みなさん、こんにちは。日経平均は一進一退の動きのままですが、じりじりと上値が重くなってきている印象です。

日常生活でも、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会におけるアスリートのひたむきな姿に心打たれる一方、延々と続く自粛ムードには正直なところ辟易した心情は否めなくなってきました。もちろん、社会人としての節度ある行動を常に心がけているのですが、どうも相反する気持ちがもやもやしてしまう、非常にバランスの悪い状況が世の中に浸透しているように感じています。

前回のコラムでも触れましたが、こういった無気力感や厭世観・閉塞感は一般に一層蔓延しており、それがピリッとしない株価動向とリンクしているようにも思えてしまいます。この雰囲気の打開、打破が、いつ、どういった要因で実現するのか。今後の相場を考える上で、これらの見極めが重要との見方は今回も継続したいと思います。

相矛盾する相場の経験則

そこで、今回は昔からよく知られている相矛盾する経験則、「サマーラリー」と「夏枯れ相場」をテーマに採り上げてみましょう。この2つの相場の経験則は実に面白く、まさに正反対のことを述べています。

通常、実態と合わなくなった経験則は淘汰されていくものですが、この2つの経験則は両立しないにも関わらず、その2つとも依然として現在もよく用いられているのです。

これは実はアノマリーとしては成立しておらず、上昇相場の時は「サマーラリー」と命名され、下落相場の時は「夏枯れ相場」と銘打たれているということに他なりません。したがって、これは相場の方向性を事前に示唆するものではなく、結果論としてこの2つの言葉のどちらかが当てはまっているという性格のものなのです。

既にアノマリーとして成立している「セル・イン・メイ」とは明らかに異なる経験則と言えるでしょう。種明かしが早速終わってしまったのですが、それでは2021年の夏の相場はどうなるでしょうか。「サマーラリー」が発生するのか、「夏枯れ相場」となるのか、ここでみなさんと考えてみたいと思います。

「サマーラリー」のシナリオ

「サマーラリー」があると見る場合は、新型コロナウイルスのワクチン接種の世界的な進捗により、ウィズコロナの警戒下ではあるものの、社会は平常モードへとシフトするというのがベースシナリオとなるでしょう。

欧米の事例を見ると、感染者数は高水準であったとしても、ワクチン効果によって重症者数・死亡者数は明確に減少しているという報告が出てきています。重症化率や致死率の低下により社会は平時に戻り、コロナ後のリベンジ消費や堅調な企業業績が相場の牽引役を担うという構図です。

リベンジ消費や企業業績は既に取り沙汰されており、新しい材料ではありませんが、これまでは都度感染者数が急増することによって腰砕けとなっていました。

国内景気に関しても、7月には日本政府からも国際通貨基金(IMF)からも2021年の実質GDP見通しの引下げがなされており、先進主要国の中でも日本の出遅れ感は鮮明となっています。しかし、これがワクチン接種の浸透により、一気に改善が進むという期待感が相場を牽引する可能性は十分あるものと考えます。

「夏枯れ相場」のシナリオ

一方、「夏枯れ相場」派の見方は、ワクチン接種の進捗から重傷者数・死亡者数は減るものの、感染者数の増加から緊急事態宣言が断続的に発出され、消費の本格的な回復には程遠い状況が継続するというシナリオです。

企業業績も、一部用途や一部地域向けには好調を維持するものの、2020年度下期からの大幅改善ペースの失速を株式市場が織り込み始めるという構図が考えられるでしょう。既に株価は数ヶ月間一進一退の動きを続けながら、じりじりと下値を切り下げてきている印象です。

コロナ禍がだらだらと継続し、時を追ってもその先が見えてこないという状況が続くとなれば、今ここで株式投資に踏み切る必然性はありません。結果的に相場が勢いに欠ける展開になるのだと考えます。

ここまで2つの見方とその背景にあるシナリオを見てきました。もちろん、これ以外のシナリオも考えられるのでしょうが、現時点である程度合理的に考えられるのは、このようなストーリーがあるからでしょう。

物事を多面的に捉え、柔軟な仮説を立てる

実はこのようなアプローチは株式投資を長くされている方の間では一般的なものです。合理的ながら相反する2つのシナリオを考えることで、見落としを防ぎ、仮に逆方向に事態が動いた際でもどこが想定と違ったのかが明確になるため、迅速に軌道修正できるような体勢を整えておくことができるのです。

私の尊敬する先輩はかつて、「アナリストの付加価値は仮説の提示能力にある」と喝破しました。物事を多面的に捉え、1つの考え方に固執することなく、柔軟にシナリオを策定していくことにこそ、価値があるのだということです。

個人投資家のみなさんはご自身でアナリストの仕事も掛け持ちする必要がありますが、数あるシナリオの中から1つを冷徹に選び取るというアプローチを是非、試していただきたいと思っています。