ワクチン接種がだいぶ進んできた。Our World in Dataの集計で、ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は人口の12%までになってきた。接種回数は現在1日約60万回のペースだが、7月には政府が目標にする1日100万回に到達するだろう。7月末には少なくとも1度接種を受けた人が人口の34%に達するとの予想が外資系金融機関から出ている。あと少しで、「一番厳しいところ」を過ぎる目途がたってきた。
こうしたワクチン接種の進展を受け、景気見通しも改善している。モーサテ景気先行指数で日本は1ヶ月前には0近傍だったが直近は45と、欧米とそん色ない水準にまで高まった。今週内閣府が発表した5月の景気ウォッチャー調査で、景気の現状を示す指数は前月より1.0ポイント悪化し、38.1と2ヶ月連続の悪化となった。一方、2~3ヶ月先の景気の見通しを示す先行きの指数は、ワクチン接種への期待感などから5.9ポイント上昇し、47.6へと改善した。
足元の株価の持ち直しは景況感の改善によるものだろう。しかし、それにしては日経平均は2万9000円の壁をなかなかきれいに抜けられないで頭が重い印象だ。一目均衡表を見ると雲が上値の重石となっている。しかし、TOPIXはすでに雲の上に抜け出ている。トヨタ(7203)、日立(6501)、富士通(6702)など日本を代表する主力銘柄が軒並み高値圏にある。日本株相場全体としては地合いはそれほど悪くない。景気ウォッチャー調査の先行き指数とTOPIXは連動している。この先もワクチン接種が進み、景気の先行き見通しが明るくなれば、そのセンチメント改善は株式相場の動向にも反映されるだろう。
さらに米国長期金利が明確にピークアウトしてきているのも、特にグロース株の追い風になるだろう。5月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る伸びとなったものの、10年物米国債利回りは3ヶ月ぶりの低水準となった。これは市場が、足元のCPIは異常値で、高いインフレは一時的なものと受け止めていることを示唆するものだ。今後、実際にインフレが起きるかどうかはまだ分からない。しかし、少なくとも言えることは、CPIを見て市場が動揺するような「インフレ懸念」パニックのステージは完全に過ぎたということだろう。