メジャー通貨とマイナー通貨
為替取引において、どの通貨ペアを選ぶかは重要なポイントです。
世界中で多く売買され、貿易の決済に使われたり、信頼性が高かったりする通貨は一般にメジャー通貨と言われ、流通量も多いです。為替取引は相対取引なので、「売りたい」と「買いたい」がマッチしたときに契約が成立します。流通量が多ければ、取引条件が折り合う可能性はそれだけ高くなります。
上記のメジャー通貨に対して、流通量、信頼性（通貨を発行している国の信頼性）などが少ない（低い）通貨はマイナー通貨と呼ばれます。マイナー通貨の発行国は政治や経済が不安定であることも多く、貿易取引などにメジャー通貨を使用することもあります。
マイナー通貨は薄商いの市場になるため、ちょっとした状況変化で乱高下しやすいというリスクがあります。一度大暴落を起こすと、売りたくても値が付かない…ということもありえます。
主要通貨ペアと資源国通貨
以下は世界でもっとも多く取引されている通貨ペアであり、メジャー通貨同士の組み合わせです。初心者が通貨取引をする場合、これらの通貨で始めるのが一般的と言えるでしょう。
主要通貨ペア：米ドル、円、ユーロ、は3大通貨と言われる
米ドル／円…円は「有事の円」の安全通貨の扱い
ユーロ／米ドル…世界で最も取引されている
英ポンド／米ドル…「ケーブル」と呼ばれる。経済圏の密接さからユーロ／米ドルと同調しやすい
メジャーかつ資源国通貨
豪ドル／米ドル…コモディティ市場に相関関係がある。中国経済の影響大
米ドル／カナダドル…経済圏の密接さからカナダドルは米ドルに同調しやすい。原油相場と相関関係がある
すべて対「米ドル」の通貨ペアです。理由は、米ドルは世界の「基軸通貨」と呼ばれ、決済や金融取引において世界でもっとも使用される通貨だからです。この対「米ドル」の通貨ペアは「ドルストレート」と呼ばれ、世界のあらゆる通貨の為替レートは、基本的にこのドルストレートで表記されます。
日本人にとっては「対円」レートがもっとも重要かつ安心感があるかもしれませんね。ユーロ／円や英ポンド／円はこちらもメジャー通貨同士の組み合わせのため、多く取引されています。
クロス円の成り立ち
対ドルではない通貨ペアを「クロス通貨」、中でも対円の通貨ペアを「クロス円通貨」と呼びます。ユーロ／円や英ポンド／円といったクロス円通貨については、計算からレートを導き出すことも可能です。
ユーロ／円＝ユーロ／米ドル×米ドル／円
英ポンド／円＝英ポンド／米ドル×米ドル／円
なお、1ドルあたりいくら、という表示である日本円と同様の米ドル／カナダドルの場合はカナダドル／円を求めるには、以下の計算式になります。
カナダドル／円＝米ドル／円÷米ドル／カナダドル
もし計算値と相場レートが乖離しているような瞬間があれば、それは利ザヤが抜けるチャンスかもしれません。
クロス通貨を使った「ノーリスクさや抜き取引」
以下は、プロレベルが行う為替取引の例です。決して一般の投資家の皆さまにおススメする投資手法ではありませんが、興味のある方は読んでみてください。
外国のモノを買うためや、現地で使うために外国通貨（為替）を交換するのではなく、為替を動かす（取引する）ことで利益を狙うことができ、為替相場という大きなマーケットがあることを感じていただけると思います。
（例）ある瞬間の為替レートが以下のような時
為替レート（例）
売りレート／買いレート
米ドル／円 110.198／110.20
ユーロ／米ドル 1.1913／1.1914
ユーロ／円 131.277／131.282
1,000ユーロをユーロ／円で買います。ユーロ／円の買いレートは131.282です。そこで、131,282円を支払います。結果1,000ユーロのロングになります。（買いのポジションを持つことを「ロング」と言います）
1,000ユーロをユーロ／米ドルで売ります。ユーロ／米ドルの売りレートは1.1913です。そこで、1,191.30米ドルを受け取ります。結果、この時点でユーロポジションがスクエアになります。（買いと売りのポジションを同じ数量もつことで、ポジションがなくなることを「スクエア」と言います）
代わりに今あるのは1.191.30米ドル のロングになります。ここで結果的に米ドルロングになった際の計算上の米ドル／円レートは「131.282÷1.1913=110.20」となります。上記の米ドル／円の買いレートと合致します。
つまり米ドル／円、ユーロ／円、ユーロ／米ドルの市場のバランスが正常に機能していることを示しています。
もしここでズレが生じている場合、実際のレートより安く買えたり、高く売れたりすることになります。その乖離が大きければ、この場合なら同時に米ドルをスクエアにすることで外貨のポジションを持たずに利益を得ることができます。これは「さや抜き」と呼ばれる手法です。
なかなかチャンスがある取引ではないものの、外貨のポジションを持つことなくさやだけ抜けるリスクなしでリターンを得る例です。
いかがでしたでしょうか。為替は基本的に24時間取引されますのでこうした取引に参加する人は刻一刻と変化する為替の動きに目が離せません。世界各国の金融・経済情報が重要な取引の判断材料になりえます。
為替取引自体を直接行っていなくとも、為替は世界の金融・経済に密接にかかわっています。投資をする上で全く無視するということはできないのではないでしょうか。自分の資産を守るために為替を見る目も養っていきましょう。
