注目を集めるESG投資

ESG投資が注目されています。ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)という3つの観点から投資先を選定する投資手法です。機関投資家を中心に採用する動きが広がっています。

例えば、環境というテーマでは、化石燃料の削減による地球温暖化防止や代替エネルギーの促進、社会というテーマでは管理職登用など女性活躍の推進、ガバナンスに関しては社外取締役の登用による企業統治の徹底などが考えられます。

長期的には投資の大きなテーマに

ESG投資は、欧州を中心に機関投資家の間で広がっており、年金基金などが運用手法として取り入れる動きが続いています。短期的な企業収益の最大化だけを経営目標にするのではなく、社会的な責任も果たしている企業に投資すべきという考え方は、資本主義社会の持続的成長のためには重要です。

環境に配慮しない企業や人権を尊重しない企業、あるいは企業経営の統制が取れていない企業は中長期的には社会との軋轢を起こしたり、社会にマイナスの影響を与えたりする懸念があり、株主にとっても不利益になります。

ESGに配慮しない企業への投資は、長い目で見ると割に合わないものになる可能性もあるのです。

では、個人投資家は、そんなESG投資とどのように付き合っていけば良いのでしょうか。

現在の懸念点は、定義の曖昧さ

ESG投資が悩ましいのは、ESGの概念は理解できたとしても、それを具体的に実践している企業をどのように評価し選定するかに関して、確立された指標や手法がまだ無いことです。

例えば、二酸化炭素の排出量で環境に対する取り組みを評価したり、女性幹部の比率でダイバーシティに対する取り組みを評価したりといった定量的なアプローチはあっても、それらをどのように統合して、総合的に判断するかは、難しい側面があります。

欧州では、ESG投資の定義を厳格化したことによって、投資額が減っているというデータもあります。これはESG投資が後退したのではなく、本来ESG投資には含まれない投資対象が混ざっていたことが原因と言えます。曖昧な基準が徐々に厳格化される動きの現れと見ることができます。

何をもってESG投資とするかは、これからも議論が続きそうです。

ブームで割高になるリスクもある

また、投資家がこぞってESG銘柄と呼ばれる企業に資金を投下することによって、ESG銘柄が割高になるという事態も報じられています。企業収益に対して、企業評価が過剰に高くなれば、空売りを仕掛けられ、ESG銘柄の株価が調整するリスクも出てきます。

更に、本来ESGに積極的に取り組んでいないにも関わらず、投資資金を呼び込むためにESGを声高に叫ぶ「グリーン・ウォッシュ」という問題も指摘されています。

ESG銘柄として市場から評価されていた銘柄の実態が明らかになって、失望から株価が急落するようなケースも出ています。

これは、2000年のITバブルの時の「ドットコム銘柄」ブーム(社名にドットコムが付いているだけでIT銘柄としてもてはやされた現象)とその後のITバブル崩壊を想起させます。

株価は最終的には収益性から決定される

企業がESGに配慮した経営をすることが大切だとしても、企業収益が上がらなければ最終的には株価は下がりますし、利益が出せなければ企業として生き残ることはできません。

ESGという考え方は、これから益々金融資産の運用に影響を与えるようになるとは思いますが、本来の趣旨に沿った正しいESG投資を実践するのは簡単ではありません。

私は、株式投資に関しては銘柄を選択するのではなく、市場平均に任せる方が良いとずっと考え、インデックス投資を実践してきました。ESG投資が注目されているとしても、その考えに変わりはありません。

という訳で、しばらくはESGによる資産運用の結果がどうなるかを見守りたいと思っています。