先週木曜日に、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG、8306)が投資家・アナリスト向けに「サステナビリティ経営~気候変動への取り組み」というオンライン説明会を開きました。以前に比べて、説明も質疑の中身も圧倒的に濃くなった印象でした。そういえば、週末に参加した金融系の学会でも、メインストリームはESG関連の研究でした。日曜夕方の「笑点」(日本テレビ)でもお題にSDGsが入っていて、完成度の高いネタが披露されていました。
このように、最近の金融界の話題はかなり“グリーン”色が強く、麻雀の手にたとえると“緑一色“を狙う感じです。なかでも機関投資家の熱心さが際立ちます。MUFGの説明会の質問も、大手ファンドからの質問がセルサイド・アナリストより深いと感じました。それもそのはず、世界ではファンドにESG配慮を求める動きが厳しくなっており、ファンドから企業への働きかけも活発になっています。現在MUFGには、環境配慮に向けた定款変更を求める株主提案が提出されています。米国でも、今年の環境関連の株主提案は80件を超えている模様です。
先月には、米テスラ社が、環境配慮の観点から、ビットコインによる車両購入の決済を停止すると発表し、ビットコインの時価総額が10兆円程度下落しました。間接的とはいえ、環境問題が市場に短期的に与えた影響としては過去最大と言えるかもしれません。しかし、今後さらに大きな流れが起こる可能性もあります。米政府は、9月半ばまでに、気候変動のリスク分析と政府戦略を策定する方針です。企業や金融機関に更に厳しい対応が求められる可能性もあり、環境開示の評価が低い業界(例えば、発電、塗料系、化学系)などには若干注意かもしれません。
もっとも、“緑一色”は麻雀では極めて難しい手で、出現確率は0.0011%程度。2050年に世界が目指す温室効果ガス実質ゼロ目標もかなりハードルが高いとされます。途中で他のトピックが出てくると、市場はまた“手”を変えたくなるかもしれません。それでも、この問題は当面政治や市場の焦点になりそうです。改めて、この分野についての分析も発信も強めていかねばと認識を新たにしました。