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今回は、家族への資産承継を中心に認知症と相続について解説します。
高齢者が抱える3つのリスク
高齢になると健康や財産管理などが気になる方が多くなりますが、主に次の3点を意識しましょう。
・加齢による病気や事故の確率が高まる
・誰でも「認知症」になる可能性がある
・「相続」はいつか必ず発生する
いざということが起こった時には、資産を家族に託すことになります。
その時、家族が困らないようにしておく。これが相続対策であり認知症への備えとその対策になるのではないかと思います。
まず、家族が困ってしまう事例として次のような事が考えられます。
・ 資産の所在が分からない(特にネット取引、デジタル資産 )
・ 資産が凍結されてしまい使用できない
・ 誰が承継するのか決まらず、円滑に承継ができない
認知症の発症は身近な問題
それでは、現状日本において認知症はどういう状況かというのを見ていきましょう。図表1は、厚生労働省が65歳以上の認知症になった国民の推定人数について公表したものです。2020年時点で、認知症患者は、推定600万人となり、65歳以上の人の20%となっています。
認知症のリスクは「65歳以上」といっても、年齢ごとに大きな違いがあります。図表2が、年齢別の認知症の方の割合を表したグラフです。認知症の発生率は加齢によって着実に上昇していることがわかります。特に75歳から注意が必要です。
判断能力が低下してしまうと自分の財産の管理が難しくなってくるというのが一番の問題になろうかと思います。では、その時にどう対処するのか。
認知症に対処する制度
次に対処方法として、「成年後見制度」についてご説明したいと思います。
一般的に認知症などにより判断能力がなくなってしまえば、財産管理や身上監護のために家庭裁判所に申し立てて成年後見人などを選任してもらう「成年後見制度」の利用が必要となります。
成年後見制度の概要
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が十分でない方を法律的に支援する制度です。後見人が、生活環境の整備など(身上監護)と、財産を守るための財産管理を支援していく目的となります。
成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2つがあります。
「法定後見」は、本人の判断能力が十分でなくなった時に家族が家庭裁判所に手続きの申し立てを行います。
「任意後見」は、本人の判断能力が十分ある時に将来後見人になってもらいたい人と任意後見契約を結んでおきます。判断能力が十分でなくなった時に、家庭裁判所に手続きの申し立てを行います。
続いて、手続きの流れをみていきましょう。
成年後見制度のメリットと留意点
成年後見制度は生活環境と財産が守られるメリットがある良い制度ですが、注意すべきこともあります。例えば、後見人は裁判所が選任するので、家族ではなく司法書士などの専門家がなる場合がありますが、財産管理はその方が行うので、家族の意向が反映されないケースがあります。
またこの制度は被後見人の財産を守ることを趣旨としているため、元気な時に相続対策で孫に毎年贈与していたのであれば、それができなくなる、というケースもあります。
以下が、考えられるメリットと留意点になります。
メリット
・ 被後見人の生活環境と財産が守られる(身上監護と財産管理)
・ 家庭裁判所の下、後見人の職務が管理される
・ 後見人の使い込みに備えて後見支援信託が準備されている
留意点
・家族以外で、弁護士などが後見人などに選任されても異議申し立てできない
・一旦、後見人などが選任されると交代・除外することが難しい
・後見人などは職務内容を家庭裁判所に報告する義務がある
・後見人などの財産管理のやり方に家族の意向は反映されにくい
・積極的な資産運用や相続対策ができなくなる
・家庭裁判所への申し立てに手間と費用がかかる
・後見人などに報酬を払う必要がある
上記のような留意点に関して、制度を利用される家族から「成年後見制度は費用がかかるし運用がやや硬直的で使い勝手が悪い」という意見が出ることがあります。
そこで最近では判断能力が十分あるうちに、「信託」という制度を使って認知症に備えることを検討する方も増えてきました。
>> >>家族と考える認知症と相続の対策(2)認知症への対処(信託制度)
本コンテンツは、2021年8月3日に開催したセミナー「プロが解説!家族と考える認知症と相続の対策」をもとに編集、掲載しています。