みなさん、こんにちは。日経平均は一進一退の動きが続いています。利上げ観測から急落局面もありますが、すぐに水準を戻すなど相場の腰は強いという印象です。

かなり日柄調整が続いているため、何かのきっかけで動意づく可能性は増してきているのかもしれません。ワクチン接種の浸透とオリンピック開催がそのきっかけの1つになるのではないか、と私は感じています。

日本国内ではコロナ感染者数が再度増加し始めており、それは明らかな懸念材料ではあるのですが、ワクチン効果が英国のように確認されれば(感染者数に対して死亡者数が有意に低下)、かなり雰囲気も変わってくるのではないかと期待しています。

ポストコロナ下においてV字回復に期待

さて、今回はそういった「コロナ禍直撃業種」をテーマに採り上げてみましょう。

このテーマを見て、コロナ禍となって1年が経ち、ワクチン接種も広がりつつあるのに今更なんだ、と思われる方もいるのではないでしょうか。当然の反応です。

しかし、私が敢えてここでコロナ禍直撃業界に注目してみようと思ったのは、決して「要警戒業種」として捉えようというのではありません。その逆です。ポストコロナ下におけるV字回復の有望業種として見てみよう、というのが狙いです。

実際、空運や鉄道といった旅客輸送、観光、飲食店、アパレル、イベントなどの「コト消費」産業などはコロナ禍によって甚大な被害を受けました。2020年度、これら業界は合計で少なくとも1.5兆円超という強烈な最終赤字の計上を余儀なくされています。

こういった業界ではありますが、コロナ禍の行方はまだ安心できるものではないとしつつも、ワクチン接種の浸透で雰囲気がかなり変わってきたのもまた事実です。最悪期を脱してきた可能性が高まってくる中、「谷深ければ山高し」の格言通り、「最も地獄を見た業種」こそが「もっとも劇的に回復する」最有力候補として浮上してくると考えたのです。

コロナ禍直撃業種の勝ち軸とは

実は株式市場において、先ほど述べた業種の株価は既に上昇基調に転じています。

ファンダメンタルズはまだ厳しい水準にあるものの、この1年間で実施してきたコストダウンや構造改革によって業績面での底打ち・回復の道筋が見えてきたためです。まさに大底を脱してきたとの見方が株価上昇を牽引し始めていると位置付けられるでしょう。

とはいえ、多くの「コロナ禍直撃業種」企業群において、コロナ発生前の株価水準を回復できている企業はまだ極めて少数です。

日経平均がとっくにコロナ前の水準を回復していることと比較すれば、やはりまだ「コロナ直撃業種」の回復は自律反発の域を出ていないのだと捉えることもできます。換言すれば、各社の株価がコロナ前の水準を越えてくるには、回復の牽引役を単なる自律回復からより本格的な成長軌道へとシフトさせることができるかどうかにかかっていると言えるでしょう。

焦点は、やはりコロナ禍を契機とした社会行動様式の変化に、これら直撃企業群がどういった新たな付加価値を提供できるのか、となります。例えば、旅客輸送においてはワクチン接種の浸透などで出張や旅行は増え始めるでしょうが、WEB会議との併用一般化により旧来の水準までは戻ってこない可能性があります。

飲食店においても、飲み会や宴会は再開されるでしょうが、その件数や参加者数はかつてのようには戻らず、その水準は様変わりするようにも想像します。こういった社会行動様式の変化への対応がなければ、ファンダメンタルズの成長軌道への進化はおぼつかないものとなってしまうでしょう。

現状は応急処置(主としてコストダウン)によって自律回復に至っていますが、変化への対応を打ち出さなければ、徐々にその効果は剥落し、ジリ貧となってしまいかねません。経営戦略が最も求められるのはまさにこれからなのです。

投資家としては、これらコロナ禍直撃企業群がどういった戦略を打ち出してくるのかをしっかりと見極め、本格的なV字回復企業を選別していきたいところです。

実際のところ、具体的な企業名は挙げませんが、応急処置による自律回復の実現で一安心してしまい、改革の手を緩めてしまっている企業(の経営陣)も既に少なからず散見されます。

突然の嵐のようにやってきたコロナ禍をなんとか乗り切れそうだと手応えを得て、ホッと一息つきたいという心情はもちろん理解できます。「なんだかんだ言っても、社会行動様式も結局は元に戻るから大丈夫」と思いたい気持ちもわからないではありません。確かに行き過ぎた振り子は必ず戻ってくるものですから。

しかし、その振り子が完全に元の位置に戻ってくるとは限りません。同じコロナ禍直撃業種内においても、応急処置で思考停止になってしまっている企業(経営陣)と戦略的に布石を打ち始めている企業では、本質的なV字回復への移行において大きな格差が生じてくることでしょう。

ここは選別眼の問われるところになります。投資家としては腕が鳴る局面になってきたと私は楽しみにしています。