4月の米雇用統計は事前予想を大きく下回った
先週金曜日(5月7日)に発表されました米国4月の雇用統計は、事前予想を大きく下回る結果となり市場を驚かしました。2月の新規雇用者数は53.6万人、3月には77万人となり、これからも順調に回復していくと思われていた矢先のことです。4月には100万人を超えるだろうというのが市場のコンセンサスだったのですが、実際発表されたのは22.6万人で、予想を大きく下回る結果となりました。2020年春には15%近くでピークだった失業率の方は、2021年の3月には6%を発表、4月は6%を下回るだろうと予想されていました。ところが実際は6.1%と前月比微増という結果でした。雇用は増えず、失業率も減らないという内容となったのです。
採用面接に来てくれたらお金を払います
そんななか、一部の米国企業では労働者を雇うのに苦労しているという事例が出てきているのです。例えば、マクドナルドでは、働いてくれれば500ドル(1ドル=109円で換算すると約54,500円。円換算は以下同様)のサインアップ・ボーナスを支払いますという看板を掲げているのです。これは決して米国の特定の地域ということではないようなのです。また、採用面接に来てくれただけでお金を払いますという企業も出てきているくらい人手不足の会社もあるのだそうです。
このような事態は、賃金増につながります。実際今回の雇用統計で発表された時間辺りの賃金をみてみると、一年前と比べ3.6%も増えているのです。
現在仕事のあるアメリカ人の数は2020年の2月と比べて800万人も少なく、失業率は2020年より2倍となっているにも関わらず、人手不足が存在するという雇用市場のミスマッチが起きているのです。
米国政府の大盤振る舞いで就労意欲が減るアメリカ人
これは一体どういうことなのでしょうか。どうも米国政府がコロナ経済対策の名の下、惜しみなく大判振る舞いをしていることが影響しているようです。米国では3月にも政府はほとんどの国民に対し1人当たり1,400ドル(約15万円)の直接給付金を支払いました。2020年春には1回目の給付金である1,200ドル(約13万円)を、そして12月にも600ドル(約65,000円)を支払っており、今回で3回目となります。ほとんどの家庭では、受け取れる金額は夫婦だと2倍となリ、子どもがいればもっと増えます。
加えて最近のバイデン大統領の1.9兆ドルの経済対策法案(アメリカン・レスキュー・プラン)のお陰で、現在失業者は州からの支払われる通常の失業保険に加え、連邦政府から週に300ドル(約33,000円)を受け取ることができるのです。今回受け取った直接給付金に加え、失業保険等を足していくとその合計は、働いて受け取る最低賃金を超えているようなのです。つまり、仕事をしなくとも米国の最低賃金を超えくらいのお金を受け取ることができる状況があるのです。それが少なくとも2021年の9月まで続くことになります。
雇用が減ったのは一時的、増えてくるのは時間の問題か
加えて、米国では州によっては未だ学校に行かずリモート学習で在宅している子どもが多いため、仕事に戻るのを躊躇している母親も多いと聞きます。米国ではもうすぐ子ども達の夏休みも始まりますし、あえてここで仕事をせず失業保険を受け取り、子どもの新学期が始まってから仕事に戻ろうと考える親も決して少なくはないのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの拡大により多くの死者を出した米国では、コロナ感染を恐れ職場に戻りたくないと考える人もいるでしょう。ただ、新型コロナウイルスワクチン接種が順調に進むなか、新規感染者数も急減する可能性があるとされています。そうしますと、安心して職場に戻れる人たちも増えてくるはずです。経済が回復する中、人を雇いたいとする企業も増えてくると、政府による手厚い失業保険の支払いの必要性も減ってきます。
このように考えると、今回の不思議な雇用統計の結果というのはあくまでも短期的であり、雇用の回復は引き続き起きていくのだろうと考えても良いのだと思います。