは当たり前だという雰囲気がある中、8月30日付のコラムでは「2021年の9月は株価が高く終わるのではないか」という、「9月の米国株は弱い」アノマリーを否定する別の2つのアノマリーをご紹介しました。

1つは、「S&P500採用銘柄のうち、50日移動平均線を上回った割合が90%を超えた場合は上昇する」というものです。もう1つは、「S&P500が8月末までに10%以上上昇した年は、9月の株価も高い」というものです。

実際、誰もが株が下がるのは当たり前だというような環境下、逆張りの発想で考えると、米国株はそう簡単に下がるとは思えません。マーケットはそういうものではないでしょうか。

加えて、9月13日付のコラムでご紹介した通り、「ロシャ・ハシャナの前に売り、ヨム・キプールの前に買え」というユダヤ教の祝日に絡む、もう1つのアノマリーもあります。2000年から2020年までのデータでは、ヨム・キプールが終わった後2週間のS&P500は76%の確率でプラスとなっており、上昇率は平均1.21%となります。このアノマリーで見ると9月後半の株価は高そうだというものです。

私は、9月に入っての短期的な5%の下げで、市場が待っていた調整の役割を果たされたと思っています。

9月の終わりまで残りは後5日しかありません。S&P500は9月に入り、これまでのところ1.4%の下落となっています。しかし、私はこの残り5日間で米国株は上昇し、9月は最終的にはプラスで終わる可能性が高いと考えています。最悪でも9月に下げた幾分かを取り戻すだろうと思っています。

投資家のセンチメントが弱いとマーケットは下がりにくい

私のこうした考えをサポートしてくれる新たなエビデンスが、9月26日にツイッター上で行ったアンケ―トの結果です。9月27日6時時点の結果によると、2,733人の回答者のうち今週株価が下がると思っている日本人投資家は47%、上がると思っている投資家は28%と弱気の方々が多いのです。弱気の投資家が多い場合、マーケットは下がりにくいという一種のアノマリーがあります。

アノマリーには、素直にアノマリーで戦うしかないのではないかと思っています。