テーパリングの年内開始観測にトヨタ減産のニュースといった悪材料が重なり日経平均は年初来安値を更新した。国内のコロナの感染者数増加に歯止めがかからず、世界的にもデルタ株が猛威をふるうといった、大きな環境の悪化がある中では、売り圧力に抗しきれないのも無理はない ‐ と片づけるのは早計だ。日本株はミスプライスである。日経平均のPERは12倍台。一方、米国の長期金利はテーパリング早期化観測の中でも上がる気配がまったくない。金利が落ち着く中、好業績を評価できないバリュエーションは日本株がミスプライスされていることの表れだ。
世界的にそういう状況なら納得がいく。しかし米国株はまったく違う。テーパリング議論で多少調整を入れたが、例によって単なる利益確定売りの材料にしただけだ。本気でテーパリングを気にしている投資家はほとんどいないだろう。その証拠に金曜日に米株は反発してダウ平均はしっかり35,000ドルの大台を回復して終えた。ダウ平均もS&P500も先週の月曜日に史上最高値を更新し、今の水準はそこから1%程度下にあるだけ。S&P500の予想PERは22倍である。日経平均と10倍の差がついている。
今週の日本株相場は下値を固める動きか。基本的にジャクソンホール待ちで様子見が続くだろう。FRBのパウエル議長は東部時間27日午前10時(日本時間同午後11時)から、米カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで講演する。当初は対面の予定だったがオンライン形式に変更された。講演のタイトルは「経済見通し」。前回のFOMC時点よりデルタ株による感染が広がっており経済の先行きに対する不透明感の高まりに言及するだろう。パウエル議長のトーンはハト派的なものとなるだろう。
米ダラス連銀のカプラン総裁はデルタ株の感染拡大が収まらず経済の進展に悪影響を及ぼすようであれば、資産購入プログラムのテーパリング開始は遅いより早めの方が望ましいとした自身の見解を調整する可能性を否定しないと述べた。このような発言もあって今週市場ではテーパリング早期開始観測の修正がなされると思われる。パウエル議長の講演の内容次第では一気に揺り戻しが起こるかもしれない。
22日投開票の横浜市長選挙で菅首相が支援する側近の小此木八郎前国家公安委員長が、野党が推す候補に敗れた。首相の地元で自民党が総力体制で押した小此木氏が敗れたことで「衆院選の前哨戦で自民敗北」とメディアは書き立てるだろう(事実は多少違うのだが)。総裁選の選挙管理委員会は26日に総裁選日程を決める。今週は政治リスクも意識されやすい。
注目ポイントはTOPIXが200日移動平均に支えられて、ここで反転できるかどうか。1880ポイントはちょうど200日移動平均の水準だ。
もうひとつはグロース株の復活だ。先行して安値をつけていたマザーズ指数が先週末にかけて3日連続陽線。これと同じ動きがエムスリー、コムチュアなど高PERのグロース株にも見られる。海運株やデンソーなどの大幅安の裏でグロース株復活へと潮目が変わりつつあるのかもしれない。