コロナショックで2020年3月に急落した不動産ですが、現在は世界的な不動産価格の回復基調が続いています。

世界の不動産の代表的な指標となる不動産投資信託(REIT)の世界全体の指数(インデックス)は、2020年3月のコロナショックにより大きく下落しましたが、その後1年3ヶ月ぶりの水準まで回復しています。2020年末と比較しても、すでに2割近い上昇となっています。

その中でもアメリカの不動産の上昇は抜きん出ていて、インデックスは既に2020年の史上最高値を更新しています。また、実物不動産の物件価格から算出したケース・シラーインデックス(米住宅価格指数)も年率で2ケタの上昇となっています。

投資対象として不動産が注目されるようになっている背景には、世界的な価格上昇もありますが、低金利が続いていることも影響しています。国債のような債券からの金利収入が得にくい中で、着実に家賃収入が得られる安定したインカム資産として、不動産に資金が集まるようになっているのです。

不動産投資には2種類の手法がある

日本の個人投資家が不動産投資するには、実物資産に投資する手法と、金融資産に投資する手法の大きく分けて2種類の手法があります。

投資対象は同じ不動産ですが、投資のメリットや、税制等が大きく異なり、それぞれの特徴を理解して投資方法を選択することが重要になります。

実物不動産投資は、借入も活用できるがハードルが高い

まず、実物不動産への投資ですが、これは不動産販売会社から個別の物件を購入し、自分で所有権を持つことによって、そこからの賃貸収入を狙う投資です。

国内不動産であれば、金融機関からの借り入れで賄うことができますが、投資金額が最低でも数千万円と大きく、物件選びに専門的な知識が必要となります。

海外物件になると、現金購入が原則で売買手続きはさらに煩雑になります。購入後の管理にも経験が必要で、誰にでも勧められる投資対象ではありません。

REITは少額で多様な不動産投資ができるのが魅力

一方、金融資産として不動産に投資する手法がREIT(不動産投資信託)への投資です。これはReal Estate Investment Trustの頭文字を取ったもので、複数の不動産をファンドに組み入れて、分散投資かつ小口化された商品です。REITの場合、投資金額は10万円以下からと手軽で、株式と同じように上場しているので、証券会社でいつでも売買をすることができます。

ただし、実物不動産のように借り入れをして購入することができません。REIT自体が金融機関から借り入れを行うことでレバレッジをかけています。

複数のREITを組み合わせて投資信託にしたファンドもあります。このような投資信託を活用すれば先進国や新興国の不動産にもリスクを抑えながら投資することが可能になります。

インカム資産としての不動産に注目

いずれの投資方法でも不動産投資が可能ですが、不動産といっても投資対象がいくつかに分かれているので注意しましょう。

実物不動産の場合、通常投資対象になるのは、ワンルームマンションやアパートのような居住用不動産です。

それに対しREITに投資する場合、居住用不動産だけではなく、商業物件やオフィスビル、さらには物流倉庫やホテルなどの宿泊施設のように多様な不動産に投資可能です。また、これらの複数の施設を組み合わせた総合型と呼ばれるREITも存在します。

コロナウイルス感染拡大によって、ショッピングセンターのような商業施設やホテルなどの宿泊施設の価格が急落しましたが、ワクチン接種の開始によって、移動制限やロックダウンが解除されるとの期待から、逆にこれらのセクターの価格が急上昇しています。

また、同じ不動産であっても、実物資産と金融資産で値動きに大きな差があることがわかります。不動産の種類によって価格の動きに違いはありますが、世界的な運用難から投資対象を不動産に広げる動きは今後も続くと予想します。インカム資産としての不動産は、個人投資家にとってもアセットアロケーションの資産配分先として、今後、一層重要になるでしょう。