コロナ禍で多くのビジネスがダメージを受ける一方で、人々のライフスタイルの変化を契機として、好調な株価推移が見られる企業もあります。その中でも、今回取り上げる2社は非常に魅力溢れる場所にあり、実際に本社や工場を訪問することもできます。その企業の土地を訪れ、その土地ならではの強みは何なのか、どのような産業がその土地を支えているかを目で見て確認することは投資先を考える上で大きく役立つと思います。まだ外出自粛が続いている状況ですが、コロナ後の訪問先の選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

柑橘のまち瀬戸内で育ったジャム大手企業、アヲハタ(2830)

まずご紹介するのは広島県に本社を持つジャム大手のアヲハタ(2830)。瀬戸内といえば柑橘類が有名ですが、1932年にみかん缶とオレンジママレードの会社として設立されたのが同社です。同社は、日本における家庭用びん詰ジャム市場での市場占有率が約50%で、低糖度ジャムでは約70%のシェアを獲得(※1)していますので、スーパー等で見かけたことがあるのではないでしょうか。パン用ホイップやトーストスプレッドも展開しています。意外に知られていないのですが、キユーピー(2809)とは長年つながりがあり、今ではキユーピーの子会社です。

業績については、新型コロナウイルスの感染拡大により外食やホテル向けの業務用市場では苦戦したものの(図表1参照)、外出自粛による内食需要、手作り需要の増加で家庭用市場は堅調だったとのことです(図表2参照)。

【図表1】生産受託他(外食やホテル向けの業務用)の売上
出所:アヲハタウェブサイト2021年2月19日株主総会資料より
【図表2】家庭用の売上
出所:アヲハタウェブサイト2021年2月19日株主総会資料より

ただし、2021年度の内食需要は2020年度ほどの高まりにはならないという見込みから、新しい客層を定着させるために、健康意識の高まりをとらえるべくカロリーハーフのジャムをリニューアルしたり、季節限定品などの新商品を展開していく予定とのことです(図表3参照)。

【図表3】2021年度の取り組み(家庭用ジャム・スプレッド)
出所:アヲハタウェブサイト2021年2月19日株主総会資料より

海外戦略としては、中国の丘比(キユーピー)と連携して販路を開拓しています。また製品への信頼度が高いアジア市場を狙っています(図表4参照)。

【図表4】2021年度の取り組み(海外事業)
出所:アヲハタウェブサイト2021年2月19日株主総会資料より

アヲハタの株価は2020年3月のコロナショックで下落したものの、その後以下のような推移となっています。

【図表5】アヲハタの株価分析10年チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2021年8月25日終値時点)

なお、広島県にある「アヲハタジャムデッキ」では、ジャムづくりの体験ができるそうです(2021年7月6日時点)。瀬戸内海を目の前に臨む場所に位置していることから、船のデッキをイメージしたデザインで建築されており、爽やかな青色の外観が素敵です。

出所:アヲハタウェブサイトより

また、同社の株主優待では同社製品の詰め合わせが用意されています。

毎年、決算期末(11月30日)現在の株主名簿および実質株主名簿に記載または記録された1単元(100株)以上保有の株主の方に対し、以下の基準により年1回
割当基準日:11月30日

出所:アヲハタウェブサイトより。贈呈基準:100~999株保有の株主の方
出所:アヲハタウェブサイトより。贈呈基準:1,000株以上保有の株主の方

※アヲハタ調べ 小売用・糖度40度~55度未満(期間2018年1月~12月生産量シェア)

コロナ禍で大躍進のキャンプ用品メーカー、スノーピーク(7816)

次に新潟県三条市に本社を持つキャンプ用品メーカーのスノーピーク(7816)を紹介します。三条市といえば同県の燕市と共に「燕三条」と呼ばれ、金物で有名です。燕三条は、モノ作りが盛んな地域で刃物や食器など様々な工場の見学ができたり、工房で手作り体験ができるスポットが多くあります。同社は、地域の強みである金属加工技術を背景に機能的で、美しく、頑丈なアウトドアグッズを提供し、日本のアウトドア業界を牽引しています。

アスタリスクがあしらわれたロゴの店舗に足を運ばれたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。同社の商品価格設定を見てみると高価格帯のブランドであることがわかります。例えばステンレスの真空マグは3,000~4,000円台です。

さて、同社の業績について簡単に見ていきましょう。新型コロナウイルスの拡大による1回目の緊急事態宣言(2020年4月7日から2020年5月25日)による長期間にわたる活動の自粛の影響から2020年12月期の第2四半期では前年を下回る売上にて推移しました。しかし、ステイホーム期間中に自宅にてアウトドア体験をされたい方の増加や、3密を避けたレジャーとしてキャンプ需要が高まり、アウトドア関連商材が好調に推移。通期売上は前年を大きく上回る水準となりました。足許では、レジャー全般の中におけるキャンプの位置づけが高まったことでキャンプ関連の商材の需要が高まったことや、同社のブランド認知の向上に伴いキャンプ以外の事業も売上を伸ばしています。

同社は、2023年までに売上290億円、営業利益40億円を計画(2020年の実績は売上約170億湾、米国、英国などに展開していますが、世界的なキャンプ需要の高まりと当社認知度の向上を背景にすべての地域で増収を達成しています(図表6)。2023年までには、海外売上比率を30%までに引き上げる計画とのことです。

【図表6】2021年12月期 第2四半期 売上高(累計) 国・地域別6
出所:スノーピークウェブサイト 2021年12月期 第2四半期決算説明資料(2021年8月17日公開)

なお、同社は同社製品を使えるキャンプ場を日本各地で運営しており、燕三条だけでなく十勝や白馬など全国に施設があります(図表7)。燕三条のキャンプ場は小高い丘陵地帯にあり、広さは約5万坪。牧場のために開かれた草原で見晴らしも素晴らしいようです。

【図表7】日本におけるキャンプフィールドの運営状況
出所:スノーピークウェブサイト 2021年12月期 第1四半期決算説明資料(2021年8月17日公開)

また、同社は割引額にて買い物ができるクーポンを株主優待として用意しています。

写真提供:株式会社スノーピーク

株価分析チャートでは、2020年以降の大幅な伸びを確認できます。

【図表8】スノーピークの株価分析10年チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2021年8月25日終値時点)

旅先で「大人の社会見学」を

地域の特色を活かしながら成長し、海外にまで進出する企業の特色や今後の展望を調べることは興味深く面白いです。今回ご紹介した企業は、実際に施設を訪問することができる企業ですので、今後旅行ができるような環境となったら、「大人の社会見学」のような位置づけで、施設を訪れてみると楽しいかもしれません。

フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ