長期金利はFOMC前の水準に下がり相場の戻りを支える
FOMC後の株式相場の反応は日米ともに過剰であった。日本株相場は週明けこそ、週末の米国株安に連れ安して下げて始まりそうだが、その後は過剰反応を修正する動きとなろう。
先週金曜日、米株式市場でダウ平均は5日続落し、533ドル安の3万3290ドルで取引を終えた。週間では1189ドル(3.4%)下げ、2020年10月26~30日(6.5%)以来、約8ヵ月ぶりの下落率となった。16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で23年に2回の利上げ見通しが示され地合いが軟化していたところに加えて、この日はセントルイス連銀のブラード総裁が「インフレが加速すれば22年にも最初の利上げをするだろう」と述べ、利上げ前倒し観測が広がったことが下落の要因となった。下げを加速したのは先物・オプションなどの清算日が重なるクアドラプル・ウィッチングの影響もあっただろう。
冒頭述べた通り、先週の下げは過剰反応だ。まずブラード総裁の「インフレが加速すれば22年にも最初の利上げをするだろう」というのは単なる一般論である。「インフレが加速すれば」という仮定の話で、そうなれば「22年にも最初の利上げをするだろう」という予想を述べただけであり、ごく自然な話である。誰もが「そういうこともあり得る」と思うだろう。サプライズでもなんでもない。
次にダウ平均は大幅安というものの、5月上旬につけた史上最高値34,777ドルからわずか4%程度下げた位置にあるだけだ。ナスダック総合は週間ベースではほぼ横ばい。ナスダックはハイテク株など金利に敏感なグロース株が多いが、その長期金利が低下傾向にあるのだから、ナスダックが堅調なのも納得できよう。ナスダックは先週月曜日に史上最高値をつけており、先週末終値はそこから1%下の水準。つまり、依然、史上最高値圏にあるというわけだ。
長期金利はFOMCで一度、跳ね上がったが、その後2日間で大きく低下しFOMC前の水準に下がっている。これが一番、相場の戻りを支える要因となるだろう。
6月22日のパウエルFRB議長の公聴会証言に注目
22日にパウエルFRB議長が新型コロナウイルス危機に関する米下院特別小委員会の公聴会で証言する。ブラード総裁発言の火消し役を果たすか注目だ。利上げについての言及は時期尚早などのハト派発言があれば相場の戻りを後押しするだろう。
6月21日週の日経平均の予想レンジ 2万8500円~2万9500円:米国長期金利低下を受けてグロース株の上昇を予想
国内では21日から企業や大学で新型コロナワクチンの職域接種が始まる。Bloombergによれば、職域接種には3123会場の申請があり、接種予定人数は1280万人となっている。日経新聞によればワクチンの接種が18日時点で累計3000万回を超えた。企業や大学での職域接種でペースがさらに加速するだろう。これも相場の好材料だ。
また、政府は沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言を20日で解除し、東京や大阪など7都道府県は7月11日までを期限にまん延防止等重点措置に移行する。緊急事態宣言の解除を受けて、多くの企業が21日以降、営業体制を見直す。三越伊勢丹HDなど百貨店は約2ヵ月ぶりに週末の全館営業を再開する。景気回復期待が高まってくるだろう。
今週から6月後半のIPOラッシュが本格化する。今週は12社が新規上場する。新興市場は換金売りや荷もたれ感などがあって少々波乱含みの展開か。
全体的には米国長期金利低下を受けてグロース株の上昇が予想される。今週の予想レンジは2万8500円~2万9500円とする。