「FIRE」という言葉をよく聞くようになりました。FIREとは、経済的に自立した状態で早期退職し、自由な時間を過ごす生き方のことです。数年前から欧米で流行し、今や全世界で注目されるようになりました。そして、コロナ禍によって暮らし方、働き方が変わった今、日本でもこのFIREを目指す人が増えています。

では、もしこのFIREを実現できたとしたら、その後どのようなことに注意すれば良いのでしょうか?

将来資金不足になる可能性を考慮する

早期リタイアするといっても、その準備やリタイア後の暮らし方・収入の計画がいると思います。例えば資産が潤沢にある方は、普通に暮らしても死ぬまで大丈夫かもしれませんし、資産がそこまでではないという方は計画的に節約したり、時には労働して収入を得たりして生活を維持するなど、様々なプランをお持ちだと思います。

ただし、このプランが、将来的に大きく変わる可能性があることは覚悟しておく必要があります。

今は人生100年時代。60歳、65歳で定年を迎える方も、その後30年暮らしていくには様々な状況の変化が想定されるほどですから、早期リタイアとなるとそれ以上の変化を覚悟しておく必要があります。

病気、災害、事故、生活スタイルの変化などで、予定外に資産が早く減ってしまう可能性があります。また、次第に生活費が膨らみ、支出が少しずつ大きくなる傾向となってしまうかもしれません。そうなれば、資金不足に陥ってしまい、働いて収入を得ることを余儀なくされ、FIREを挫折してしまうことになるでしょう。

運用益、不労所得での暮らしは保障されていない

FIREでは、投資でその後の生活費を捻出することになります。ですがこの投資、言うまでもなく「絶対」はありません。よく、年間生活費の25倍を貯めれば、FIRE後は年間4%の運用益で生活できるという「4%ルール」が言われています。

ですが、なんとか頑張って年間生活費の25倍を貯めたとしても、その後の「4%」は、いかなる方法をとったとしても保障されません。それ以上の運用ができるときもあれば、どうしてもそれ以下の運用しかできないというときがあるのです。そのときにどのような行動がとれるか。これもその後の生活を左右します。

運用成績が良くないと感じると、恐らく焦ります。場合によっては、ちょうどタイミング良く上手い投資話がやってきて、「今だけの好条件」「残り僅か」などという上手い文句に乗ってしまわないとも限りません。

上手くいけば良いのですが、資産を増やそうとFXや暗号資産、個別株などにだけ、といったリスクの大きい投資に手を出してしまう末路になるかもしれません。

また、インフレや円安でモノの値段が上がる可能性もあります。そうすると、生活費に影響します。こういうことも、資金不足を招く原因となるのです。

自己投資をしないとキャリアが止まる可能性も

FIREは早期リタイアすることです。そのため、キャリアを十分に積めないまま、仕事を離れてしまうことにもなるケースもあるわけで、その場合はキャリアが止まり、育ちません。「自分も活躍したい」などという気持ちがある方が早期リタイアしたら、それは後悔することになるかもしれません。

自己投資をすべき時期にそれをしないということは、やがて社会に、仕事に復帰したいと思った時に、「使えないヤツ」として思うように働くことができない可能性があります。そのようなことがないように、会社に所属しなくてもスキルを身につけ、状況によっては自分で事業ができるようにしている方もいるので、それはそれで1つの対策にはなるでしょう。

私はよく、すでにFIREを十分にできるほどの資産を持っている方にお会いしますし、周囲の友人にも多く存在します。彼らを見ると、ゆっくりできるはずなのに、いつも忙しそうに仕事をしています。自分のやるべきことをしっかりと見つけ、高みを目指して努力を続けているのです。その方たちはなぜFIREをしないのでしょうか。

お金がないから働く、あるから働かないという次元や軸では当然になく、生きる上で目標があり、そこに向かっているからのように見えます。それによって、充実感や生きがい、やりがいなど、精神的な充実を実感されているのだと思います。だから、仕事上の苦難があったとしても、働くのだと思います。

FIREを目指すことは、全く悪いことではないと思います。反対に良いことだとも思います。ただ、そう思ったきっかけや原因、目指すところが明確ではないことも多いように感じます。

お金があれば好きに自由なことができる!といった楽観した考えで、見切り発車にならないように注意したいものです。良い人生にするための選択なのですから、お金があれば…ではなく、それプラスの目的なども手に入れられるチャンスとして、FIREを選択したいものです。