みなさん、こんにちは。日経平均は引き続き一進一退の動きが続いていますが、徐々に荒っぽい値動きとなってきました。

製造業の稼働率はかなり回復してきており、新型コロナウイルスのワクチン効果への期待も膨らむ一方、東京では緊急事態宣言が再発出されるなど外食・レジャーといった消費関連業種においては依然として先行きの不透明感を払拭できない状況が続いています。

このまだら模様の展開が株価にも投影されているのではないしょうか。特に、延々と続き出口の見えない自粛要請や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020オリンピック・パラリンピック)開催に関しての混乱は、一般的にはむしろ無気力感や厭世観・閉塞感を助長し、それが株式市場の重石になっているようにも見えてきます。

この雰囲気の打開、打破が、いつ、どういった要因で実現するのか。今後の相場を考える上で、これらを見極める重要性が非常に高まっていると私は考えています。

いまだ未知数の経済効果

今回のオリンピック・パラリンピックは、この雰囲気の打開・打破のきっかけになるのではないかと私は考えています。

なお、今回の東京大会は7月23日に開幕とはなるのですが、基本的に無観客な上、近代オリンピック初となる延期を余儀なくされるなど、当初の計画から大幅な変更を強いられるものとなりました。新型コロナウイルス感染症という見えない要因によって、まさにギリギリまでその開催が、場合によっては大会の継続までもが懸念されるという(おそらくは)初の大会になるのではないかと考えます。

通常のオリンピック・パラリンピックであれば、その経済効果が取り沙汰され、日本選手団の活躍も相まって、国を挙げてのお祭りムードが広がるところなのでしょう。しかしながら、今回は無観客、飲食店も規制下ということもあり、従来のパターンとはかなり趣きの違った展開になるように私は感じています。

今後は、手探り状態で大会が進んでいくのではないでしょうか。換言すると、現時点で東京2020オリンピック・パラリンピック期間中の経済効果については、まだ株式市場でも十分に織り込まれていないという可能性があるのではないでしょうか。

やや短期的な視点とはなりますが、大会期間中やその後にどういった経済効果が、ひいては株式市場ではどういった業種が注目される可能性があるのか、についてこのコラムでは考えてみましょう。

スポーツ関連や健康管理にまつわる消費需要が増加する可能性

これまでは、テレビなどを販売する家電メーカーや量販店、応援イベントやキャンペーンを展開する飲食店や食品企業などが業績面での恩恵を受けるというのが定番でした。これに対し、今回は現時点でさほど盛り上がっていない分、スタートダッシュはやや期待薄な状況にあります。

しかし、だからこそ、徐々に大会が盛り上がってくれば、(足元がクールなだけに)こういった定番のパターンの企業群にはポジティブサプライズが発生する可能性があると考えています。懸念が依然として燻る現状だからこそ、そしてあまり経済効果への期待値が高くない現状だからこそ、敢えて楽観的な方向に振れた場合に備えておくというのも重要な投資戦略と言えるでしょう。

私が座右の銘ともしている投資格言には「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」という言葉があります。東京2020オリンピック・パラリンピックという限定的な事象ではありますが、こういった視点もまた重要であろうと考えます。

さらに、より本質的には東京2020オリンピック・パラリンピックを契機にこれまで以上にスポーツに対する意識が高まるのではないかとも予想します。長期にわたる自粛生活への鬱憤、自炊の増加などによる健康管理意識の高まり、リモートワーク浸透による個人の時間の増加などから、何かを始めたいと考える人は増えているはずです。

その一方で、スポーツ施設やその運営者は徹底した新型コロナウイルスの感染症予防策を実施してきている上、新型コロナウイルスのワクチン接種の浸透もあり、「体を動かすこと」への実質的なハードルはかなり低下してきているというのが実態です。あとは、アクションを起こす「きっかけ」待ちという状況にあると言えるのではないでしょうか。

そこに、東京2020オリンピック・パラリンピックで懸命に頑張るアスリートの姿が目に入ってくるのです。アスリートを見て「自分も頑張ろう」と思い立ち、ジムに通ってみよう、新しいスポーツに挑戦してみよう、かつてやっていたスポーツを再開してみよう、と考える人もいるのではないでしょうか。

コロナ禍以前からスポーツを楽しんでいた方が戻ってくるだけでなく、「体を動かす」ことを始めようという新規の需要が創出されるかもしれない、というシナリオです。ジムやスポーツ教室、スポーツ施設や用具などが株式市場でも注目され始める可能性も小さくないと考えています。