先週の新聞で「長期金利1.5%割れ、配当利回りが逆転」という記事が掲載されました。長期金利というのは一般的には10年物国債の利回りです。
配当利回りは企業が支払う予定の配当金を株価で割って計算します。ある株式を保有している1年間で受け取る予定の配当収入が株価(投資額)に対してどの程度の利回りかを見るものです。
配当利回り=一株あたりの予想配当金÷株価

配当利回りを株式投資の基準にする人も多いです。

先週は米国の景気に対する不安、落ち着いたかと思うと出てくるサブプライム問題のニュース(日本の大手金融機関での損失拡大の発表)、急激な円高、などなど先週は日本の株式市場にとっては厳しい状況が続きました。そんな中での上記の新聞記事です。

この記事タイトルから以下のことがわかります。

1.長期金利が1.5%割れ、長期金利の低下ということは債券価格の上昇です。つまり債券が買われていること、債券市場にお金が流れ込んでいることを意味します。債券は株式に対し、安全資産という位置づけですから、投資家が資金を安全圏に逃避させていることになります。
2.単に債券が買われたのではなく、株式を売却して債券市場に資金が逃避したことがわかります。株価が下がることによって、配当利回りの計算式の分母の値が小さくなり、配当利回りは上昇したのです。(配当利回りが上がると一般には株式の魅力が増すことになりますが、今回のように株価下落過程で、となると 魅力<株価下落不安 となってしまいがちです。)

ところで債券と株式、全く別物と捉えている方も多いのですが、投資の世界ではいずれもメインの金融商品であり、世界の投資家が経済の状況に応じて、双方の市場に資金を行き来させていることがよくわかりますね。

個人投資家の方には投資=株式という方も結構多いのではないかと思います。値動きの派手な株式市場には魅せられるのですが、債券は預貯金の延長のイメージを持たれているのか、全く興味を示さない方も少なくありません。

でも債券市場はなかなかどうしてダイナミックな市場です。(残念ながら取引単位も大きく株式市場のように個人が直接売買できる市場ではありませんが・・・)
何より債券市場の動向は景気動向を見ていく上では大変大切なものです。長期金利は直接日銀が操作できるものではないこともあり、市場参加者の思惑や行動(売買)が直接反映しています。

「先行きの景気見通しが良くて金利上昇が見込める」ときは、今の金利は不利なので、債券を売る=長期金利が上昇する、という流れになります。逆に「先行きに不安がある、金利は上昇しない」と考えられる場合や、現在不安定である、と思われるときは今のうちに安全資産の債券を買う=長期金利が低下する、となるわけです。
先行き景気が良い=株式市場も活況ですから、長期金利上昇=株式市場活況とも言い換えられますよね。逆もまた然りです。(長期金利上昇のときは景気期待からの上昇と、その国の先行き不安からくる上昇(リスク・プレミアム)の2種類があるので注意してください。ここでは前者のお話です。)

今回の一見地味な「利回り」のニュースですが、実は奥は深いのです。長期金利、債券市場の動向を見ることは、そのまま株式市場の先行きを考える上でもその指標になるということ。株式市場と債券市場はこんなつながり方もしているのです。経済のモノサシである金利を知っておくことは、ニュースを読み解く上でもいろいろと役に立つと思います。